日本・米国・英国での「少数・弱者」への配慮。3つの具体例

 

結局世の中、自分以外は他人なのだ。
価値観・考え方・趣味・感覚が100%自分と一致する人はいない。
ということで、どんな国でも他者への配慮は欠かせない。
とくに社会の少数派、弱者と言われる人たちに対しては。

 

ここ数年、アメリカでは「メリークリスマス」というあいさつは公の場では使われなくなっている。
「メリークリスマス」はキリスト教の言葉だから、イスラーム教徒やユダヤ教徒には関係ない。
だからテレビやラジオでそれを言うのは、非キリスト教徒への配慮に欠けるという。

以前、アメリカ人にメールで聞いてみたら、こんな返事が返ってきた。

Its strict for businesses.
But it is considerate to say happy holidays if you think they might not celebrate christmas. Here we have Christmas, Hanukkah, Kwanzaa, and Ramadan.

(意訳)

仕事の場面では厳しい。
でも、クリスマスを祝わない人もいるかもしれないから、「ハッピーホリデーズ」と言った方が思いやりがある。
ここ(アメリカ?ニューヨーク?)には、クリスマス、ハヌカ、クワンザにラマダンがあるのだから。

ハヌカはユダヤ教の祭りで、ラマダンはイスラーム教の断食月のこと。
世界中の移民から成り立つアメリカでは、宗教を無視することはできない。

 

「メリークリスマスはダメ」と聞いたときは驚いたけど、それはアメリカでのこと。

それより、「公の場で「お父さん」や「お母さん」という言葉を使ってはいけない」という日本の自治体があると知ったときのほうが衝撃的だった。
性別を決めつけるような言葉は“差別”になるからという。
それで千葉市では、「ご両親」や「ご家族の方」と言うことをすすめている。
他にも、「夫」や「妻」ではなく「配偶者」や「パートナー」が適切だとか。

これは宗教ではなくて、LGBTへの配慮だ。

Lesbian(レズビアン:女性同性愛者)
Gay(ゲイ:男性同性愛者)
Bisexual(バイセクシュアル:両性愛者)
Transgender(トランスジェンダー:生物学的な性別と違う性別で生きたい人)

この頭文字をつなげると「LGBT(性的少数者の総称)」になる。

仏教(お寺)も神道(神社)も同じぐらい大事で、クリスマスもハロウィンもする日本人には宗教への配慮はアメリカほど必要ない。
日本でよく注目されるのはLGBTへの対応だろう。

 

アメリカでは宗教、日本ではLGBTときて、最近のイギリスでは「貧しい人」への配慮が話題になっている。

米CNNにこんなニュース(2018/11/17)がある。

High school bans Canada Goose and Moncler jackets to protect poorer children

貧しい家の子どもにみじめな思いをさせないように、イギリスにある高校がCanada GoosやMoncler jacketsのような高価な上着を着ることを禁止にした。

校長は理由をこう話す。

「These coats cause a lot of inequality between our pupils」
「They stigmatize students and parents who are less well off and struggle financially」

こういうコートが生徒の間で不平等をもたらすし、収入の少ない生徒や両親に辛い思いをさせている。

いまのイギリス社会は貧しいへの配慮(to protect poorer students)が求められているらしい。
子どもが高い鉛筆入れ(文房具)を持って来るのを禁止したり、小学校の先生が「週末は何をしたの?」と児童に質問しないよう求められたりしている。

Initiatives have included banning expensive pencil cases and discouraging primary school teachers from asking students what they did on the weekend, so children whose families couldn’t afford to do anything wouldn’t feel embarrassed.

 

このニュースに日本のネットの反応は?

・日本の小学校の逆行ってる。
・世見に格差があるのを放置してやっても意味ないだろw
・コートを買えない生徒に合わせて、コート禁止だな(´・ω・`)
・バーバリーだと思ったらバーバリアンでした
・ヨーロッパなんて日本よりはるかに階級社会なのにこんなことが起こるのか
・日本で同じことしたら、日本の識者はいかにも日本的だ
外国では考えられないとか言うんだろうな
・同じ理由で日本の学校もいろいろ規制してるんだけど、貧富の差って言えないんだよな
・もう裸にしようぜ

 

日本の学校が制服を導入している理由のひとつに、こんな面倒なことを起こさせないことがある。
みんな同じ服を着れば、貧富の差はなくなるから。
といっても、見えなくなるだけで、なくなることはないけど。

公立の小学校の場合、経済力から生じる児童衣服の格差から生じる差別をなくすという目的で、制服着用を求める声も多い。

日本の学校制服

 

学校に高価なものはイラナイ。
金持ち/貧乏の差がはっきり出てしまうと、みじめな思いをする子どもが出るから。
だけではない。
高い物を持って来ると、それが盗まれてトラブルになる。
そうなると担任が面倒くさいのだ。

特別な思いのこもった高価な物が傷つくと、保護者から苦情を言われる。
担任はそういう処理に時間を使いたくないのだ。

 

学校は資本主義を否定して、プチ共産主義でちょうどいい。

共産主義

財産の私有を否定し、生産手段・生産物などすべての財産を共有することによって貧富の差のない社会を実現しようとする思想・運動。

デジタル大辞泉の解説

 

文房具なら、教室の物をみんなで使うようにしたら、ツライ思いをする子どもはいなくなる。
教室の物なら、壊れてもなくなっても担任の処理は楽。
社会の少数や弱者に配慮するなら、「みんな同じ」の共産主義が便利なのだ。
ということで学校は共産主義社会で、徐々に資本主義社会の現実を知っていけばいい。

ついでに夫や妻も「配偶者」や「パートナー」ではなくて、「同志」と呼んでみてはどうか?

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。