今回の内容
・インド人とチップ
・インド人と台湾人の気前の良さ
・インド人の金銭感覚
これまでインドを何度か旅行していてイヤだったのが、レストランやホテルでやたらとチップを要求されたこと。
20年ほど前、日本人旅行者の間でささやかれた「世界三大ウザイ国」の一国にインドがあった。
それも納得の強引さで、ボクが旅行で出会ったインド人は「チップはもらって当然」という態度でせまってくることがよくあって、とてもウザかった。
「日本にそんな文化はない。だから NOだ」ときっぱり拒否すると、「WHY?」と鬼のような顔になることもあれば、手をつかんでくることもあった。
でも、インド人に話を聞くと、それは単に強欲なだけではなさそうだ。
インドでは一般的に「金持ちはお金を出すべき。出して当然」という考え方がある。
インド人男性と結婚し、インドへ移住した日本人女性がこんなことを言う。
インド人と生活上、深く関わりをもってくるともっとしばしば見られる。貧しい者は、豊かな人から物を恵んでもらうことは当然だと考えている。
「嫁してインドに生きる (ちくま文庫) タゴール暎子」
この考え方の延長で、裕福な外国がインドを援助するのも当然という見方があるらしい。
実際、インド人の金持ちは気前よくチップを出す。
一方、日本にそんな習慣はないし、お金を要求することを「みっともない」とする文化もある。
だから、インドの常識や感覚で日本社会に接して戸惑うインド人もいた。
空港でもそうだったが、チップというものがまったく要らない。バスに荷を運び入れる係員に、アメリカ人らしい乗客がチップを渡そうとして辞退される場面もあった。
これはのちに知ったことだが、かりに彼が充分な給料をもらっていなくても、日本人はチップを辞退するのである。
理解し難いことだが、この国ではチップを要求することに「ねだる」という卑しいイメージがあり、彼らには乞食の仕草に映るらしい
「喪失の国、日本 (文春文庫) M・Kシャルマ」
「貧しい者は、豊かな人から物を恵んでもらうことは当然」という国の人が、「『ねだる』という卑しいイメージ」がある国に来たら、そりゃ困惑するさ。
インドは超格差社会だから、金持ちのある人がない人へ渡すことは常識になっている。
だから、「金持ち日本人」にチップを拒否すると腹が立つ。
実際、インドの金持ちは本当に金払いがいい。
「ここぞ」という時に、彼らは出し惜しみなくお金を出す。
前回の記事で、インドに赴任した日本のビジネスマンが、リッチなインド人の金銭感覚に驚いたということを書いた。
国民の97%が税金を払わないインド、3%の金持ちの生活を知りたい?
日本人の中でも「お金持ち」に入る日本人でも、金持ちインド人の感覚には驚くという。
インドにいたエリートビジネスマンの日本人が、接待した全員の食事代を一人で払うインド人にあ然とした。
5人も招待すれば、自分の月収にほぼ等しい額を使い果たす計算だ。
「いいのか、こんなに使っちゃって」こちらがハラハラする太っ腹ぶりである。
上流インド人にとって、これがふつうの金銭感覚だ。「日本を救うインド人 (講談社+α新書) 島田 卓」
日本にいるエリートインド人と付き合っていると、たまにこれと同じことを感じる。
旅行で出会った「チップを払わないだと? なぜだ!」と怒るインド人と違って、彼らは太っ腹で金払いがすごくいい。
外国人から、「今日はオレのおごりだ。好きな物を頼んでくれ」と、食事をごちそうしてもらったことは何度かある。
でも、注文時に「飲み物やデザートはいいのか?」と聞かれたり、食事中に「それで腹はいっぱいになったか? そうでなかったら、もっと頼んでくれ」と確認されたのは、インド人とこのあと出てくる台湾人だけだった。
・インド人と台湾人の気前の良さ
ボクの経験上、インド人と台湾人は気前の良さで似ている。
これは、台湾で知り合った日本人旅行者から聞いた話。
台南にいて、ご飯を食べようと食堂に入ってテーブルに座ったら、おじさんに声をかけられる。
そして、「お~、おまえは日本人か~。日本人と台湾人は兄弟なんだ。だから、ここは俺のおごりだ。好きな物を食べろ」となって、いろいろな食べ物をすすめられた。
「オレは北京ダックか?」と思うくらい食べさせてくれて、満足そうな顔のおじさんがすべて支払ってくれた。
「さすがにそれじゃ悪いです」と言っても、おじさんは彼に払わせようとしない。
台湾人、特に台南人の気質はこんな感じだ。
日本にいる台南出身の友人がいて、日本の生活で彼が困った時に何度か世話をした。
そのことを恩に感じてくれた彼はボクを食事に誘ってくれて、「きょうはお腹いっぱい食べてください。もっと頼んでください」と、満腹しか許さないという態度でおごりまくり。
そしてクレジットカードで支払いを済ませる。
実は彼がわりとお金持ちということを後で知った。
ちなみに、台湾でも台北人と台南人では気質が違うらしい。
台北の人はクールでドライで、支払いはワリカンを好む。
対して台南の人は「問題ない」の範囲が広く、あまりルールを守らないところがある。
「信号無視や飲酒運転は確かに台南の方が多いですね」と、台南出身の友人もそれは認めた。
ただ、「情」は台南の人の方があるという。
日本では、誰かにごちそうしてもらう時には、「相手より高い物は注文しない」という暗黙のルールがある。でも、インド人や台湾人にはそんな気づかいは無用で、おごってもらう時は、むしろ思いっきりお世話になった方がいい。
日本人の遠慮は、彼らには失礼になるかもしれない。
・インド人の金銭感覚
「ここぞ」という時に惜しみなくお金を使う傾向は、金持ちだけではなくてインド人全体にあるらしい。
日本で「分相応」というと「各人無理しない」ことを指すが、インドの結婚式では、「各自精一杯無理する」ことを指す。
「馬鹿馬鹿しい金の使い方をしないで、式は友人たちだけで質素に挙げて、あとは役所に登録すればいいんだ」インドのインテリたちは、皆口をそろえてこう言う。「インド旅の雑学ノート (山田 和)」
こんなことを言いながら、インド人は自分が結婚をするとなると、とんでもないお金を使うという。
結局、「まわりからどう見られるか?」といった見栄を大事にしているのだろう。
台湾人が気前が良い理由もこのメンツだ。
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