はじめの一言
「日本は驚くべき発展をしたが、それは当然で、他の如何なる国民にもこれ程の資格はない。彼らは貧乏だ、しかし高貴だ(ポール・クローデル 大正時代)」
「日本絶賛語録 小学館」
今回の内容
・「日本文明」のデメリットは?
・日本が一度「破滅」したきっかけ
・日本は、やっぱり変わってる。
・「日本文明」のデメリットは?
前回のおさらいをサラリと。
アメリカの国際政治学者である「サミエル・ハンチントン」は、著書「文明の衝突」で世界を次の八つの文明圏に分けている。
「西欧文明」「ラテンアメリカ文明」「アフリカ文明」「中華文明」「ヒンドゥー文明」「東方正教会文明」「イスラム文明」と「日本文明」
「日本文明」には、次のような特徴があるという。
世界のすべての主要な文明には、二カ国ないしそれ以上の国々が含まれている。日本がユニークなのは、日本国と日本文明が合致しているからである
(文明の衝突 サミエル・ハンチントン)
この日本の「国と文明が合致している」というのは、前回インド人が言っていた「日本は、どこでも同じ」という言葉にも重なる。
「インドと日本の特徴は、インドは『多様性がある国』で日本は『どこも同じ国』ということですね。インドにはいろいろな民族がいて、言葉も州や地域ごとに違います。日本はどこでも日本人がいて同じ言葉を話します」
インドはすっごい他民族国家。
別の地方に行くと、違う民族が住んでいて言葉が通じないということがよくある。
お札にも、15の文字が書いてある。
日本では、こんなことはない。
日本のどこに行っても、圧倒的多数の日本人が住んでいるし、日本語も通じる。
日本には、地域によって信仰する宗教が違うということもない。
日本は島国で、昔から外国から人が入りにくい。
日本は外から攻め込まれにくかったから、異民族によって支配されたという歴史がない。
だからガラパゴス島のように、独自の進化をして「1国=1文明」という「日本文明」を生むにいたったのだろう。
それは、インド人から見たら「日本は、どこも同じ」と思うほど同質性が高い。
「日本はどこに行っても変わらない」ということについては、友人のインドネシア人やアメリカ人も同じ意見だった。
「文明の衝突」の記述を読んで、「日本だけが日本文明として独立した存在なんだ!」と、誇らしく感じるかもしれない。
だけど、この「強み」は見方を変えれば弱点になる。
著者のサミエル・ハンチントンは、それをこう指摘している。
そのことによって日本は孤立しており、世界のいかなる他国とも文化的に密接なつながりをもたない(同書)
日本は「世界で独立した文明圏である」というとは、同時に「世界から孤立している状態」にもなってしまう。
「世界のいかなる他国とも文化的に密接なつながりをもたない」というのは、簡単に言ったら、「仲間がいない」「友だちができにくい」ということだろう。
・日本が一度「破滅」したきっかけ
日本は、食料自給率が少なく、石油や鉱物などの資源も輸入に頼っている。
世界の国々と協力していかないとやっていけない国なのに、世界から孤立しやすいというのは、「誇るべき面」よりも「負の面」の方が大きいのではないかと思う。
日本の歴史に目を向けてみると、日本が一度「破滅」したのは、日本が世界から孤立したことがきっかけだった。
後年、岸信介はこう回想した。
「日本は孤立したら生きていけないよ。孤立したときが一番危ないんだ。日英同盟を破棄して日本は苦しくなった。そこに昭和の大恐慌が起きて、満洲に向かったんだ(満洲帝国史 太田尚樹)」
国際社会での日本の孤立が決定的となったは、日本が国際連盟を脱退したとき。
国際連盟脱退
国際連盟理事会も1932年2月、リットン報告書に基づく対日勧告案を42:1で採択。日本は3月に連盟脱退を通告した。
(日本史用語集 山川出版)
このときは、国際連盟から「日本は満州国から軍を引き上げるように」と言われたのを拒否して、結果、国連から脱退してしまった。
ちなみに、このとき日本の首相は、天照大神に国連の脱退を報告している。
齋藤首相、国際連盟脱退を伊勢神宮に報告(ウィキペディア)
余談だけど、この「42:1」の唯一の「1」の国が採択を棄権したタイ。
「国際社会で、大国を敵に回さない」というタイ外交らしさがあらわれている。
こうして国際社会に背を向けた日本は、孤立の道を歩んでいく。
そして、同じく国際連盟を脱退したドイツやイタリアと組んで太平洋戦争に突入し、敗戦によって一度「破滅」した。
・日本は、やっぱり変わってる。
そんなことが昔、ありました。
今の日本で、すぐに戦争が始まることなんて考えられない。
でも過去の歴史を見ると、日本がとんでもない状態になるとしたら、世界から孤立したときだろう。
だから当たり前のことだけど、日本は世界の国々と協調していくことが本当に大事になる。
「世界の国々と協調」といっても、難しいことは専門家にまかせちゃえ。
一般の人なら、国の内外で出会う外国人と仲良くすればいい。
そしてそのための第一歩は「日本は、世界の中ではちょっと変わった国だ」と認識することだと思う。
世界と違うということは、誇らしいと同時に危険でもある。
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