韓国の人たちがネットで、「ハングル文字」に感激している。
「世宗大王ありがとう」
「ハングルは本当に美しい」
「世界で最も科学的な文字、ハングル」
「誇らしい」
「(これからは)英語じゃなくて韓国語をもっと一生懸命勉強しなきゃ」
「ハングルは易しいといううわさが流れて、ハングルを学ぶ外国人も増えたらしい。動画投稿サイトのハングル関連の動画も人気」
韓国(朝鮮)の文字「ハングル」がいま、世界で注目を浴びているらしい。
「欧米で開かれたファッションショーで、ハングルがデザインとして取り入れられている!」ということを朝鮮日報が記事で伝えている。
レコードチャイナの記事(2018年3月13日)から、その様子を抜き出してみよう。
英国ロンドンファッションウィークの舞台にハングルで「緊張せよ」とプリントされたバッグが登場した。
シモンズさんが最近、バックパックブランド「イーストパック(EASTPAK)」とコラボした30〜40万ウォン(約3〜4万円)台のバックにも、裏地にはハングルで「尚州干し柿」「スーザン飲料営農組合」とあるそうだ。
こんな感じで、「世界のファッション界がハングルに注目している」と知った韓国人が「ハングルは本当に美しい」といったコメントを書きこんでいる。
こういう誇らしい様子を「ホルホルする」という。
ホルホルは韓国語だけど、いまでは日本語になっている。
「中二病」や「アウトオブ眼中」など日本語が韓国語になることはよくあるけど、逆のパターンは少ない。
そんな韓国の人たちに対して、ネットではこんな反応があった。
・という夢を見た
・ま、韓国側が売り込んだのだろうと
・2018年はまちがいなく韓国の年だな
・自画自賛
・これが正しいホルホルです
・やっと世界が韓国に追いついてきたというわけです
・半島とはいえ中国大陸と陸続きでつながってるのになんでハングルみたいなガラパゴス仕様の文字が発達したんだろうな
「世界のファッション界がひらがなに注目している!」という話を聞いたことがないから、韓国人の「誇らしい」いう気持ちがよく分からないのだけど、「ルイ・ヴィトンのモノグラムは日本の家紋からつくられた」という話を聞いたときは少し誇らしさを感じた。
「雑学マニアックス 」にこう書いてある。
このモノグラムの柄で、丸の中に星がデザインされたマークは、薩摩藩、島津家の家紋からとったものだそうです。
ヴィトンのモノグラム(ウィキペディアから)
「世界で最も科学的な文字」と韓国でいわれるハングル
「世宗大王ありがとう」というのは、「ハングル(偉大な文字)」は世宗(セジョン)という王様の時代につくられたから。
日本も韓国もむかしは文字として漢字を使っていた
日本のひらがなに当たる固有文字がハングルになる。
ハングルはもともとは「訓民正音(民を訓(みちび)く正しい音)」と呼ばれていた。
訓民正音(ハングル)
世宗が制定した朝鮮の国字。
漢字による朝鮮語表現の不十分な点を補うために創設され、1446年に同名の条例で公布された。
「民を訓く正しい音」の意で、主に民衆のあいだで使用された。1894年に公文書に採用され、20世紀初頭になって「ハングル」(偉大な文字)」と呼ばれるようになった。「日本史用語集 (山川出版)」
1467年の応仁の乱とだいたい同じころに、ハングルは誕生した。
ところで、ハングルを「ハングル語」と思っている人はいないだろうか。
ハングルは文字であって言葉ではない。
これについては、以前こんな話を聞いたことがある。
テレビで「韓国語講座」を放送しようとしたところ、北朝鮮の人たちから「それは朝鮮語だ」と文句を言われた。
もともと北朝鮮と韓国は1つの国だったから、北朝鮮でも同じ言葉が使われている。
でも講座名を「朝鮮語」とすると、今度は韓国の人たちから文句がくる。
それで韓国と北朝鮮で使われているハングル文字を取り上げて、「ハングル講座」にした。
ふつうは「フランス語講座」「タイ語講座」「アラビア語講座」と「~語講座」になっているのだけど、韓国語のばあいはこんな複雑な事情があるから、「ハングル講座」という変わった名前になったという。
「日本語講座」と「ひらがな講座」がちがうように、「韓国語講座」と「ハングル講座」もちがう。
これは何かの本で読んだ話。
いまネットを見てみたけど、「ハングル講座」になった背景は分からなかった。
韓国人はハングルが大好き。
彼らのハングル愛はハンパなし。
10月9日は「ハングルの日」になっていて、韓国各地でいろいろイベントが開かれている。
韓国の情報サイト「konest」から。
ソウル市内はもちろん、韓国各地で作文大会や記念式などハングルをテーマにした様々なイベントが開催されます。
また、テレビや新聞では韓国語に関する特集番組や記事が組まれたりします。
世宗(セジョン)王
先ほどこんな日本人のコメントがあった。
「半島とはいえ中国大陸と陸続きでつながってるのになんでハングルみたいなガラパゴス仕様の文字が発達したんだろうな」
「ガラパゴス仕様の文字」というのは「独時の文字」という意味だろう。
じつはハングル文字には、「パスパ文字からつくられた」という説がある。
モンゴル帝国の時代に、パスパ(1235年 – 1280年)というチベット仏教僧がモンゴル語をあらわすためにつくり出したのがパスパ文字だ。
ハングルはこの文字を参考してできた、と主張する学者もいる。
朝鮮の歴史やハングルの研究で知られ、コロンビア大学名誉教授であるガリ・レッドヤードは論文で、ハングルは元朝のパスパ文字を参考にして考案されたという説を唱えている。
これがパスパ文字
パスパ文字とハングルの比較
韓国では、学校教育や「ハングルの日」での全国的なイベントによって、ハングルを愛し誇りに思う心が育てられている。
こんな韓国人のハングル愛を知ると、日本のひらがながかわいそうになる。
日本人にとってひらがなの誕生は、本当に画期的なことだった。
評論家の山本七平氏はその意義をこう書いている。
自分の考えを自分の言葉と自分の文字で、何の束縛もなく自由自在に記しうること、それが広く庶民にまで普及して識字率を高めたこと、また和歌・俳句を生み出して日本的な感性を育んだ
「日本人とは何か (山本 七平)」
中国生まれの漢字では、日本人の感性を表現することができない。
ひらがながなかったら、日本人は和歌を詠むこともできなかった。
「いまの日本の文化はひらがなによってつくられた」と言ってもいいだろう。
日本人は記念日が大好きなのに、「ひらがなの日」はない。
韓国に習ってそんな記念日をつくって、日本固有の文字に感謝したり誇りをもつようにしたりしてもいい。
こちらもどうぞ。
コメントを残す