はじめの一言
「ぼくらは日本の絵を愛し、その影響を受け、またすべての印象派の画家はともに影響を受けているが、それならどうしても日本へ、つまり日本に当る南仏へ行かないわけにはゆかぬ (江戸時代 ゴッホ)」
「日本賛辞の至言33撰 ごま書房」
今回の内容
・世の中を変える方法「選挙と革命」
・日本史の特徴「君側の奸を討つ」
今回は、日本の歴史の特徴について書いていきたい。
ヨーロッパや中国の歴史では、王や皇帝を倒すという革命(易姓革命)が何度も起きているけど、日本の歴史ではこんな革命は一度も起きたことがない。
天皇が倒されたという歴史がない。
その代わりに「君側(くんそく)の奸(かん)を討つ」という出来事が何度か起きている。
今回から、日本史に特徴的なこの「君側の奸を討つ」ということについて書いてきます。
・世の中を変える方法「選挙と革命」
世の中おかしい。
働いても給料は上がらないけど物価は上がり続ける。
がんばって働いても良い生活ができないし、仕事がなくて困っている人もたくさんいる。
子育てにお金がかかりすぎるし、税金も高い。
そんな理由で、苦しい生活をしている人がたくさんいたとする。
そうなったら、きっと多くの人がこう思うはず。
「こんな世の中は変えないといけない!」
でも、「世の中を変える」って具体的にどうやって変えたらいいのか?
それにはやっぱり、政治を変えることでしょ。
多くの人たちの生活が苦しいとしたら、その一番の原因は政治が悪いからでしょ。
日本やアメリカなどの民主主義の国なら、そのために選挙という手段がある。
選挙によって政権を変えることで、政治を変えることができる。
でも、選挙がなかったむかしはどうやって世の中を変えていたか?
中国の場合なら、以前の記事で書いたように「易姓革命(えきせいかくめい)」をおこして変えていた。
皇帝を倒して別の人間が皇帝になる。
そして新しい王朝を開く。
そうすれば、それまでの政治のやり方をガラリと変えることができる。
これって、「民主的な選挙」か「暴力的な革命」かという方法が違うだけで、やっている目的は同じ。
「政権交代」ね。
むかしは革命やクーデタによって政権を変えていたのを、現代では選挙によって変えているだけ。
だから、選挙権っていうのは言いかえたら「革命を起こす権利」になる。
でも、中国の易姓革命の場合、「倒された皇帝」というのは悲惨。
敵の軍隊が近づいてきてもう逃げられないと分かったら、飛び降りたり首をつってたりして自殺した皇帝もいる。
「世の中を変えるためには、皇帝や王を倒す」という発想は中国の歴史だけじゃない。
フランス革命では、国王ルイ16世の首をギロチンで切断しているし、イギリスの清教徒革命では、イギリス国王の首を斧(おの)で切り落としている。
・日本史の特徴「君側の奸を討つ」
日本の歴史では、中国の易姓革命やヨーロッパのような革命はおきなかった。
つまり、「天皇を倒して別の人間が天皇になって、新しい王朝を開く」ということがなかったということ。
そもそも日本には、中国やヨーロッパのように「天皇を倒すべき敵」と考える発想がなかった。
ちなみに、逆に「天皇の敵」になると「朝敵」と呼ばれた。
徳川最後の将軍である徳川慶喜は、この朝敵にされている。
朝廷において慶喜追討令が出され、旧幕府は朝敵とされた。
(ウィキペディア)
天皇を「敵」とすることはできないけど、天皇のまわりの人間だったら「敵」とすることはできる。
すると、こんな発想がうまれる。
「今の世の中でみんなが苦しい思いをしているのは、政治がおかしいから。それは天皇ではなくて、天皇のまわりにいる人間がまちがったことをしているからだ。だから、天皇のまわりにいるその悪いヤツらを倒そう!」
この場合の「天皇のまわりにいる悪いヤツら」のことを、むずかしい言葉で「君側の奸」という。
読み方:くんそくのかん
君主の側で君主を思うままに動かして操り、悪政を行わせるような奸臣(悪い家臣・部下)、の意味の表現。「君側」は主君の側、という意味。(Weblio辞書)
日本の歴史では、天皇ではなくて「天皇のまわりの悪い人間(君側の奸)」を倒そうとする出来事がときどきおこる。
これが日本の歴史の一つの特徴ね。
ヨーロッパや中国なら、さっきも書いたけど「君側の奸(まわりにいる人間)」ではなくて、王や皇帝そのものを討っている。
ということで、「君側の奸を討つ」というのは日本の歴史を知るキーワードになるワケさ。
次回からこの「君側の奸を討つ」の具体例を3つ紹介します。
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