日本語には、こんな言葉がある。
アメリカやイギリスから伝わった英語が日本で独自の進化をとげてしまい、元の英語とはまったくちがう意味の言葉になってしまう。
本来は英語だけど、何十年、何百年という年月をへて、今ではネイティブスピーカーが聞いても分からないような言葉になってしまっている。
もう英語ではなくて、完璧な日本語。
日本語にはそんな言葉がいくつかある。
たとえば、アメリカ人と初詣に行ったときこんなことがあった。
日本のどこでもそうだろうけど、初詣の神社は激混み。
少しでもムダなスペースがないようにと、駐車場には車がすし詰め状態でならんでいる。
ボクが車をバックさせるときには、スタッフのおじさんが「オーライ!オーライ!」と声をかけて駐車を手伝ってくれた。
車から降りて神社に向かっていると、アメリカ人の友人がこんな質問をする。
「なあ、さっきあのおじさんが言っていた『オーライ』ってのはどういう意味なんだ?」
「ああ、オーライというのは車をバックさせるときに使う言葉で、『いいぞ』とか『大丈夫』という意味の言葉だよ。ガソリンスタンドで店員がよく使う。それに、電車が発車するときにも『発車オーライ!』と言うときがある」
「ああ、そうなんだ!オーライは今年初めて覚えた日本語だよ」とアメリカ人が笑顔で言う。
それを聞いて複雑な気持ちになった。
「なあ、あれは日本語ではなくて英語なんだぞ。all rightのことなんだぜ?」
「あのおじさんのかけ声は、all right(オールライト)だった」
それを聞いたアメリカ人は、「ウソだろ?」という顔をしている。
ホントだっちゅうねん。
辞書にも書いてあんじゃん。
オー‐ライ(all right)
同意・承知の意を表す。よろしい。よし。承知した。
「『あとは頼むよ』『オーライ』」デジタル大辞泉の解説
アメリカ人があのおじさんのオールライトの発音を聞いたとき、彼の頭の中に「all right」という言葉はまったく浮かばなったという。
まあ、そうだろうな。
「それに、意味がまったくちがうじゃないか。なんで車を停めるときにall rightなんて言うんだ?」
「そんなもん、オレだって知らんよ。なんでかは分からないけど、車を停めるときに日本人は『オーライ』って言うんだよ」
all rightという英語が幕末か明治時代の日本に入ってきて、いつの間にかオーライになっていったのだろう。
元英語で今では完全な日本語になっている。
「結果オーライ」なんて言葉は、もうどっちも日本語だ。
ちなみにalrightは、「おまえ大丈夫か?」というときに「Are you alright?」のように使う。
「英次郎 on the WEB」でall rightを見てみると、こんな意味がある。
1.万事OKで、大丈夫で、申し分ない、結構な、好都合な、差し支えない、構わない、問題[間違い・異常]ない、無事な、元気な文例
2.承知した、了解した、確かに
3.〔掛け声で〕いいぞ
この中の「大丈夫」の意味と掛け声の「いいぞ」が組み合わってオーライになったのかもしれない。
外国人に話を聞くと、日本語にはこんな言葉があるらしい。
本来は英語だけど、発音も意味も日本語化して完全な日本語になってしまった言葉が。
外国から日本に来たものが日本で変化していって、元のものとは別物になってしまう。
日本の文化にはそんなものがたくさんある。
たとえば、着物。
中国から来た衣服が日本で独自に進化して、今では日本文化を代表するkimonoになっている。
日本のキモノも、中国の古制とはいうものの、そのとおりではなく、やはり日本ふうにアレンジして保存されたのだ。とくに帯などは、まったく別物になってしまっている。
「日本的 中国的 (陳舜臣)」
このブログでよく紹介する言葉だけど、日本文化の本質を呉善花さんという韓国人がうまく表現している。
日本の生け花、お茶、庭、盆栽などについて、そのベースが中国にあったにせよ、
(中略)
それらの文化は、日本の土壌のなかで高度につきつめられ、もはやコピーを脱した独自の輝きをもって自立していることを、誰もが認めるしかないからである。「ワサビの日本人と唐辛子の韓国人 (呉善花)」
言葉も同じ。
オーライもドンマイも元は英語だけど、今では完全な日本語になっている。
独自の輝きをもっているかは知らないけど、自立はしている。
英語のネイティブスピーカーが聞いても分からないほどに。
こちらもどうですか?
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folow me plz.
@amamatsushizuo3
ドンマイもそうだな
そうそう。ドンマイのことは別の記事で書こうと思ってる。