はじめの一言
「彼等の名誉心は、特別に強烈で、彼等に取っては、名誉が凡(すべ)てである。日本人は大抵貧乏である。しかし、武士たると平民たるとを問わず、貧乏を恥辱だと思っている者は、一人もいない。(フランシスコ・ザビエル 戦国時代)」
「日本絶賛語録 小学館」
今回の内容
・インド人とチップ
・インド人と台湾人の気前の良さ
・インド人の金銭感覚
今までのインドの旅でイヤだったこと。
それはレストランやホテルで、やたらとインド人からチップを要求されたこと。
それも「いい加減にしろ!」と怒鳴りたくなるほど強引に。
彼らは「チップはもらって当然」と思っている。
だから、ボクが「NO」と言って払わないと表情が変わる。
「WHY?」と鬼の形相で立ちはだかることもあった。
「引かぬ、退かぬ」というオーラが全身からみなぎっている。
聖帝サウザーを思わせるほど。
でも、インドでは一般に「金持ちはお金を出すべき」という考えがある。
前回の記事でも紹介したけど、「嫁してインドに生きる (タゴール暎子)」にはこんな言葉がある。
インド人と生活上、深く関わりをもってくるともっとしばしば見られる。貧しい者は、豊かな人から物を恵んでもらうことは当然だと考えている。
裕福な外国が援助してくれるのも当然
インド人のお金持ちだったら、ためらわずチップを出すのだと思う。
少なくても、チップの習慣がない日本人よりは気前よく出すはず。
逆にお金持ちのインド人が日本に来ると、とまどうらしい。
日本ではチップがいらないし、そもそもチップを要求することが「良くない」と考えられている。
それを知って困惑したインド人がいた。
空港でもそうだったが、チップというものがまったく要らない。バスに荷を運び入れる係員に、アメリカ人らしい乗客がチップを渡そうとして辞退される場面もあった。
これはのちに知ったことだが、かりに彼が充分な給料をもらっていなくても、日本人はチップを辞退するのである。
理解し難いことだが、この国ではチップを要求することに「ねだる」という卑しいイメージがあり、彼らには乞食の仕草に映るらしい
(喪失の国、日本 M・Kシャルマ)
「理解し難いことだが、この国ではチップを要求することに『ねだる』という卑しいイメージがあり」
このインド人の言葉はさっきの日本人女性の言葉とそっくり。
「貧しい者は、豊かな人から物を恵んでもらうことは当然だと考えている」
やっぱり、インドではこんな常識があるんだろう。
「貧しい人が金持ちからお金をもらうことは当然」
「お金持ちもお金を渡すことも当然」
こんな考え方がインドの社会に広くあると思う。
インドのお金持ちを見ると、彼らは本当に金払いがいい。
彼らは「ここぞ」というときには、出し惜しみなくお金を出す。
そんな金銭感覚を持っている。
インドに赴任した日本のビジネスマンが、インド人の金持ちっぷりに驚いたということは前の記事で書いた。
国民の97%が税金を払わないインド、3%の金持ちの生活を知りたい?
日本人の中でも「お金持ち」に入るこの日本人は、インド人の金持ちの金銭感覚についても驚いている。
インド人のお金持ちは、ふだんはケチケチしているけれど、「出すときは出し惜しみなく出す」という金銭感覚を持っているらしい。
たとえばこんなことがある。
あるインド人が何人もの客を接待したとき、全員の食事代を一人で出してこの日本人を心配させている。
5人も招待すれば、自分の月収にほぼ等しい額を使い果たす計算だ。
「いいのか、こんなに使っちゃって」こちらがハラハラする太っ腹ぶりである。
上流インド人にとって、これがふつうの金銭感覚だ。「日本を救うインド人 (島田卓)」
ボクも日本でインド人とつき合っていて、これと同じことを感じる。
友人のインドは有名企業で働いていて、日本に長期出張で来ているエリートインド人。
彼らがケチだと思ったことは一度もない。
太っ腹で金払いがすごくいい。

インド人からご飯に誘われて、おごってもらうことがある。
彼だけではなくて、他の外国人からも「今日はオレのおごりだ。好きな物を頼んでくれ」なんて感じでおごってもらうことが何度かあった。
でも、「飲み物はいいのか?デザートはいいのか?腹はいっぱいになったか?」と何度も確認されたのは、インド人とこの後出てくる台湾人だけだったと思う。
アメリカ人、イギリス人、タイ人におごってもらったときは、ここまですすめられることはなかった。
・インド人と台湾人の気前の良さ
お金を持っているインド人は、「ここぞ」というときにケチらない。
インド人のこの気前の良さは、台湾人の気前の良さに似ていると思う。
特に台南に住んでいる台湾人。
ボクにとって、台南の台湾人とはこんなイメージの人たち。
「腹いっぱい食べてくれ。もっと頼んでくれ」と、満腹になるまで客に食べさせる。
そして最後は、「支払いはこれで」と店の人にクレジットカードを見せる。
ボクが台湾で会った台南のおじさんがこんな感じの強烈な人だった。
食堂でご飯を食べていたら、声をかけられた。
そして、「お~、日本人か~。まあ、食べろ飲め」といろいろな食べ物をすすめる。
「オレは北京ダックか?」と思うくらい食べさせられた。
そして、支払いは絶対にボクにはさせようとしない。
台南の人の気質はこんな感じだと思う。
台南出身の友だちもこんな感じ。
ちなみに、日本でも関東と関西で人の気質が違うように、台湾でも台北と台南で気質が違うらしい。
いろいろな台湾人に聞いた話では、それぞれこんな違いがある。
台北の人はクールでドライ。
支払いは割り勘を好む。
それに対して台南の人は、「問題ない」の範囲が広くてルールを守らない。
「信号無視とか飲酒運転は、ぜったいに台南の方が多いですね」
と、台南出身の友だちは胸をはって言っていた。
ただ、「情」は台南の人の方があるという。

話を戻す。
日本人の場合は、だれかにごちそうしてもらうときは「相手より良い物を注文しない」という暗黙のルールがある。
でも、インド人や台南の人にはそんな気づかいはまったくいらない。
むしろ思いっきりお世話になった方がいい。
腹いっぱい食べて、つまようじで歯を磨くぐらいでいいと思う。
台南の人にごちそうになったら、満腹になった証拠にTシャツをめくってお腹を見せてもいいかも。
・インド人の金銭感覚
「ここぞ」というときに惜しみなくお金を使う傾向は、金持ちだけではなくてインド人全体にあるらしい。
日本で「分相応」というと「各人無理しない」ことを指すが、インドの結婚式では、「各自精一杯無理する」ことを指す。
「馬鹿馬鹿しい金の使い方をしないで、式は友人たちだけで質素に挙げて、あとは役所に登録すればいいんだ」インドのインテリたちは、皆口をそろえてこう言う。(インド旅の雑学ノート 山田 和)
こんなことを言っておきながら、インド人は自分が結婚をすると、同じようにとんでもないお金を使うという。
結局、「まわりからどう見られるか?」といった見栄やメンツを大事にしているのだろう。
そしてこの感覚が、台湾人(台南)や次の記事で出てくる韓国人と似ているなあ、と思う。
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