10年ぐらい前にスリランカを旅行した。
そのときに現地の日本語ガイドが、「最近スリランカで、日本から伝わった考え方がとても人気があります」と話していた。
それがドS。
じゃなかった、「5S」。
5Sとは、「整理、整頓、清掃、清潔、しつけ」のこと。
日本では職場環境を改善するためのスローガンとして、この5Sが使われていた。
はじめは「整理」「整頓」「清掃」の3つを中心とした「3S」だったけど、その後に「清潔」と「しつけ」の2Sが加わって、「5S(活動)」になった。
ガイドの話では、そのころのスリランカには「5S」のような考え方はなく、これは画期的な考え方だったという。
職場をはじめいろいろなところで5Sが使われていて、そのころのスリランカではちょっとしたブームになっていた。
ガイドは日本に住んでいたことがある。
だから、日本人の良さはよく知っていた。
日本人がつくる物は質が高いし、街はとてもきれい。
でも、その理由がよく分からなかった。
だからこの5Sという言葉を知ったときは、「こういう態度が日本のすばらしさの理由だ!」と思ったらしい。
彼は、スリランカに必要なものは日本のモノではなくて、それをつくり出す精神だと考えていたから、5Sの流行をよろこんでいた。
スリランカで5Sが流行った背景には、JICA(国際協力機構)の活動があるかもしれない。
JICAは、開発途上国の医療サービスと安全性の質を高める手段として各国のプロジェクトで活用している。
アニメや食べ物といった日本のモノではなくて、外国人が日本人の態度や精神を取り入れる動きはほかにもある。
2016年には、シンガポールの教育省が日本の「掃除」を学校に導入したことが大きな話題になった。
教育省は公立の小・中・高校の生徒に、学校での清掃を義務にした。
学校に毎日掃除の時間があって、生徒が教室・廊下・トイレを掃除している国は本当に少ない。
海外の多くの国では、業者の清掃員が学校の掃除をしている。
シンガポールが日本式教育の「掃除」を取り入れた背景には、こんな現代的な問題がある。
「huffington post」の記事(
現在のシンガポール人の子どもたちが、親・祖父母・メイドの世話になりっきりで、家事が苦手なのは親も認めるところです。自宅でも清掃できる子どもが少なく、自分で清掃できない人は周囲を汚す
シンガポールの街にはゴミが落ちていない。
とてもきれいな国だけど、それは人々の道徳によるところではなくて、厳しい罰金によってその清潔さが保たれている。
実際シンガポールでも、監視の目が届かない住宅街にはけっこうゴミが落ちている。
シンガポールは「fine city(すばらしい街)」と言われるけれど、それは「fine(罰金)」によって成り立っている。
最近、産経新聞にこんな記事(2018.3.16)があった。
エジプトの学校でもいま、「日本式教育」を取り入れる動きが進んでいるという。
エジプトでも5Sの「清掃」が注目されていて、子どもたちが教室を掃除する学校が増えている。
なかには、「トッカツ」(特活)という科目があるエジプトの学校もあるらしい。
一瞬、「トンカツ」と読んでしまったけれど、国民のほとんどがイスラーム教徒のエジプトでトンカツが流行るわけないか。
教室掃除のほかにも、子どもたちが当番(日直)をする学校もあるとか。
エジプトが「日本式教育」をおこなう目的には、子どもたちに責任感や「公共」に対する意識を身につけさせることがある。
また、仲間と協力することの大切さを知ってもらう、というねらいもある。
記事では、小学5年生の子がこう話している。
「トッカツの授業は週1回。(教室などの環境が)清潔であることが重要だと分かったし、自分のことだけでなく、みんなのことを考えるようになった」
また、6年生の子はこう言う。
「以前は自分の部屋はお母さんに言われたときだけ掃除していたけど、今は違う。病気を防ぐためにも道路を掃除したい。まずは道路にごみ箱を置かないと」
日本の教育を取り入れる動きは世界に広がっていて、ベトナムやフィリピンなどでもすでにおこなわれているという。
エジプトの首都カイロ
発展途上国を旅行した日本人のブログには、よくこんな感想が書いてある。
「日本人は経済的には豊かだけど、心は貧しい。でもここの人たちは、モノはないけれど心は豊かだ」
でも発展途上国の人たちに話を聞くと、これと逆のことを言う人が多い。
「日本人には、思いやりや譲り合いの気持ちがある。そういうところは、私たちも見習わないといけないと思う」という感じに、日本人の心をほめる外国人が何人もいた。
日本のアニメや料理もいいけれど、外国人から見て「これはすばらしい」と思う日本人の精神文化も広がってほしいと思う。
おまけ
スリランカの民家
子供はミッションが大好き、強制は嫌いだけど「できるかな?」と試されることが大好き
決められた時間内での掃除完了は、合理的に計画し分担し、かつ公平にしなくては不満が出ることも学ぶ
そのとおりですね。
子供はチャレンジが好きです。
海外では「掃除をするのは清掃業者の仕事」という意識の国も多いです。
平等や公平を学ぶいい機会になると思います。