タージマハルだ!③イスラム教の天国を表す庭園・「玉ねぎ屋根」の理由

 

はじめの一言

「日本では紙には無数の用途がある。フランスで知られている使用法の他、人びとはハンカチがわりに使ったり、信じ難いほどの耐久性を与えて革の代用にする。また小像、造花、ナプキン、雨合羽、番傘、絹まがいの生地、紐、はては蒸気機関の運動を伝えるベルトに至るまで軽くて丈夫な、ありとあらゆる類いの用具を造ってしまう。(エドモンド・コトー 明治時代)」

「日本絶賛語録 小学館」

 

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今回の内容

・「天国」をイメージした庭園
・あの「玉ねぎ型」はなんで?
・イスラーム教は声が命!

 

・「天国」をイメージした庭園

日本人の感覚だと、「お墓に庭園がほしいの?」となると思う。
でも、インドのガル帝国時代のお墓にはそれが必要だった。

死者にとっては、墓よりもむしろ庭園の方が大切だったらしい。

ムガル期の墓廟にとって、庭園は不可欠のものであり、何よりも重要なものである。タージ・マハルでも庭園は構内の中央にあり、敷地の大部分を占めている。
(中略)
ついでに死者の眠りを妨げないよう静かな庭を周囲に配する。
彼らにとってはまず慰安の場所として庭園があり、死後、神による最後の審判の日がくるまでその庭園で一時的な眠りにつく。

「タージマハル物語 渡辺建夫」

 

タージマハルの庭園は、イスラーム教徒にとっての天国をイメージしたものだった。
アラビア半島には、広大な砂漠が広がっている。
そんな乾いた大地に住んでいた人びとにとって、「天国」とはこのようなものだったらしい。

イスラム教徒にとって庭園とは天国バーグ・イ・アダン(エデンの楽園)の再現であった。澄んだ水がたえることなく湧きでる泉池に花が咲き乱れ、枝もたわわな果樹・・・といった風景を、砂漠の地、乾いた不毛の地に暮らしてきた人びとは、四方を高い壁で外界と隔てたなかに再現しようとしてきた。

「タージマハル物語 渡辺建夫」

タージマハルの庭園もまた、クルアーン(聖書:コーラン)に書いてあるこの「エデンの楽園」を再現したものになるという。

 

スペインの「アルハンブラ宮殿」の庭も、「クルアーンにあるエデンの楽園をイメージしてつくられた」とテレビ番組で見た記憶がある。

ちなみに、天国(浄土)をイメージして庭をつくることは、日本でもよく行われていた。
その代表的なものには、10円玉にある「平等院鳳凰堂」がある。

鳳凰堂とその堂内の阿弥陀仏、壁扉画や供養菩薩像、周囲の庭園などは『観無量寿経』の所説に基づき、西方極楽浄土を観想するため、現世の極楽浄土として造られたことは間違いない。

「ウィキペディア」

西方浄土をイメージした庭

 

・あの「玉ねぎ型」はなんで?

イスラーム教のモスクといえば、丸い玉ねぎのような形の屋根が特徴的とくちょうてき
何で、あんな形の屋根にしたのだろうか?

タージマハルも、この丸い屋根がとても印象的。

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イスラームの建築でこうした丸屋根になったのには、こんな理由がある。

砂漠で無限にあるのは土だけである。
それを焼いて煉瓦を作る。煉瓦では平屋根を作ることができない。
木材のように、壁から壁へ梁を渡すことができないからだ。
丸屋根というのは、下からマルク煉瓦を積んで行って、最後に頂点の要石をぽんと入れると、それで崩れない原理を使ったものだという。
そういう建築方法を考え出した人というのは何という天才だろう。

「日本人が知らない世界の歩き方 曽野綾子」

砂漠の土を焼いた煉瓦れんがでは、下の写真のような平屋根をつくることができなかったということらしい。
砂漠の土しか使うことができなかったという条件のもとで、大きな建物をつくろうとしたらあの丸屋根になったということらしい。

 

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・イスラーム教は、声が命!

他にもこんな理由があると思う。

モスク(イスラム礼拝所)の場合、あの玉ねぎ型にすればイスラーム教の聖書「クルアーン(コーラン)」を声を出して読んだときにその声がよく響くから。

クルアーンとは「声に出して読むもの」という意味で、声(音)がとても大事。
声こそ命。

コーラン(クルアーン)

イスラーム教の根本聖典。
アラビア語で「音読されるもの」を意味する。
天使ガブリエルによってムハンマドに啓示された、神の教えの記録とされる。
114章からなり、第3代正統カリフのウスマーンの時代に現在の形にまとめられたとされる。

「世界史用語集 山川出版」

イスラーム圏に旅行に行ったとき、モスクの中で聖職者がクルアーンを声に出して読んでいるのを聞いたことがある。
あの玉ねぎの内側にいると、本当に声がよく通る。
別世界にいるような気がしてくるほど。

 

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パキスタンのモスク
ここも声がすごくよく響いていた。

 

イスラーム教は、キリスト教の カトリックのように聖像をつくることが禁止されている。
信者の視覚に訴えることができない。
だから、クルアーンを読む声がよく響くことを大事に考えているのだと思う。

 

下の絵は、天使ガブリエル(アラビア語読みで、ジブリール)が洞窟にいたムハンマドに、アッラー(神)の言葉を伝えているところ。
このとき、天使はアラビア語を話していた。
アラビア語は神の言葉。

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画像はウィキペディアより。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。