「鬼門(きもん)」って言葉を聞いたことありますか?
ネットを見てみると、こんな感じで記事のタイトルに使われている。
「ドラマのリメイクは鬼門!? EXILE・AKIRA主演の『GTO』に早くも暗雲」
「橋本環奈『警視庁いきもの係』が鬼門の日9で達成した快挙」
「やはり鬼門!? 関ジャニ∞の札幌公演が、チケットぴあで『空席あり』」
「恋愛の鬼門 – 女子力アップで彼氏を作る方法」
「ダイエットの鬼門…落ちにくい“ウエストのお肉”対策を徹底解剖 …」
今回はこの「鬼門ってなんだ?」ということを書いていきたい。
鬼門の意味と「東北の理由」について。

まずは、鬼門の辞書的な意味を確認しておこう。
こんな感じ。
き‐もん【鬼門】
1 陰陽道(おんようどう)で、邪悪な鬼が出入りするとして万事に忌み嫌われた艮(うしとら)(北東)の方角。また、その方角にあたる場所。
2 行くと悪いことに出あう場所。また、苦手な人物や事柄。「あそこの家はどうも鬼門だ」「数学は鬼門だ」
デジタル大辞泉の解説
先ほどの記事のタイトルで使われていた鬼門は2のほう。
「どうもうまくいかない日時やものごと」といった意味。
でも、もともと鬼門とは1の意味だった。
縁起の悪い不吉な方角のこと。
その方角はむかしでいう「艮・丑寅(うしとら)」で、東北(北島)のこと。
なんで鬼門が不吉なのか?
それは、この方角から邪悪な鬼が入って来ると考えられたから。
この場合の鬼とは日本でいう鬼のことではない。
中国語の「鬼」。
死者の霊魂のこと。
鬼
幽霊,亡霊.(中国では人が死ぬと魂が残って‘鬼’になるという迷信がある.)
中国語辞典
日本語で人が死ぬことを「鬼籍に入る」と言う。
この場合の「鬼」のこと。
イメージとしては、「死者の戸籍に登録される」みたいなものだと思う。
生きている人間に病気や死など、いろいろな不幸を運んでくるのが鬼。
中国人のガイドから聞いた話では、死んだ人間が幽霊(鬼)になって現れ、生者に災いをもたらすという。
だから昔の中国人や日本人は、鬼が入って来る方角を「鬼門」として恐れていた。
今でもこの考え方は残っている。
これは日本の幽霊だけど、中国語の鬼はこっちのほう。

鬼門について、ここまではボクも知っていた。
でも不思議だったのは、その方角がなんで「東北」なのか?

この図の「丑寅(うしとら:東北)」が鬼門にあたる。
鬼門とは「鬼が入って来る門」ということは知っていたけど、それが東北である理由がわからなかった。
そんな時、出会ったのが司馬遼太郎の「空海の風景」です。
ここに鬼門が東北になった理由が書いてある。
北東の隅は暗い、という鬼門の思想が中国から日本に入りこむのは、早く七世紀のころであったらしい。
陰陽五行説からきている。陰陽説とはおそらく中国の古代の農民が、日光がつくりあげる風景のあざやかな変化を見、日当たりの悪い所(陰)にできる作物と日当たりのいい所(陽)に出来る作物とのちがいにおどろき、農村にいた天才がこれに触発されて形而上化したものであろう「空海の風景 上(司馬遼太郎)」
古代の中国人が畑や田んぼの作物を見ていて、「どうも、あそこは育ちが悪いなあ」というところを見つけた。
それは単に日当たりの問題だけど、頭のいい人がそれを理論化して、「鬼門」という考え方が生まれた。
どうやらそういうことらしい。
空海の風景を読んでいたら偶然この文を見つけて、今まで疑問に思っていたことが突然わかった。
こういうのを「目から鱗(うろこ)が落ちる」なんて言う。
目から鱗が落ちる
目から鱗が落ちるとは、あることをきっかけに、今までわからなかったことが急に理解できるようになることのたとえ。
「故事ことわざ辞典」
今ではすっかり日本語の表現として定着しているけど、もともとこれはキリスト教の聖書に書いてある言葉。
「鬼門」は中国から来て、「目から鱗が落ちる」は西洋から来たということ。
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