イスラム教徒と神とコーラン:米でナイキ・アマゾンが回収騒ぎ

 

7世紀の始めごろ、アラビア半島でムハンマドという男が洞くつの中でめい想をしていた。
するとジブリール(ガブリエル)という天使があらわれて、彼に神(アッラー)の言葉を伝える。

これがイスラーム教の始まりだ。
イスラームとは「唯一神(アッラー)への絶対服従」を意味するという。

 

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ジブリールとムハンマド

 

「神への絶対服従」を誓うイスラーム教徒にとって、アッラーはもっとも神聖な存在。

だから「bloomberg」の記事(2019年2月1日)のようなことが起こる。

米ナイキに製品回収の圧力-スニーカーのロゴにイスラム教徒が抗議

ナイキが販売しているスニーカーの靴底にあるロゴが「アッラー」というアラビア語に見えるということで、アメリカで騒ぎになっている。

踏みつけられて泥で汚れるスニーカーにその名があるなんて、神への冒とくで絶対に許せない。
そう思ったアメリカのイスラーム教徒はインターネットで、「エアマックス270」を回収するよう呼びかけるキャンペーンを始めた。

 

画像は  Nike needs to recall offensive shoe with Allah’s name from worldwide market

上の文字が「アッラー」というアラビア語
下が「エアマックス270」のデザイン

 

ナイキが靴に神の名を刻んだことは、イスラーム教徒にとってはあり得ないほど失礼で屈辱的だという。

「It is outrageous and appalling of Nike to allow the name of God on a shoe. This is disrespectful and extremely offensive to Muslims and insulting to Islam. 」

もちろん、ナイキにイスラーム教をバカにする意図はない。
これは不幸な偶然だ。
ただ「あらゆる宗教を尊重している」というナイキは、この件を真剣に受け止めているという。

でも「エアマックス270」は世界中で販売されているから、全てを回収することはむずかしいだろう。

ちなみに1997年にも同じような騒動があった。
米ナイキが販売したスニーカーのロゴが「アラー」のアラビア文字に似ているということで、イスラーム教徒から抗議を受けた。
このときナイキは謝罪して、商品を回収している。

 

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このときムハンマドに伝えたアッラーの言葉が下のコーランになる。

 

 

コーラン(アラビア語ではクルアーン)について、高校世界史ではこう習う。

コーラン(クルアーン)

イスラーム教の根本聖典。
アラビア語で「音読されるもの」を意味する。
天使ガブリエルによってムハンマドに啓示された、神の教えの記録とされる。
114章からなり、第3代正統カリフのウスマーンの時代に現在の形にまとめられたとされる。

(世界史用語集 山川出版)

 

アメリカでは、ついこの前もこんな騒ぎがあった。
CNNニュース(2019.01.08)

米アマゾン、ドアマットなど取り下げ イスラム団体から苦情

アマゾンで売られていたドアマットや便座などの商品に、アラビア語、コーランの言葉、ムハンマドの名前が描かれていた。
これを知ったイスラーム教市民団体、米イスラーム関係評議会(CAIR)がアマゾンに抗議をした結果、アマゾンはこれらの商品の販売中止を決定。

「こうした商品は足で踏まれたり、侮辱的に扱われたりするからだ」というCAIRの説明は、「エアマックス270」に怒ったイスラーム教徒と同じ。

CAIR側はCNNとのインタビューでこう話している。

「私の直感では、バスマットやシャワーカーテンのような商品はメーカーが何も考えず、手当たり次第にデザインしてしまった結果ではないか」

「だが一方で、意図的に反イスラムの領域に踏み込んでくる者もいる。便座を作った会社などはそうとしか考えられない」

「知りませんでした。すみません」では済まないのが宗教問題。

日本でも1992年に、横浜ゴムがつくったタイヤの溝の模様が「アッラーのアラビア文字表記に似ている」とイスラーム諸国から抗議を受けたことがある。
このとき横浜ゴムはタイヤの生産を中止して、無償交換と回収をした。
くわしいことはこの記事をどうぞ。

宗教のタブー②日本の会社がイスラム教の「豚肉・コーラン」で国際問題に

 

宗教に関心があるかないかは個人の自由。
でも商売をするのなら、無関心ではいられない。
年間3000万人の外国人が訪れるいまの日本では、ビジネスのチャンスとリスクが同時にある。
宗教での失敗は謝罪したうえに、商品の生産中止や回収に追い込まれる場合があるからオソロシイ。

 

 

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アメリカ人と京都旅行 ~日本人とキリスト教徒の宗教観の違い~ 1~5

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。