「楽しくなければテレビじゃない」というのは、1980年代のフジテレビが使っていた有名なスローガンだ。この言葉を借りるなら、「公平でなければスポーツじゃない」と言える。
スポーツでは公平性がとても重視されるから、ドーピングは厳しく禁止されていて、見つかったらメダルは剥奪される。
最近、平等の観点から世界的に男女の性差を無くす動きが進んでいるが、オリンピックやワールドカップなどの国際大会では男女を別枠にしている。そうすることで、スポーツの公平性を保つことができる。
しかし、「ビミョウ」な問題もおこる。
以前、イランの女子サッカーチームで「8人が”男だった”」ことが分かり、イギリスメディアの「テレグラフ」が問題視した(2015/12/30)。
Eight of Iran’s women’s football team are actually men awaiting sex change operations, it has been claimed.
性転換手術を受けて女性になった「元男性」が8人もいたらしい。これでは、「公平でなければスポーツじゃない」の原則に反する。

さて、韓国の平昌でオリンピックが開催されるまで、あと1か月もない。
直前になって、「北朝鮮、参加するってよ」という知らせがあって、いま韓国は狂喜乱舞しているが、スイスのアイスホッケー協会が怒っている。協会の広報チーム長が、韓国のやり方は「公正な競争というスポーツ精神に反する」と批判したのだ。
北朝鮮が平昌五輪に参加することになり、韓国側にこんな提案をした。
「アイスホッケー女子で南北の合同チームをつくりませんか?」
これに韓国が「いいね!」と応じたことで、韓国と北朝鮮の合同チームが誕生することになった。
しかし、初戦の相手であるスイスは「いいね!」とは言わなかった。「スポーツ精神に反する」と韓国に抗議した。
朝鮮日報の記事(2018/01/18)
南北合同チームを通じて南北が互いに接近するのには肯定的だが、23人と決まっているエントリーを例外的に増やすのは、公正な競争というスポーツ精神に反する」と指摘した。
平昌五輪:初戦の相手スイス「南北合同チームエントリー増員に反対」
「韓国と北朝鮮の融和や友好を世界にアピールしたい」という思いから、敵対している2つの国が1つのチームになったーー。
それは美談だが、対戦する国にしてみたら、だからといってエントリー人数の増員は認められない。それでは不公平だ。
韓国・北朝鮮の合同チームの登録選手は35人で、これは他の国の上限を超えている。
これではスイスが「スポーツ精神に反する」と怒るのもあたり前。
日本の鈴木大地スポーツ庁長官も韓国の対応を批判した。
朝鮮日報の記事(2018/01/20)
基本的にスポーツと政治は切り離して考えるべきだ。選手登録など決まっていたことが覆されるのは、現場に混乱を来す恐れがある
平昌五輪:アイスホッケー女子南北合同チーム、スイス・日本は反対
韓国政府が「南北の融和」を全世界にアピールして、平昌オリンピックを成功させたいという気持ちは分かる。でも、スイスや日本からしたら、こんなやり方は不公平。

しかし、この合同チームの最大の「犠牲者」は実は韓国の選手だった。
北朝鮮の選手が試合に出る分だけ、韓国の選手は出場機会が減ってしまうのだから。
政府がつくった合同チームで、北朝鮮の選手を試合に出さないわけにはいかない。試合の勝ち負けを超えて、「南北の平和・友好」の政治スローガンのために、韓国選手は涙をのまなければいけなくなる。
「南北合同チームの結成」という政治判断に、韓国のチーム内では当惑や失望が広がり、選手たちは傷つき、やる気を失っているという。
朝鮮日報の記事にそんなことが書いてある(2018/01/19)。
「女子アイスホッケー韓国代表GK『選手たちは傷付き、士気低下』」から。
韓国政府の政治アピールのために、選手が犠牲になっていることには、韓国の若い人たちも怒っている。
やっぱり、「公平でなければスポーツじゃない」のだ。

コメント
コメント一覧 (2件)
これはあまりにもアスリート、監督等チームを蔑ろにした決断。
怒りを覚えます。
全くその通りです。
これには韓国の若者も怒っています。
文政権はやり過ぎですね。