【1920年代のアメリカ】永遠の繁栄・禁酒法の理由・世界恐慌

 

イスラーム教徒はお酒を飲むことができない!

聖書のクルアーンに、アルコールとギャンブルは「忌み嫌われる悪魔の業」と書いてあるらしい。
そのことはこの記事を↓

サウジアラビアの女子大生①イスラム教が飲酒を禁止する理由

 

イスラーム教の禁酒はわりと広く知られていると思う。

では、アメリカはどうだろう?
むかしむかし、アメリカでも飲酒が禁止されていた。
アメリカや世界史を学んだ人は知っているだろうけど、一般的にはイスラーム教徒の禁酒よりは知られていないはず。

でもアメリカ人ならだれでも知っているような有名なこと。
一般知識として覚えておいて損はない。

今回はそんなアメリカの禁酒法の話です。

 

1920年代のアメリカ経済はまさに絶好調。

第31代大統領のフーヴァーはこの時代のアメリカを「永遠の繁栄」と言っている。

「永遠の繁栄」

1920年代のアメリカの経済的好況を表現することば。重工業への投資拡大、ヨーロッパの疲弊による対外競争力の相対的上昇などにより、アメリカ経済は空前の繁栄を謳歌した。フーヴァーは「われわれは貧困に対する最終的勝利に近づいている」と演説した。

「世界史用語集 山川出版」

「ヨーロッパの疲弊」というのは、1914年~1918年までの第一次世界大戦でヨーロッパの各国が大ダメージを負ったこと。
ヨーロッパが力を失ったぶん、アメリカは繁栄することができた。

でもそれは大正時代の日本も同じ。
この時代に、急に金持ちになる「成金」という言葉が広く使われるようになった。

 

 

1920年代のアメリカ社会のキーワードは「大量生産・大量消費」。

大量生産の象徴的なものに、「組み立てライン方式」がある。
これは「自動車王」と呼ばれたフォードが始めたもの。
ベルトコンベアを導入し、流れ作業で自動車をどんどん生産することができた。

 

でも、フォードを始め、工場の経営者たちはあることで頭を悩ませていた。

「労働者がまともに仕事をしない!」

当時のアメリカの労働者には、労働意欲や規律というものがほとんどなかったらしい。
遅刻欠勤は当たり前。
中には、仕事中にビーチに遊びに行ってしまうような労働者もいたらしい。
それを助長させていたのが、お酒。

 

酒を飲むと労働者が仕事をしなかったり仕事の能率がおちてしまったりしてしまう。
経営者たちはそのことに困り果てる。
でも、労働者に酒を飲ませないようにするのはムリ。

ということで、「社会から酒をなくすしかない!」という結論にいたる。
工場の経営者たちは、政治家に禁酒法を成立させるように働きかけた。
そして彼らの思惑通りにことが進んだ。

禁酒法

アメリカ合衆国における酒類の製造・販売・運送を禁じた法律。
禁酒運動は宗教的な意味と、労働者の規律や生産効率向上を狙う経済的な意味を持つ。
1919年に憲法を修正して成立したが、酒の密造・密売の横行を招いたため、33年に廃止された。

「世界史用語集 山川出版」

この説明には禁酒法が生まれた理由に、「宗教的な意味」と「経済的な意味」があると書いてある。
この記事では経済的な意味のほうを取りあげる。

 

酒を見つけては破壊する人たち。
「NHK新・映像の世紀・第2集」のキャプチャー

 

禁酒法を望んでいたのは自動車王のフォードだけではない。

発明王のエジソンも「アメリカから酒をなくすべきだ」と考えていた。
そのために、禁酒法の成立を支援する映画までつくっている。

アメリカで禁酒法が施行されてから、アメリカ社会はどう変わったのか?
エジソンは手記にこう書いている。

かつては月曜になると社員の奥さんたちがやってきて、金曜にもらったばかりの給料を夫が全部飲んでしまったと私に泣きついたものだ。だが禁酒法のおかげで、みんなその悩みから解放されたのだ

「新・映像の世紀・第2集から」

禁酒法の成立に大きな影響をあたえた2人の「王」
「NHK新・映像の世紀・第2集」のキャプチャー

 

でも、禁酒法は失敗してしまう。
すでに酒の味を覚えていた人たちが、酒をあきらめることなんてできるわけがない。
先ほど書いてあったように、これが「酒の密造・密売の横行」を招いた。
これでは、酒を禁止した意味がなくなってしまう。

それで結局、1933年に禁酒法は廃止された。

 

禁酒法が廃止される4年前の1929年、アメリカではとんでもないことが起きている。
世界恐慌が始まったのだ。

世界一の債権国アメリカの経済破綻が資本主義各国に波及しておこった大恐慌。その破綻の背景としては、購買力と比較しての過剰生産と投資拡大があった。

「世界史用語集 山川出版」

これはアメリカだけではなくて、世界にとっての非常事態。
この世界恐慌は1929年、ニューヨークのウォール街で株価が大暴落した「暗黒の木曜日」から始まっている。

 

この記事のはじめにフーヴァー大統領が「永遠の繁栄」を宣言したと書いた。
それは、1929年の3月のこと。
「われわれは最終的勝利に近づいている」と演説した同じ年に、アメリカ経済は崩壊してしまう。

おごれるも者久しからず」という平家物語の言葉どおり。

 

「永遠の繁栄」の7カ月後、アメリカには失業者やホームレスの人たちであふれた。

ケインズは「国家的自給」の中でこう言っている。

グローバルでかつ個人的主義的な資本主義は成功ではなかった。
それは知的でなく 美しくなく 公正でもなく 道徳的でもない。
そして善をもたらさない

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。