ディズニー映画の「ポカホンタス」を知ってますか?
著作権の関係でここで画像を載せられないから、ディズニーキッズ公式ホームページからポカホンタスとジョン・スミスも確認してくれ。
今回はこのポカホンタスについて書いていこうと思う。
いまアメリカでトランプ大統領の言葉が物議をかもしている。
トランプ大統領に批判的で「反トランプ」として有名な民主党のウォーレン議員を、「ポカホンタス(Pocahontas)」と呼んで揶揄(やゆ)したのだ。
AFPの記事(2017年11月28日)にこうある。
トランプ氏は「あなた方は私たちの誰よりも長くここにおられる」と語り掛けた後、「しかし、議会にも昔からいる議員がいる。彼女はポカホンタスと呼ばれている」と述べ、先住民の祖先がいると公言しているウォーレン氏を皮肉った。トランプ氏はウォーレン氏を繰り返し「ポカホンタス」と呼んでいる。
ウォーレン議員は「アメリカ先住民(ネイティブ・アメリカン、インディアン)を先祖にもつ」と主張していたことから、トランプ大統領はアメリカ先住民の「ポカホンタス」の名前をもちだしたらしい。
ホワイトハウスは「トランプ氏の発言は人種差別ではない」と声明をだしている。
トランプ大統領の発言が差別かどうかは別として、アメリカに興味があるなら、「ポカホンタス」は知っておいたほうがいい。
でも、ポカホンタスの前に、このニュースにたいする日本の反応を紹介したい。
インターネットではこんなコメントがあった。
・アンポンタン
・バッファロー吾郎かよ
・ディズニーだろやったじゃん
・アパッチけんみたいなもんだろ
別にいいじゃん
・七面鳥を奢ってくれた部族を絶滅させたのがアメリカの白人たち
・この発言のどのへんが差別なんだ?
ポカホンタスはアメリカでは「知ってて当たり前」という人物だけど、日本での知名度はいまいち。
ポカホンタス(1595年ごろ- 1617年)はアメリカ先住民の女性で、ヨーロッパ人との友好を象徴するような存在だ。
1492年にコロンブスがアメリカ大陸を発見(または到達)してから、たくさんのヨーロッパ人がアメリカに来るようになった。
あるときヴァージニアで、イギリス人ジョン・スミスがアメリカ先住民のポウハタン族にさらわれ、殺されそうになる。
そのとき、身を投げ出してジョン・スミスを助けたのが、ポウハタン族の娘ポカホンタスだった。
スミスの命を救うポカホンタス(ウィキペディアから)。
ポカホンタスについてアメリカの歴史教科書にはこう書いてある。
たいへんな美人で、のちにタバコの栽培に成功したジョン・ロルフと結婚したが、先住民へのキリスト教の普及、タバコ栽培などが順調であることを宣伝するために、1616年、ロンドンに送られた。ロンドンでは上流社会にデビューして歓迎を受けたが、1617年春、帰国を前に病没した。
「アメリカの小学生が学ぶ歴史教科書 (Japan Book)」
ちなみに、ポカホンタスがこの世を去った1年前(1616年)、日本では徳川家康が亡くなっている。
世界史を学んでいる人は、1616年に女真族のヌルハチが後金(清)を建国したことも覚えておこう。
ポカホンタス
今のアメリカでは、先住民を先祖にもつ人たちとヨーロッパ人を先祖にもつ人たちとの間は、必ずしもうまくいっていない。
アメリカ先住民の人たちにとって、ヨーロッパから来た人間は「侵略者」という見方が強くある。
実際、ヨーロッパ人はアメリカ先住民を殺したり、彼らの土地を奪ったりしていた。
ヨーロッパ人を先祖にもつ人たちは、そのことにたいする罪の意識がある。
最近も、アメリカで「コロンブス・デーという呼び方はやめるべきではないか?」という議論もあった。
それで、アメリカ先住民をルーツとする人たちが反発することがある。
そもそも先住民の中には、「ネイティブ・アメリカン」という呼び方を嫌う人もいる。
「ネイティブ・アメリカン」という用語を「合衆国がでっち上げた政治用語」であり、「アメリカインディアンという民族名を歴史から消し去ろうとするものだ」として、現在も激しく批判している。
「ウィキペディア」
日本では「アメリカ先住民をインディアンと呼んではいけません。ネイティブ・アメリカンと呼ぶことが適切です」と学校で習った人がいると思うけど、現実には、必ずしもそうでもない。
「インディアン」という呼び方のほうが正しい、という見方もある。
アメリカには、インディアン(先住民)の権利回復を目的とする「レッド・パワー(Red Power)」という運動がある。
レッド・パワーは、インディアンが自らの固有の文化、価値観、生活様式を自らの手で復活し再生することを目ざし、アメリカ合衆国と結んだ条約上や協定上の諸権利――領土権、漁業権、水利権、地下資源権など――の回復と擁護を具体的な内容とする
「日本大百科全書(ニッポニカ)の解説」
「レッド」というのは、インディアンがかつて「レッドマン(赤い人)」と呼ばれていたことに由来する。
レッド・パワーの「パワー」は、1960年代にあった「ブラック・パワー」にちなんでいる。
ブラック・パワーとは、黒人差別に反対し、黒人の地位を向上させるための運動や考え方のこと。
1965年のロサンジェルス、67年のデトロイトなど、北部の大都市で次々と黒人暴動が起こった。彼ら黒人は公民権の保障だけでは平等は達成できないと考え、白人の理解によってではなく、黒人自身の力で平等を勝ち取ろうと考え、「ブラックパワー」を唱えるようになった。
「世界史の窓」
アメリカには「先住民 vs ヨーロッパ人」、「黒人 vs 白人」といった対立がある。
そんなアメリカで、イギリス人ジョンスミスを助けてヨーロッパ人と結婚したポカホンタスは、対立ではなく友好や協調のシンボルになる。
アメリカ社会にとって、とても重要な意味をもつ。
トランプ大統領は不用意にそのポカホンタスをもちだして、いらない問題をうんでしまった。
ところで、「バッファロー吾郎かよ」というコメントの意味が分かるだろうか?
これはバッファロー吾郎(木村 明浩さん)のギャグ、「Oh! ポカホンタス!」のこと。
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