いつ、どうやって?平仮名と漢字の歴史を簡単に説明しまっせ。

 

次の4つのなかで、一番読みやすい文はどれか?

「私はいま、ブログを書いています」
「わたしはいま、ぶろぐをかいています」
「ワタシハイマ、ブログヲカイテイマース」
「私派今、武露具尾書意手胃魔素」

 

日本語を学んでいるアメリカ人やタイ人などの外国人だったら、2番目の「オール平仮名」だろう。
中国人・台湾人・香港人などの「漢字文化圏」にいる人たちだったら、1番目だと思う。
4番目は、だれが見てもイラッとする。

漢字文化圏の人たちに話を聞くと、「オール平仮名」の絵本よりも、漢字の多い新聞記事のほうが楽で早く読むことができる場合もあるという。
平仮名だと意味を想像しないといけないけど、漢字なら見ればすぐに意味がわかるから。

だから「非漢字文化圏」のアメリカ人やタイ人で、「中国人や台湾人と同じように、JLPT(日本語能力試験)を受けるのは不公平だ」と文句を言う外国人もいた。

でも日本には、そうなった過去(歴史)があるのだから仕方ない。

 

日本人も1番目の文が一番いいはず。
日本人にとっては、「ひらがな・カタカナ・漢字」の3つの文字を使って書いてあるものが読みやすい。

でも、「3種類の文字を同時に使い分けて1つの文を書くなんて、日本人スゲー」と感心する外国人もいる。
前に、そんなサウジアラビア人とイタリア人のことを書いた。

そのことはこの記事をどうぞ。

外国人が感じた日本語の不思議。「日本人スゲー」のワケとは。

 

今回はこのおまけのようなもの。
「いつ、どうやって?」という漢字と平仮名の歴史について、簡単に説明しまっせ。

 

 

まず、漢字はいつ日本にやってきたのか?

日本に漢字が伝わったのは5世紀ごろとされている。
高校の日本史ではこう習う。

漢字の伝来

応神朝に渡来したとされる王仁が儒教の経典を伝来したという。

「日本史用語集 (山川出版)」

 

王仁(わに)は朝鮮半島の百済からきた渡来人で、彼が日本に漢字や論語を伝えたという。
「という」の表現があるように、王仁が本当にいたのかはわかっていない。

それまでの日本にも言葉はあったから、人びとが話をすることはできていた。
でも、漢字という便利な道具が伝わったことで、”記録”することができるようになる。
それによって、より広い時代や範囲の人たちに、いろいろなことを伝えることができるようになった。

これって本当に画期的ですね。

 

 

でもこのとき、日本人がもっていた文字はまだ漢字だけ。

だから、 「私派今、武露具尾書意手胃魔素」のような読みづらい文しか書くことができなかった。

「は(派)」や「を(尾)」などは漢字の意味を無視して、漢字の「音」だけを無理やり当てはめるしかない。
こうした仮名を「万葉仮名」という。
文字が漢字しかなかった時代、日本人はこんな面倒な文を書いていた。

 

「こんな文は書きづらいし読みづらい。何かいい方法はないのかなあ」

そんなとき、出会ったのが平仮名です。

出会ったというより、日本人が平仮名をつくり出した。
先ほどの万葉仮名の草書体(草仮名:そうがな)から、平仮名が生まれたのだった。
平仮名があらわれたのは平安時代の初期、10世紀ごろとされている。

 

・・・と前まで思っていたのだけど、ちがった。

朝日新聞の記事(2013年1月12日)によると、それより前、9世紀にひらがなで書かれた土器が見つかっている。

家の主人が亡(な)くなった867年前後のものとみられ、これまでに見つかったひらがなでは最も古い時期だと分かった。

ひらがなは10世紀前半に完成したと考えられてきたが、その半世紀ほど前に、すでにできあがっていた可能性が出てきた。

ひらがな、いつごろできたの?

 

平仮名も漢字も、いまの日本語には欠かせない。

「わたしはいま、ぶろぐをかいています」も「私派今、武露具尾~」も困る。

平仮名と漢字には、どんな違いがあるのか?
日本人にとって平仮名にはどんな意義があるのか?

そのことについて評論家の山本七平氏はこう説明する。

自分の考えを自分の言葉と自分の文字で、何の束縛もなく自由自在に記しうること、それが広く庶民にまで普及して識字率を高めたこと、また和歌・俳句を生み出して日本的な感性を育んだ

「日本人とは何か (山本 七平)」

 

平仮名によって日本人の識字率は高まった。
さらに日本人が自由に表現できるようになって、日本的な感性をはぐくむことができた。

その具体的なあらわれが、万葉集・源氏物語・古今和歌集などの古典文学だ。
漢字だけだと、漢詩をつくることはできるけど、和歌を詠むことができない。

平仮名なくして日本文化なし。

 

 

こちらもどうぞ。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。