コロンブスのアメリカ大陸発見!の評価。偉人/迫害者?発見/到達?

 

「いよ~、国を見つけたぞ」

中学生のころ、コロンブスが新大陸(アメリカ大陸)を発見した1492年をそう覚えた。
これは日本中の先生が言っていることなのか、それとも、この先生のスペシャルな言い方なのかは知らない。

とにかく30年ぐらい前のことを、今でも覚えているのだから、教え方としては成功している。

1492年という年は、アメリカで特別重要な年だ。
それで歴史が苦手なアメリカ人でも、1492年なら知っているという人も多いらしい。

 

それで前に、アメリカに住んでいた日本人からこんなことを聞いた。

彼がスーパーで買い物をしていたとき、レジで合計金額が「1492」になった。
1492ドルか、149.2ドルか、14.92ドルかは分からない。
とにかく「1492」の数字がならんだ。

すると、レジのアメリカ人のおっさんが大きな声で言う。

「おっ!コロンブスがアメリカを見つけた!」

そう言って、親しみをこめた笑顔を彼に向ける。

「『アメリカ人ぽいなあ』と思いましたよ。日本の店員はお辞儀をしたり敬語をつかったりして、丁寧な接客をします。けど、アメリカはちがんですよね。客にも友だちみたいな感覚で店員が接するんです。けっこう気軽に客に話しかけるんですよ」
話を聞いていて、たしかに「アメリカの接客」っぽい気がした。

ちなみこのころ、日本では1467年に応仁の乱がはじまって戦国時代の真っ最中。
日本のスーパーなら、買い物金額が1467円になっても、「おっ!応仁の乱が始まりましたね」と店員がニッコリすることはない。

 

コロンブス(ウィキペディアから)

 

そのコロンブス一行がアメリカ大陸に着いた時、現地の人は白人の彼らを”神”と考えた。
コロンブスの航海記録に、その時の様子がこう書いてある。

「天から来た人間を見にやってこい。彼らに食物や飲物をもってこい」と呼びかけていました。多数の男女がそれぞれ何か手に持って、神に感謝を捧げながら、地にひれ伏し、天に向かって手をあげ、我々に陸地にくるようにと叫んでいました。

「コロンブス航海誌 (岩波文庫)」

コロンブスがアメリカ大陸に到達(または発見)した日を記念して、今のアメリカでは、10月12日を「コロンブス・デー」という祝日にしている。

でも、今年のコロンブス・デーはちょっと騒がしい。

コロンブス・デーのことは、ウィキペディアの項目をどうぞ。

コロンブス・デー

 

「はたして、コロンブスがアメリカ大陸を”発見した”ことはすばらしいことだったのか?」

「コロンブスをどう評価するか?」という議論が、今アメリカでさかんにおこなわれている。

今年8月、ヴァージニア州で白人至上主義者とそれに反対する人たちの間で衝突が起きて、女性1人が亡くなり、多数の負傷者が出た。

「白人至上主義者は出て行け」死者を出した極右集会を州知事が批判。一方トランプは…

 

この後、人種差別をめぐる論争が活発化し、その中で「コロンブスの評価を見直すべきだ」という声が上がるようになる。

ヨーロッパから見たら、コロンブスはアメリカ大陸を発見した偉大な人物だ。
でも、発見されたアメリカ先住民からすると、「先住民を迫害した人物」であって偉人ではない。

それでアメリカではコロンブス・デーの祝日に反対して、「『先住民の日』に変えるべきだ!」という声が上がっている。

TBS News(2017年10月10日)から。

「先住民を大量に虐殺した人物をたたえるなんてひどい人種差別だ」(「名前を変えるべき」派)
「コロンブスはアメリカの歴史上とても重要だから、名前をなくすなんて弊害が出ると思う」(「名前は残すべき」派)

歴史上の人物の業績を単なる過去と見るのか、それとも今も続く人種差別の象徴と見るのか。論争は簡単に収まりそうにありません。

「米で「コロンブス・デー」巡り論争」

これからどうなるかは分からないけど、「コロンブス・デー」という祝日の名前はなくなるかもしれない。

 

こうした議論は前からあった。
30年前の日本の学校では、コロンブスがアメリカ大陸を「発見」したと教えていたけど、今では「到達した」と教えるのが一般的だ。

コロンブスはアメリカ大陸を、「ディスカバー」したのか?それとも「リーチ」したのか?

アメリカ人に聞いても意見は分かれる。

「アメリカ大陸はヨーロッパ人が来る前からあったのだから、『リーチ』が適切だ」と言う人。
「いや、あの時代のヨーロッパ人の価値観や感覚を知るべきだ。だから、『ディスカバリー』がいい」と言う人。
さらにに、「表現なんてどっちでもいい」と言う人。

 

このニュースに対して、日本のネットでの反応はこんな感じ。

・たまごの日でよくない?
・コロンブスは到達したところまでを評価すべきだな。
・休みぐらいゆっくりしたらいいのに
・先住民にしたら悪魔だからな。
・人種差別って発想はなかった。すごいなw
・日本だと卵立てた人くらいしか教わってないから知らなかった
・こう言うのって、例外なくブーメラン案件なのに、騒ぎだす奴が多いな。
・こういうこと言ってると 動物たち「ココ、我々の土地、人間カエレ!」までいくぞ?w
・植物「動物たちよ、なぜ我らの土地に入ってきて我らを虐殺するのだ?」

 

今までどおり、「コロンブス・デー」でいいのか?
それとも、「先住民の日」に変えるべきか?

アメリカでも議論が分かれているのだから、誰もが納得する正解はない。
人の価値観の数だけ、正しさや正義があるということですね。

 

同じ人物でも、見方が違えば評価も変違う。
こんな例はたくさんある。

例えば、韓国では英雄の安重根を、日本政府はテロリストと呼んだ。
「どっちが正しいのか?」なんて議論は意味がない。

それぞれの見方を知って、相手の立場を認めるしかない。
それか、どっちの立場にも立たず、離れて見ているか?
ただ、自分の見方を相手に押しつけることは間違っている。

 

それにしても、アメリカには本当にたくさんの見方や考えがある。
7月4日はアメリカの独立記念日だけど、黒人からの見方は別。

「わたしはアメリカで生まれたけれど、自分をアメリカ人だと思ったことがない」とか「黒人として、自分は7月4日に誕生した市民だと思っていない」と言う人もいる。

くわしいことはこの記事をどうぞ↓

アメリカ独立記念日(7月4日)とは?白人と黒人とでは、価値が違う

 

ちなみに初めてアメリカ大陸に到達したヨーロッパ人はコロンブスではなくて、いまでは10世紀のレイフ・エリクソンだったというのが定説。
知らなかったらこの機会に覚えておこうず。

クリストファー・コロンブスの大航海時代における「発見」に先立つこと500年前に、すでにアメリカに上陸していたヨーロッパ人であったことは確実である。

レイフ・エリクソン

レイフ・エリクソン

 

おまけ

コロンブスの航海誌にはこんな記述がある。

私はここで暇取っていないで、ともかくシパングの島に到達できるかどうか行ってみたいと考えております

「コロンブス航海誌 (岩波文庫)」

この「シパング」とは「ジパング(日本)」のこと。
コロンブスは黄金の国・日本にも行きたいと考えていたのだった。

 

 

こちらの記事もいかがですか?

アメリカ 「目次」 ①

アメリカ 「目次」 ②

 

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ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。