はじめの一言
「丈の高い杉が暗く生い茂った参道が、墓所の中でも最も慎ましく簡素なこの墓に通じている。このような参道を作ったのは、何と詩的な着想だろうと私は心を打たれた (メアリー・ダムヌン 明治時代」
「日本絶賛語録 小学館」
今回の内容
・イギリスとフランスは、一緒に戦ったから
・日本と韓国は、一緒に戦ってしまったから
・日韓と英仏の関係、その決定的なちがい
・イギリスとフランスは、一緒に戦ったから
「イギリスとフランスは、仲が悪い」
イギリス人の友人はそう言ったけど、日本と韓国の関係にくらべたらずっと良い。
同じ「仲が悪い」でも、その悪さが英仏と日韓とではちがう。
その違いは何から生まれたか?
このイギリス人が言っていたことに、そのヒントがあると思う。
「おたがいを悪く言うけど、何だかいってイギリスとフランスは一緒にナチスドイツと戦ったからね。そのことはとても大きいと思う」
そのとおり。
第二次世界大戦のとき、英仏は共にドイツと戦っている。
このことが両国の関係に与えた影響は、たしかに大きいはず。
決定的といってもいいだろう。
「一緒に戦った仲」なのだから、まさに戦友という間がらになる。
この結びつきはたしかに強いんだろう。
・フランスの英雄「ド・ゴール」
フランス人に「あなたがもっとも尊敬するフランス人はだれですか?」と聞いたら、「ド・ゴール」の名前はベスト3には入るはず。
シャルル・アンドレ・ジョゼフ・ピエール=マリ・ド・ゴール
フランスの陸軍軍人、政治家。フランス第18代大統領。第二次世界大戦においては本国失陥後ロンドンに亡命政府・自由フランスを樹立し、レジスタンスとともに大戦を戦い抜いた。
(ウィキペディア)
ドイツと徹底的に戦ったド・ゴールは、文字どおりフランスの英雄となっている。フランスのいろいろな場所でその名を目にすることができる。
フランス国民は彼の栄誉を讃え、ド・ゴールの名前を施設などに命名している。その主な例は以下の通り。
シャルル・ド・ゴール国際空港 – パリ郊外にある国際空港。
シャルル・ド・ゴール – フランス海軍の原子力空母。
シャルル・ド・ゴール – 薔薇の品種。
シャルル・ド・ゴール広場 – パリの名所エトワール凱旋門のある広場。シャンゼリゼ通りの入口で、かつてはエトワール広場と呼ばれていた。
(ウィキペディア)
このド・ゴールが、「ロンドンに亡命政府・自由フランスを樹立し」たというところにも、イギリスとフランスの強いきずなが見える。
・イギリスの英雄「チャーチル」
一方、イギリスでもナチスドイツと戦ったチャールは国民的英雄になっている。
イギリス人の友人に、「イギリスでもっとも尊敬されている人物はだれだと思う?」と聞いたところ、真っ先にこのチャーチルの名をあげていた。
チャーチルとはこんな人物。
イギリス保守党の首相(在位1940~45、51~55)
早くからナチスの強大化を警戒し、宥和政策を批判していた。1940年5月、チェンバレンにかわって首相に就任、ローズヴェルト・スターリンとともに連合国の指導者として活躍した。
(世界史用語集 山川出版)
チャーチルが尊敬されている理由はド・ゴールと同じ。
「ドイツと戦って、国を守ったから」
チャーチルはイギリスだけではなくて、世界中から深い尊敬を集めている。
「ニューズウィーク(2016.2.2号)」に、「独裁者から世界を救った名宰相チャーチルの死」というタイトルのコラムがあった。
ここからもチャーチルに対する世界の評価がわかる。
・人が死ぬのは人々の記憶から忘れられたとき、という言葉がある。チャーチルは死半世紀がたつ今も、イギリスだけではなく世界中から愛され尊敬されている。
・これほど、国や時代をこえて敬意をしめされる人間というのは、そうはいない。
「国のために戦う」ということは、イギリスやフランスでとても高い価値をもっている。
そしてその象徴であるド・ゴールやチャーチルが、英仏で英雄になっていることは当たり前。
「イギリスとフランスは、仲が悪い」といっても、同じ価値観を持っていて共にドイツと戦った仲間だったことは間違いない。
イギリス人とフランス人がたがいに悪口を言い合っていても、深いところではつながっている気がする。
その点が日本と韓国の関係とは違う。
日韓も第二次世界大戦では「共に戦っている」。
でもそれは、韓国(朝鮮)という国が消滅してしまったからであって、「同じ日本人として戦う状況になった」ということ。
これが現在に続く韓国人の反日感情に結びついている。
日韓関係は本当にむずかしい。
おまけ
「戦争に良い戦争も悪い戦争もない。どんな戦争もいけないことだ」
という言葉を日本で聞くことがある。
この考え方にはボクも賛成なんだけど、それでは困ることもある。
ドイツとの戦争については、イギリスやフランスは「正しい戦争だった」と考えている。
先ほどのコラム「独裁者から世界を救った名宰相チャーチルの死」には、こんな文がある。
イギリスは英本土上空の戦い「バトル・オブ・ブリテン」でドイツ空軍を撃退。連合軍は44年フランスに上陸し、45年5月にドイツを降伏させた。
戦後の世界にとって、ファシズムと真正面から戦い続けたチャーチルはあの戦争を終わらせてくれた恩人でもあった。
ドイツと戦争をしたチャーチルは、「世界の恩人」になっている。
実際、世界中のほとんどの人はそう考えているだろう。
あの戦争は「戦争を終わらせるための戦争だった」と考えていると思う。
「どんな戦争も絶対にいけない」となると、このドイツとの戦争もいけないことになってしまう。
でも世界のほとんどの人は、この考えには賛成しないだろう。
「ドイツとの戦争は必要だった。戦争を決意したチャーチルやド・ゴールは正しかった」と考えているから、この2人は英仏で英雄になっている。
それは世界の常識でもある。
こういったことを考えると、「どんな戦争もいけない」というのは基本的には正しいけど、現実には例外もあるんだなと思う。
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