バックパッカーの今と昔:今も残る旅言葉「沈没」とスポット

 

はじめの一言

*日本の庶民の楽しみについて
「気晴らしにしじゅう好きな植物を少し育てて、無上の楽しみにしている。
(ロバート・フォーチュン 幕末)」

「日本絶賛語録 小学館」

 

 

東京と名古屋で旅好きの人たちが集まると聞いて、ボクも行ってみた。
今回は、そのときに聞いた話や感想なんかを書いていきたい。

 

その前に、「旅」という漢字の雑学を一つ。

「旅」という漢字は、もともとは「戦いに行くこと」をあらわしていた。

戦車を連ねて軍団が進み、他の国へ遠征をする。
このことを「旅」といいました。
旅という字の古い形は(4)のように字の中に「車」が入っています。旗と人と軍がひとつになっている形です。
旗をひるがえし、物を車に積んで人々は進む、これが「旅」なのです。
「図説 漢字の成り立ち事典 教育出版」

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画像は、「図説 漢字の成り立ち事典 教育出版」から

 

今回の内容

・今のバックパッカーも使う「沈没」という言葉
・沈没スポット

 

・今のバックパッカーも使う「沈没」という言葉

旅好き集まりに参加して意外だったのが、20代の若い旅人さんたちが今でも「沈没」という言葉を使っていること。

この沈没はバックパッカー用語で、旅を中断して気に入ったところで長期間滞在すること。

まあ、沈没をするようなバックパッカーが、旅行の目的を観光とはしているかは疑問だけどね。
「旅行」と言われると、「オレがしているのは旅だ!」と不機嫌になる人もいるかもよ。

 

それはおいといて、旅用語の沈没という言葉はあいまいな意味で、はっきりした定義なんてない。
長期で旅行しているバックパッカーが、しばらくある街にとどまっていれば、もうそれが沈没になる。

だから、本人が「沈没した」といえばそれが沈没なんだろうね。
こんな、かなりざっくりした言葉。

 

この沈没には、滞在する目的が特にない。

「ビザを取るためにその街にいる」
「旅の道具をそろえるためにいる」

そういった理由がなくて、ただその街にいてしまう。
目的はないから別の街に移動してもいいんだけど、居心地が良くてズルズルと長居してしまう。

 

沈没というのは、そんな「なんとなく、そこにいてしまう」といった受け身的なものだと思う。
今までに沈没している人に何人も会ったことがあるけど、そうした人からやる気や積極性を感じたことはない。
そういうのは無縁で、のんび~り気ままに過ごしていた。

インドには沈没スポットが多数ある

 

この沈没という言葉が、バックパッカーの間でよく使われるようになったのは、1990年代からのようだ。

蔵前仁一氏に「旅ときどき沈没」という本があって、ボクも読んだことがある。
沈没という言葉はこの人がつくったのかは知らないけど、この人が流行らせたことは間違いないだろう。

 

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沈没の聖地:カオサン・ロード

 

・沈没スポット

世界には、ついつい沈没してしまいたくなる街があるらしい。

ボクが昔よく聞いたのは、タイのバンコク・インドのコルカタ(旧カルカッタ)・バラナシ・プリーかな。

エジプトのカイロにも、沈没している人たちがいたな。
それまで過酷なアフリカ旅していて、カイロという都市が発展していて物価も安くて過ごしやすかったらしい。

 

それと忘れちゃいけない、中国の大理(だいり)という街。
ここも、日本人バックパッカーがたくさん沈没するスポットだった。
大理に行くと、その居心地の良さから「必ず撃沈される」という話を聞いたことがある。

大理で沈没していた日本人は、確か「ダーリーズ」と呼ばれていたような気がする。

 

沈没スポットの絶対条件は、宿代や食費が安いところ。
そうでないと、「お金がないない」言っているバックパッカーが長期滞在できるはずがない。
これは100%ボクの主観だけど、そこからは大ざっぱに2種類に分かれる。

バンコクやカイロといった都会。
食べ物もお酒もなんでもすぐに手に入るし、本当に便利。
都会だから、日本人旅行者にも出会いやすい。
そうすると、気の合う人と楽しい時間を過ごすことができる。

 

もう1つは、都会から離れてのんびりできるところ。
ポカラや大理などがそう。
ゆたかな自然はあるし、人はおだやかで時間がゆっくり流れているようなところ。
移動ばかりで疲れていると、癒されて沈没してしまう。

 

沈没スポットは、場所そのものに魅力があることはもちろんだけど、「そこに来るまでに、どんな旅をしてきたか?」ということも、重要な要素になる。

人がいないところを旅してきたから、久しぶりに日本語を使うのがうれしい。
人や都会に疲れていたから、雄大な自然に癒された。

そんなふうにして、ついつい沈没してしまうこともあるはず。

 

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インドには、氷河もある

 

若いバックパッカーに話をきいても、沈没という言葉の意味や沈没する街は昔とあまり変わっていない。

でも今では、エジプトのシナイ半島にある「ダハブ」が、沈没スポットになっているらしい。

 

ここは、「恋するダハブ」というおしゃれな呼ばれ方をしている。

ダハブはダイビング・スポットとして有名で、ダイビングのライセンスを取るために多くの旅行者が3、4日ここに滞在する。
それでその間、行動をともにすると自然と親近感や恋心が芽生えやすくなるという。
それでいつからか、「恋するダハブ」と呼ばれるようになったという。
こういう呼び方は新鮮で、「時代が変わったなあ」と感じる。

 

でも、それはボクがイメージしている「沈没」とはちょっと違う。
20年前の沈没スポットで、そんな素敵な場所はなかったぞ。

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。