パキスタンで、「え?」と思うようなニュースがあった。
ヒンドゥー教には、「ダリット」と呼ばれる最下層カーストがある。
最近パキスタンで、そのダリット出身の女性が選挙に当選して議員になった。
AFPの記事(2018年3月5日)にそのことが書いてある。
ダリットの女性が異例の快挙を成し遂げたことで国内には歓迎ムードが広がり、ソーシャルメディア上でも好意的な反応が目立った。
「祝・ダリット出身の女性議員」ということで、今回はパキスタンでの女性の地位や最下層カーストの「ダリット」について知りましょう。
パキスタンのホテル
まずはパキスタンの基本データから。
・面積:79.6万平方キロメートル(日本の約2倍)
・人口:1億9,540万人
・首都:イスラマバード
・民族:パンジャブ人,シンド人,パシュトゥーン人,バローチ人
・言語:ウルドゥー語(国語),英語(公用語)
・識字率:60%(10歳以上を対象)
・宗教:イスラム教(国教)
この数字は外務省ホームページのパキスタン・イスラム共和国(Islamic Republic of Pakistan)基礎データから。
首都イスラマバードは「イスラームの都市」という意味で、国教(国の宗教)はイスラーム教。
パキスタンはイスラーム教の影響がとても強い。
これがパキスタンという国の大きな特徴になっているのだ。
「イスラーム教が国教になっている」ということは、日本でいえば、憲法がイスラーム法(シャリーア)になっているような状態。
パキスタンでは、イスラーム教の教えがとても厳しく守られている。
英語が公用語になっているのは、昔ここがイギリスの植民地だったから。
1947年に独立した。
パキスタン共和国独立
イスラーム教徒を中心に、イギリス連邦内の自治領としてインドと分離・独立した。首都はイスラマバード。独立時は、東部(1971年に分離・独立した現バングラデシュ)と西部の2地域にわかれていた。
「世界史用語集 (山川出版)」
ここに書いてあるように、バングラデシュは以前、パキスタンの一部だった。
分離・独立するまではインドの一部だったから、パキスタンにもヒンドゥー教徒はいる。
2億人の人口で約2%ということだから、パキスタンには約4百万人のヒンドゥー教徒がいることになる。
ヒンドゥー教の4つの身分については、学校で習ったはず。
バラモン(僧)
クシャトリア(王、戦士)
ヴァイシャ(商人)
シュードラ(奴隷)
この4つを「カースト(ヴァイシャ)」という。
でも、この4つのカーストに入ることができない「アウト・カースト(カーストから外れた人たち)」と呼ばれる人たちもいる。
それがダリット。
AFPの記事は、ダリットたちは「昔から、経済・社会面で差別の対象となってきている」と書いている。
彼らの生活は次のようなものだったという。
住居も、町や村外れの、不潔な、生活用水もない場所に定められ、木の葉や泥以外の家に住むことができず、その暮らしは家畜以下であった
「アンベードカルの生涯 (光文社新書)」
でもこれは、一昔前のインドでのダリットの生活。
今でもこんな生活をしている人がいるかもしれないけれど、全体的には、ダリットの社会的地位は向上している。
パキスタンのダリットも似たようなものだろう。
パキスタンはイスラーム教の影響がとても強くて、女性の社会的地位は一般的に低い。
というか、ぶっちゃけかなり低い。
なんせパキスタンでは、「女性が性行為を断ったとき、男性はその女性を殴っていい」という、わけのわからない事案が政府に提案されたこともあるぐらいだから。
「spotlight」の記事(2016.06.01)から。
「男性は、女性がセックスを宗教的理由無しに拒否した時、男性の支持に従わない服装をした時、公共の場で他の男性と話をした時、他人に聞こえるような大きな声で話した時、妻が夫の命令を聞かなかった時に『軽く』殴っても良しとすること」を許可する提案を出したのです。
パキスタンの社会はイスラーム教の影響が強くて、根強い女性蔑視がある。
そんな国でダリット出身の女性が議員に選ばれたというのは驚いた。
パキスタンの見方を変えねば。
パキスタン出身の人権活動家、マララ・ユスフザイさん。
2014年にノーベル平和賞を受賞した。
かなりアクティブな女の子らしい。
2013年10月にアメリカのオバマ大統領と面会した際は、無人機を使ったアメリカのテロ掃討作戦をやめるよう求めた。
「ウィキペディア」
ダリットの女の子
「ダリット出身の政治家」といえば、インドでも去年、ダリット出身の人が大統領になっている。
これも世界的な話題になった。
ちなみにインドでは、ダリットが約2億人以上いるといわれている。
アメリカCNNのニュース(2017.07.21)から。
ダリットは「不可触民」とも呼ばれ、インドのカースト制の最底辺層を構成する。伝統的に他のカーストから「不浄」と見られ、迫害や排斥の対象となってきた。
このときもインドの見方が変わった。
ただし、少しだけ。
おまけ
インドのダリットの村
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