中国・台湾人が尊敬する「孫中山(孫文)」は日本人名だった

 

日本で「中山」というと、「中山美穂」や「中山秀征」といった人が頭に浮かぶと思う。

「中山」で検索したら、その名前が出てきたから。

でも、中国人が「中山」という文字を見たら、孫文の顔が思い浮かぶだろう。
日本ではふつう「孫文」と言うけれど、中国では「孫中山」が一般的だ。

 

ここでクエスチョン。
孫文(孫中山)は、何をした人物か?

 

 

答えは、1911年の辛亥(しんがい)革命。

辛亥革命とは、中国最後の王朝・清を倒して中華民国を建てた革命のこと。

辛亥革命

孫文を臨時大総統とする中華民国の建国が宣言され、2月、袁世凱の活動により清朝皇帝が退位した

「世界史用語集 (山川出版)」

この辛亥革命によって、中国から皇帝が消えた。

この革命が起こるまで、中国では秦の始皇帝以来、約2000年間ずっと「皇帝が国を支配する」という政治体制(君主制)が続いていた。
孫文はそれを終わらせた。
これは本当に画期的なことだ。

 

兵馬俑
秦の始皇帝の墓

 

日本の学校では「孫文」と教えているこの人物は、先ほど書いたように、中国では「孫中山」になる。

孫中山は中国でとても尊敬されていて、中山陵という巨大なお墓がつくらたほか、「中山公園」や「中山大学」など彼の名前にちなんだ名称がたくさんある。

さて、この「中山」とは孫文が日本に住んでいた時に使っていた日本人名だ。
彼は日本に亡命中、「中山樵(なかやま きこり)」と名乗っていて、台湾のウィキペディアにはこう書いてある。

流亡日本時,曾化名中山樵(日文平假名:なかやま きこり),在日本多尊稱其為中山先生,「中山」實為姓,惟後訛傳為「孫中山」,孫氏個人多用「孫文」

孫中山

中国や台湾で、「孫中山」は知らない人がいないほどの有名人。
*ただ中山忠能(明治天皇の祖父)から拝借したという説もある。

 

でも、この「中山」が日本人名だということを知っている中国人や台湾人はビックリするほど少ない。
中国人の日本語ガイドでも、このことを知っている人はほとんどいなかった。

ボクが聞いた範囲でこれを知っている人は、10人に1人ぐらい。
しかもそれは、日本語ガイドや日本にいる中国人や台湾人だから、ふつうの中国人や台湾人だったらまず知らない。

 

マカオの上に「中山市」がある。
これも孫文(孫中山)にちなんでつけられた。

中国の都市で、日本人の名字が都市名なっているのはきっとここだけ。

 

孫文(孫中山)

 

蒋介石は台湾で偉人とされているけど、中国では嫌われている。
毛沢東は中国で偉人とされているけど、台湾では嫌われている。

でも、孫文は中国と台湾から同時に尊敬されている。

ちなみに、孫文が革命戦士を育てるために建てた「黄埔軍官学校(こうほぐんかんがっこう)」では、蒋介石が校長を、毛沢東は面接の試験官をしていた。

今からは想像できないけれど、蒋介石と毛沢東が力を合わせて働いていた時代もあった。

 

黄埔軍官学校(こうほぐんかんがっこう)」

 

校長の蒋介石

 

政治部主任をしていた周恩来
上3点の画像は「NHK 映像の世紀」のキャプチャー。

黄埔軍官学校には、「孫文・蒋介石・毛沢東・周恩来」という中国の四天王がそろっていた。

 

そんな孫文さんの誕生日は、今月11月の12日。

今月は孫文の誕生月ということで、神戸の孫文記念館で、写真展や二胡の演奏、さらには「中国近代化における孫文の影響」という講演もおこなわれる。

時間がある人はぜひどうぞ。

くわしいことは、神戸新聞の記事を読まれたし。

神戸華僑の歴史たどる 孫文記念館で写真展

 

孫文といったら、孫文の革命運動を全力で支援していた日本人「宮崎滔天(みやざき とうてん)」を忘れちゃダメですね。

宮崎滔天ら日本の志士との交流を深め、1905年東京で滔天と共に中国同盟会を結成、指導理念として三民主義を唱えました。

宮崎兄弟と辛亥革命

宮崎滔天は孫文だけではなく、アギナルドのフィリピン独立運動も支援していた。

 

北京の紫禁城

 

 

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。