韓国は日本にとって一番近い国というだけあって、韓国語の中には日本語とほぼ同じ発音と意味の言葉がある。
コウソクドウロ(高速道路)、センタッキ(洗濯機)、タイオンケイ(体温計)などなど。
漢字を使っていた国同士なんだから、同じ言葉や似た言葉はたくさんあるんだろう。
それは間違いない。
でも、このことに「日本の文化は、韓国が教えてあげた」という韓国人の「文化的優越性」が加わると、思わぬ誤解が生まれることがある。
前にも紹介したけど、韓国人が日本にもつ「文化的優越性」というのはこんなものをいう。
呉善花さんという韓国人はこう書いている。
韓国は父親である中国から教えてもらった文化を弟である日本に教えてやったーこれが中国・韓国・日本の関係を発想する基本にあります。
「日本の驕慢・韓国の傲慢 (徳間書店)」
また韓国の日本大使館の職員だった日本人には、こんなふうに感じている。
韓国は、もともと日本に対して「後進国」という認識を持っていたのはないかと見られるきらいがあります。
韓国人に言わせると「朝鮮半島から日本に文化が伝えられた」わけです「つきあいきれない韓国人 渡辺晶 (中公新書ラクレ)」
「日本語と韓国語には、言葉の発音が似ているものがある」、「韓国が日本に文化を教えてあげた」という背景があると、「この日本語は、韓国語が起源だ」という誤解を生じてしまうことがある。
それが今回紹介する「わっしょい」という言葉。
「祭りだワッショイ」のわっしょい。
なんで「わっしょい」が韓国起源なのか?
そう思った人も多いと思う。
一時期、韓国語の「ワッソ(来た)」という言葉が日本語の「わっしょい」になった、という話が広まったことがあるのだ。
確かに発音は似ている。
韓国の新聞には、「ワッソ→ワッショイ」になったと書いていて、日本人の中にもそれを信じ込んだ人もいた。
実際には「わっしょい」の語源は「和背負い(和を背負う)」らしい。
ただ、これもあまりはっきりしてないけどね。
韓国の大学で講師をしていた「野平俊平」という人が、この「ワッソ」というハングル文字を丁寧に分析した結果、「ワッソ」という文字の形態ができたのは、早くて16世紀以後だという結論を出している。
「왔소(ワッソ)」は「ー소(ソ)」という語尾にしても、謙譲を表す先語末語尾「ー[ㅅヽㅂ](サプ)ー」の変異形態「ー사오(サオ)ー」「ー[△ㅗ]오(ゾオ)ー」「ー[ㅈヽ]오(ジャオ)ー」から「[ㅇヽ](ア)」が脱落したもので、16世紀になって初めて現れた形態である。
従って「왓소(ワッソ)」という形態が現れるのは、早くて16世紀以後、「왔소(ワッソ)」に至っては19世紀末期以降ということになる。
「韓半島の古代文化」が伝えられ、四天王寺が建立された飛鳥時代には「ワッソ」などという形態はあり得なかったということである。
「韓国人の日本偽史 (小学館文庫) 野平俊平」
専門的すぎてよく分からないけど、ワッソがワッショイの語源というのはありえないらしい。
つまり、「ワッソ」と「わっしょい」は関係ないということ。
このことで、この野平氏が「これは、どうなのか?」と問題視したのが大阪の「四天王寺ワッソ」のホームページの説明文。
ちなみに、「四天王寺ワッソ」とは、こんなお祭りのこと。
四天王寺ワッソは、古代東アジアの国際交流を雅やかに再現した 大阪のお祭りです。
この団体のホームページの説明が、こんなものだったという。
「ワッソ」とは、現代韓国語で「来た」という意味です。
日本の祭での掛け声「ワッショイ」は、韓国語の「ワッソ」が語源ではないかと言われています。
日本と韓国はお隣の国で、数千年前から多くの人々が日本海を越え交流をくり返していました。
当然、交わされる言葉にも類似性が多々見られる訳です。「韓国人の日本偽史 野平俊平」
この本が発行されたのは、2002年になっている。
だから、このホームページの説明文はそのころのもの。
この後、「『ワッショイ』の語源は、『ワッソ』ではないのではない」ということが日本で広まった結果、現在のホームページの説明はこうなっている。
「ワッソ」とは、現代韓国語で「来た」という意味です。
日本と韓国はお隣の国で、数千年前から多くの人々が日本海を越え交流を繰り返していました。
当然、交わされる言葉にも類似性が多々見られる訳です。
古代の国際交流を再現するにあたり、「来た」という言葉を祭りの名称にしたのです。「四天王寺ワッソ」
以前のものと比べると、この言葉がそっくり削られている。
日本の祭での掛け声「ワッショイ」は、韓国語の「ワッソ」が語源ではないかと言われています
「~と言われています」と、その可能性をにおわせる表現もなくなっている。
つまり、現実的には「ワッショイとワッソは関係がない」ということなんだろう。
これで一件落着。
と思ったら、案外そうではない。
ウィキペディアにはこある。
テレビ・新聞等では「ワッショイの語源はワッソである」という俗説が事実であるかのように報道されることもあり、日韓の歴史教材にも取り上げられている。
この記事を書いているときにも、「かん違いさん」を見つけた。
韓流ドラマが好きで韓国語を学んでいる人がブログでこんなことを書いている。
知ってましたか?「ワッショイ」は韓国語の「ワッショイ」から来たんです!
韓国語から来てないから。
これらのブログは、2013年のものあれば、2014年のものがあった。
韓国語を勉強しているうちに、どこかで「ワッショイ=ワッソ説」を発見したのだろう。
韓国語の学習は、ぜひがんばってやってください。
でもこうしたブログから、間違った情報が広まってしまうのかと思うと心配になる。
せっかく「ワッショイ」と「ワッソ」は関係ないことが分かったのに。
こちらもどうぞ。
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