日本文化:お寺の仁王像と神社のこま犬の「阿吽(あうん)」

 

外国人をお寺に連れて行くと、門の仁王像を指さしてこんなクイズをする。

「この2体の像でちがうところはどこでしょう?」

この前ひな祭りで可睡斎(かすいさい)というお寺に行ったときにも、インド人、ミャンマー人、スリランカ人にきいてみた。

 

   

どっちもマッチョな裸族だから、よく似ているけど同じではない。

 

一般的には仁王(におう)と呼ばれる像だけど、厳密にいうと金剛力士の像で、口を開けている「阿形(あぎょう)像」と、口を閉じた「吽形(うんぎょう)像」の2体でお寺を守っている。

2人以上で何かをするとき、気持ちやタイミングがぴったり合うことを「阿吽の呼吸」という。その阿吽と同じ。

ついでに言えば、向かって右の像が「金剛杵(こんごうしょ)」という武器を持っている。
仏敵が現れたらそれで攻撃するという。

 

外国人に先ほどの「お寺クイズ」を出すと、2体の口を見れば分かるから、少し考えればだいたい答えは出てくる。
ただこの前のときは、インド人から「あの像の指の形には、何か意味があるのか?」ときかれて困った。
そこまでは知らん。

仁王像の「阿吽」については、お坊さんからこんな話を聞いたことがある。

「『あ』と口を開いているのが阿形で、『ん』と閉じているのが吽形。『あ』は人生の始まり、つまり誕生を意味している。『ん』は人生の終わり、死を意味している。阿形は太陽が昇る東の方角、吽形は太陽が沈む西の方角に置かれることが多いのも、それぞれ始まりと終わりをあらわしているから」

なるほど!深い!
と感心したからこの話を覚えているけど、そのあと仏教の本を読んでもこんな話は出てこない。
「こういう説がある」ぐらいのものだろう。

でもこの話を外国人にすると、妙な説得力があるのか「なるほど」とうなづく人が多い。

 

タイでは「ヤック」という鬼神が仏教寺院を守っている。

 

 

外国人を上のような神社に連れて行くと、こま犬を指してこんなクイズをする。

「この2体の像でちがうところはどこでしょう?」

答えは仁王像と同じ。
こま犬にも「阿吽」があって、ひとつは口をパカッと開けていて、もう一方はキリっと結んでいる。

 

   

狛犬               獅子

一般的には2つの像を「こま犬」と言っているけど、細かくいうと、阿形が「狛(こま)犬」で吽形は「獅子」になる。

このこま犬の起源をたどると、エジプトのスフィンクスにもつながるという。
くわしいことはこの記事をどうぞ。

狛犬の歴史をたどると、エジプトのスフィンクスとつながる説

 

日本のこま犬は、中国(唐)から伝わったという。
はじめのころは左右同じだったけど、平安時代にいまの狛犬と獅子に分かれるようになった。

こま犬(獅子)は中国や韓国にもあるけど、阿形と吽形のように区別されているのは日本だけ。
中韓全土を探せばそんな像もあるかもしれないけど、「阿吽」が文化として見られるのは日本だけだ。

こま犬について説明するサイトにはこう書いてある。

阿吽の形になっているのは日本特有の形式で、中国の獅子像などは、ほとんどが両方とも口を開いていて「阿吽」にはなっていません。

狛犬とは何か? 100万人の狛犬講座

 

仁王像の「阿吽」も同じ。
この「阿吽」は日本の仏教観をあらわしているらしいのだけど、くわしいことは分かりません。

 

北京の紫禁城にある獅子。
中国の獅子像は左右ともに口が開いている。
写真の獅子が手を置いているのは玉で、中国人ガイドいわく、これは皇帝の権力をあらわしている。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。