今回はクイズから始めます。
第二次世界大戦は、いつどうやって始まったでしょう?
答えは、1939年にナチス=ドイツがポーランドに侵攻したことから。
高校世界史ではこう習う。
第二次世界大戦の開始
1939年9月1日のドイツのポーランド侵攻に対し、ポーランドの同盟国イギリス・フランスが9月3日、ドイツに宣戦布告したことから始まった。
「世界史用語集 (山川出版)」
「イギリス・フランスがドイツに宣戦布告したことから始まった」と書いてあるけど、ナチス=ドイツによるポーランド侵攻が第二次世界大戦の始まりと考えていい。
あの戦争の原因はナチス=ドイツにあるのだから。
1931年9月1日、ドイツ軍がポーランドに侵攻。
ポーランドはすぐに、首都ワルシャワ以外をナチスに支配された。
そのワルシャワも、無差別爆撃でナチスの手に落ちる。
このときのワルシャワ市民の手記には、こう書いてある。
*上3点の画像と下の手記は、「NHK 映像の世紀 第5集」から。
街のいたるところ、炎上している家が煌々(こうこう)と通りを照らしていました。
目の前にはモルタル、石材、コンクリートの塊が瓦礫(がれき)の山と化し、その下から生き埋めになっている人の悲痛なあえぎ声が聞こえてきました。
何もかも燃え尽きていく。イギリス製の織物(おりもの)、高価な革製品、愛用した家具、大事な思い出の品、そして、希望も。 何もかも。
そのポーランドで最近、こんなことがあった。
ポーランド下院の調査チームが、このときの侵攻でポーランドが受けた被害を試算したところ、その額は5430億ドル(約57兆円)になることが判明。
調査チームはドイツに約57兆2千億円の賠償を請求すべきだと提言した。
でもポーランド政府はまだ、ドイツに正式な賠償請求をするかどうかを決めてはいない。
もし、本当にポーランド政府がその額を請求した場合、ドイツとの関係はきっと超絶悪化する。
なぜならドイツ側は、「ポーランドには賠償を請求する資格はない」という立場だから。
東京新聞の記事(2018年3月23日)にそのことが書いてある。
ドイツ政府はポーランドが53年に賠償請求を放棄したため請求権は消滅したとの立場。ポーランドは53年の賠償請求放棄は無効と主張している。
ドイツ侵攻で57兆円賠償請求を ポーランド議会が試算
このニュースに対してネットでは、ドイツとポーランドを日本と周辺国に重ねるようなコメントが多い。
・さんざん日本に謝罪と賠償しろと偉そうに言ったドイツさんはまさか断らないよねぇ?
・韓国が大絶賛してるドイツがどんな対応するかみてみよう!
・自分を棚に上げて日本を叩くからだよドイツw
・隣国ってどこも大変なんだな
・韓国みたい
・韓国「日本はドイツを見習え」→ドイツ賠償拒否
・いちゃもんつけてるようにしか見えないw
請求するなら終戦直後と言える時期にしろ
・ドイツは謝罪して解決済みそれに比べて日本は・・・、と聞いたが
・あれ?まだ賠償してなかったの?
よく、歴史の清算はドイツを見習えと言われてなかった?
・戦後はいつまで続くんだろうか
ポーランドはまだ正式にドイツに請求すると決めたわけではない。
それに、ポーランドと韓国は立場が違う。
だからポーランドと韓国を同一視するのは、ちょっとムリがある。
記事の前半で紹介したけど、ポーランドはナチス=ドイツと戦っている。
けれど、韓国は日本と戦ったことはない。
この違いは決定的だ。
ポーランドは戦勝国(連合国)だけど、韓国はそうではない。
臨時政府の法統を継ぐとしている大韓民国政府は連合国の一員としての扱いを要求したが、アメリカはこれを拒否し、日本国との平和条約などの対枢軸国平和条約締結には参加できなかった。
でも、韓国がドイツをよく使うことはたしか。
「ドイツは周辺国に謝罪したのに、日本は~」と、ドイツを引き合いに出して日本を「不誠実」だと責める。
たとえば去年、朝鮮日報にこんな記事(2017/01/22)があった。
謝罪に応じようとしない日本を非難するとき、われわれはドイツのことをよく引き合いに出す。「ドイツは何かあればナチスの蛮行を膝を突いて謝罪するのに、日本は謝罪しない」などとして日本を責める。
ナミビア人に笑われる「謝罪するドイツに日本は見習え」論
でもこれは違う。
日本もドイツも、「過去の問題」には誠実に対応している。
ただ、そのやり方が違うだけ。
日本の場合は、サンフランシスコ平和条約等にしたがって、国家間で賠償等の問題を処理した。
でもドイツにはそれができなかった。
第二次世界大戦後、ドイツは東西に分断されていたから。
だからドイツは日本のように”一括処理”することができず、ナチスの犯罪の犠牲者へ個人補償をおこなうことになった。
そのことについて、外務省のホームページにこう書いてある。
日本とドイツは、それぞれ異なる方式により戦後処理を行っており、両国の取組みを単純に比較して評価することは適当ではありません。
日本もドイツも、しっかり過去に向き合って対応している。
「日本はドイツとは違う」ではなくて、「日本の周辺国は、ドイツの周辺国とは違う」という方が実は正しい。
ポーランドも、ドイツに賠償請求をすることはないだろう。
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