これって印象操作?”嫌中憎韓”ブームは、実際どのぐらい?

 

食べ物や飲み物を手にしたとき、「あれ?これって、こんなに中身が少なかったか?」と思った経験は、だれでも一度や二度はあると思う。

材料や輸送のコストがかかってしまい、メーカー側が今の価格をキープできなくなることがある。
かといって、値段を上げたら消費者にきらわれてしまう。
それで、”こっそり”量を減らす。

こんなことは前からあった。

でも日本経済新聞の記事(2018/3/25)によると、最近はそんな「実質値上げ」が消費者に見破られてしまい、商品が売れなくなっているらしい。

価格に上乗せしにくい企業は、価格は据え置いて内容量を減らす苦肉の策で対応するが、消費者の間では買い控えが始まりつつある。

容量減で「こっそり値上げ」 見破る消費者

 

ネットの反応を見ると、これを実感している人はたくさんいる。

・今日1kg 入りの商品を買いに行ったら800g に変わってたな。
・本当に酷い
めっちゃ減ってるぞ10%くらい平気で減ってるからな
・容量減る → わからんでもない
1Lパックのまま中身900mLになる → イミフ
・見破るというか普通に気付くわ
・ドラックストアで特売のティッシュ。
よく見ると150組300枚。
セールしてない普通のティッシュは160組320枚か、200組400枚。
単価にすると非セールの方が特だったりする。ホント油断できんわ。
・シャンプーとかボトルの半分ぐらいしか商品はいってないよな
なんであんなに大きいボトルで売る必要があるんだよ
・切れてるチーズがベビーチーズになってしまった
・8個入りのイカフライが7個になってたときの家族4人の衝撃

これとは別で、「税抜き価格1080円」という商品もあるから本当に油断できない。

 

でも、メーカー側がこれを「値上げではありません」と言うことはできる。
「中身は減ったけれど、価格は変えてない。だから値上げではない」という理屈はまちがっていない。

でも量を減らしたら、それは実質的な値上げだ。

消費者にとって大事なことは、表現ではなくて現実。
でもそれを提供する側は、事実や現実よりも、「印象」を大事にすることもある。

 

 

2014年6月17日の朝日新聞にこんな記事があった。

「嫌中憎韓」ブーム、出版界から「これでいいの?」

 

この記事によると、そのときの日本では、中国や韓国への「憎悪をあおる」ような”嫌中憎韓本”がとても売れていたらしい。
それで出版社の中には、このブームに歯止めをかけようとする動きがあった。

記事にはこんな文がある。

憎悪をあおるような言説を疑問視しブームに対抗しようという動きが内部から出始めた。

今の状況をおかしいと思っている人が多いことを示したかった。のろしをあげることに意味がある。

 

で実際のところ、日本にある「嫌中憎韓」のブームはどれほどなのか?

記事では、中国や韓国を批判する本がとても売れていることに触れている。

今年上半期、新書・ノンフィクション部門の週刊ベストセラーリスト(トーハン)には「韓国人による恥韓論」「犯韓論」など両国をテーマにした本が7冊、トップ10入りした。

あなたは、この文を読んでどう思いましたか?

 

 

今年上半期、新書・ノンフィクション部門の週刊ベストセラーリスト(トーハン)には「韓国人による恥韓論」「犯韓論」など両国をテーマにした本が7冊、トップ10入りした

 

この文を読んでボクはこう思った。

「上半期の売り上げトップ10のうち、”嫌中憎韓”本が7冊も入っているのか!」

そうした本がまさかそんなに売れているとは知らなかった。
たしかに、”嫌中憎韓”ブームは深刻だ。

これは2014年の記事だけど、「中国や韓国のヘイト本がどれだけ売れているか」をしめすデータとして、今までにこの数字を何回か見たことがある。

 

でも最近になって、ボクの印象は現実とかけ離れていたことを知った。
「zakzak」の記事(2018.3.24 )で、朝日新聞OBの前川惠司氏がこう書いている。

事実は上半期(全24週)の各週で「ベストテン」入りした累計240冊の中に、嫌中憎韓本が7タイトルあったということなのだ。

朝日新聞「何でも嫌韓こじつけ」ストーリーを2例紹介

 

「トップ10のうち、”嫌中憎韓”本が7つあった」と思ったのだけど、実際は「240冊のうち、7冊あった」ということだった。

 

 

くり返しになってしまうのだけど、もう一度、朝日新聞の記事を読んでほしい。

今年上半期、新書・ノンフィクション部門の週刊ベストセラーリスト(トーハン)には「韓国人による恥韓論」「犯韓論」など両国をテーマにした本が7冊、トップ10入りした

 

この文を読んだら、「両国をテーマにした本は、トップ10のうち7冊あった」と思ってしまわないだろうか?
ボクはそんな印象をもってしまった。

でも事実は、「240冊のうち、7冊あった」ということ。
しかも、上半期トータルでトップ10に入ったのは1冊だけ。

「240冊」という分母は重要なはずだけど、記事はその数字をまったく出さない。
これでどうやって、「7/240」という正しい情報を知ることができるのか?

先ほどの前川惠司氏は「典型的なひっかけ記事と言われても仕方ない」「これでは「事実報道」とは言い難い」と、朝日新聞の記事を批判している。

2014年から今までのあいだで、この記事に”だまされた”人はかなりいるはず。

 

 

「7/10」と思ったら、実際は「7/240」だった。
しかも、トータルでトップ10に入ったのは1冊だけ。

こういうことがあったから、これからは、「日本で嫌中憎韓本が売れている」「中国や韓国へのヘイトの空気が広がっている」という記事を見たら、実際は、その記事を読んで受けた印象の「24分の1」と思うことにする。

「値段はそのままで中身を減らす」というのを見破るのは、むずかしくない。
でも、情報はちがう。
正しい情報を得るためには、受け手はそれ以上の「見破り能力」を必要とする。

 

「めっちゃ減ってるぞ10%くらい平気で減ってるからな」というのは、分かりやすいからいい。

情報による印象操作の方が問題だ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。