ちょっとまじめに、日本とアメリカを知りましょ!人種や差別問題

 

始めの一言

「ヨーロッパでは、夫婦間において財産は共有である。日本では、各々が自分の分け前を有しており、ときには妻が夫に高利で貸しつける。
(ルイス・フロイス 戦国時代)」
「ヨーロッパ文化と日本文化  岩波文庫」

「鬼嫁」は戦国時代からいたらしい。

 

 

前回は、インドのヴァルナ(カースト)制度のもとで差別に苦しんでいた「ダリット」と呼ばれる人たちのことを書いた。

インドの憲法ではヴァルナ(カースト)制度は認めている。
けれど、ヴァルナ(カースト)による差別は認めてはいない。

 

日本でこれとにたことを探すなら、明治時代に「解放令」が出されたことだろう。

*今の中学生の歴史教科書には「解放令」はのっていない。
この記事では、昔の教科書の記述をつかうことにする。

インドで差別されていたダリットという存在は、日本では「賤民」と呼ばれた人たちに等しい。
明治時代、日本を旅したシドモアというアメリカ人女性がいる。
彼女が身分解放令が出た後の日本を見て、このような感想をもっている。

 

「商人は華族に列し、サムライは天皇のテーブルに陪席しています。部落民も他の市民と同等となって闊歩し、極貧の小作人さえも神聖な市民権を有します
(シドモア日本紀行 講談社学術文庫)」

 

また、作家の五木寛之氏は、著書「サンカの民と被差別の世界 講談社」で、このように書いている。

「えた・非人などの名称が廃止されたので、これからは身分・職業ともに平民と同様であるべきこと」という布告を、被差別部落の人たちは大きな喜びで迎えた。
(サンカの民と被差別の世界 講談社)」

 

ただ現実には、それですぐに差別が解消されることはなかった。

「賤民身分が解放されたといいながらも、実質的には、人びとの感覚のなかでの差別感というものは根強く残る。社会制度や結婚や就職などにおいてさまざまな差別も消えずに残っている

(サンカの民と被差別の世界 五木寛之)」

 

インドでも、最下層のカーストとして差別されていた「ダリット」たちが解放された後、同じような問題を抱えていた。

そのため、インド政府は差別解消のために、ダリットの人たちには進学や就職で「ダリット専用枠」を設けるといった優先政策をおこなっている。

 

現在では、インドはそうしたジャーティのひとびとを高等教育機関に入学させて、政府の職をあたえ、議会に議員として送り込む大規模な強制的優先割当システムを採用している。
(インド入門 マノイ・ジョージ)」

 

日本では、身分解放が出た後に明治政府はこのようなことを行なってはいない。

つまり、賤民の身分だった人たちを、優先的に学校に進学させたり公務員にさせたりするような政策をとらなかった。

 

でも現在の日本では、インド政府のダリット優遇政策とにた制度をとっている大学がある。
四国にある大学がこの考え方を採用して、入学する学生に対して「被差別少数者枠」をいうものを設けている。

被差別少数者枠

同和地区出身者の他、沖縄県出身者、在日韓国・朝鮮人、アイヌ、奄美諸島出身者の特別推薦枠を設けている。
理由として「根深い社会的差別のなかで大学教育を受ける権利を制限されてきた人々への格差是正処置の一つ」などと説明しているが、人権の専門家や受験生を持つ父母、そして牧師などキリスト教関係者からも「逆差別」ではないかとの疑問の声が挙がっている。
(ウィキペディア)

 

このやり方には、反対・賛成それぞれの声がある。

けれど、かつて差別されていた人たちに、こうした「特別枠」をつくって差別の解消を図るという考え方は、世界では珍しくない。

 

有名なのが、アメリカの「アファーマティブアクション(affirmative action)」だろう。

インドで差別されていたダリットたちに、進学や就職の機会を優先的に割り当てるような政策を、アメリカでは「アファーマティブアクション」と呼んでいる。

 

アファーマティブアクションの説明の前に、この制度が生まれた背景を見てみたい。
アメリカでの黒人という存在は、言ってみれば、「アメリカ社会のダリット」のような感じで、激しい差別を受けていた。

1960年代のアメリカで、黒人が白人からどのような扱いを受けていたか?

俺たちは過去に、あからさまな黒人差別をやってきた。
トイレのドアに「白人専用」という看板をかけ、バスの後ろに黒人席を設けた。同じ学校にも入れず、居住区も制限した。うんざりするような仕事しかさせず(求人広告には、ニグロ専用と打ち)、白人以外の賃金が安いのを当然としてきた。

確かに、このあからさまな人種隔離政策をやっていたおかげで、俺たちはずいぶんと痛い目に遭っちまった。

(アホでマヌケなアメリカ白人 マイケル・ムーア)

 

この「マイケル・ムーア」という人は、過激な考え方や物の言い方をしてときに問題を起こすことで有名な人。

けれど、ここで書いてあることは正しい。
特に「バスの後ろに黒人席を設けた」というところは、とても重要だ。
このことが、「ローザ・パークス」というヒロインを生むことになったから。

 

「ローザ・パークス」
アフリカ系アメリカ人(黒人)による公民権運動の導火線となったことで、ローザは米国史における文化的象徴と見なされ、米国連邦議会から「公民権運動の母」と呼ばれた。
(ウィキペディア)

 

アメリカに興味がある人は、「ローザ・パークス」・「公民権運動」・「アファーマティブアクション」の3つの言葉と意味は、絶対に知っておいた方がいいよ。

この3つをすべて知っている人と何も知らない人とでは、アメリカ人のその人を見る目が違ってくるはず。

 

公民権運動

南北戦争後も州法になどに残った黒人差別を撤廃させる運動。1960年代に高揚した背景には、アフリカにおける新興独立諸国の誕生やベトナム反戦運動の高まりがあった。
(世界史用語集 山川出版)

 

公民権運動によって差別を撤廃させた黒人たちに、アメリカ政府が行った政策が、「アファーマティブ・アクション」になる。

 

アファーマティブ―アクション
(affirmative action)

「米国の積極的差別解消策。黒人・少数民族や社会的弱者への差別を実質的に解消するために、大学への優先入学や企業に対する一定数以上の雇用義務づけを行う。(大辞泉)

政府機関の就職採用や公立教育機関(特に大学)への入学において、被差別人種とされる黒人やヒスパニック系の人種、あるいは被差別カーストのために採用基準を下げたり、全採用人員のなかで最低の人数枠を制度上固定するなどの措置がとられている。(ウィキペディア)」

 

大学や就職で「人数枠を固定する」というのは、ダリットに行ったインド政府のやり方と同じ。

それにしても、これには驚いた。

「アメリカの大学入試競争においては、ゴールラインが人種枠ごとに別々に引かれており、東洋系は他人種以上に成績をあげることが必要となる(ウィキペディア)」

人種によって大学の合格点が違うなんて、日本だったら考えられない。

でも、こんなことが本当にアメリカで行われているのだろうか?
そんな疑問をもったから、これが本当かアメリカ人にメールで聞いてみた。
その返事がこれ。

「I don’t know about it being so cut-and-dry like that. But yes, there’s clearly discrimination」

 

「there’s clearly discrimination(明らかな差別はある)」と、はっきり書いている。
このメールの返事にも驚いた。
このことの詳しくはこちらの記事で↓

ちょっと真面目に「差別」、書いてみた。カースト・人種・宗教

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。