春といえば花見。
花見といえば桜。
桜といえば、やっぱりネパール。
*サクラの原産地はヒマラヤという説がある。
というわけできのう、4人のネパール人をつれて花見に行ってきた。
ボクが車を出すのいいのだけど、彼らはネパール語で話をしているから、内容がさっぱり分からない。
会話の輪に入ることはあきらめて、車の運転に集中していると、ボクが知ってる単語が出てきた。
ネパール人が何度か「サワヤカ」と言う。
「へえ、「サワヤカ」なんてネパール語があるのか」と思ったけど、たぶんそんなワケはない。
静岡県民がその単語を耳にしたら、あの緑の看板が思い浮かぶ。
「それって、ハンバーグレストランの「さわやか」のこと?」ときくと、ネパール人が「そうです」と言う。
さっき「さわやか」の前を通ったときに、「そういえば最近、げんこつハンバーグを食べてなかった。だから、また近いうちに「さわやか」に行きたいねえ」という話をしていたらしい。
たずねたことを後悔するほど、心底どうでもいい内容だった。
それにしても、「さわやか」の破壊力はあいかわらず強力だ。
あのハンバーグを食べて、一度でファンになったという外国人はボクのまわりだけでも数人いる。
この4人のネパール人は「げんこつハンバーグ」が気にっているという。
「げんこつ」の意味は知らなかったけど。
「そうかそうか。みんな、さわやかが好きなのか」と思ってから、「ちょっと待てよ。それっておかしくないか?」と違和感をおぼえる。
彼ら4人のうち、3人がヒンドゥー教徒で1人は仏教徒だったはず。
仏教徒はともかくとして、「ハンバーグが好きなヒンドゥー教徒」ってのはいいのか?
さわやかの名物「げんこつハンバーグ」
その“違和感”を書くまえに、ヒンドゥー教って宗教を確認しておこう。
高校世界史ではこう習う。
ヒンドゥー教
バラモン教に、先住民の土着信仰が吸収・融合されて成立した宗教。特定の経典を持たない。多神教であるが、三大神のうちのシヴァ神とヴィシュヌ神が中心となっている。冠婚葬祭など日常生活に関わっている。
「世界史用語集 (山川出版)」
*多神教で特定の経典を持たない、というところは神道と同じですね。
このほかにも日本では、「ヒンドゥー教徒は牛肉を食べられない!」ってことも有名だ。
その理由は、ヒンドゥー教徒は牛を神聖視しているから。
イスラーム教徒は豚肉を食べられないけど、それは「豚は汚れた動物だから」と考えるからで、ヒンドゥー教徒とは逆の理由による。
ここまで来たら、「さわやかが好きなヒンドゥー教徒」という矛盾に気づくと思う。
これだと、「トンカツが好きなイスラーム教徒」と同じだ。
なんでヒンドゥー教徒が牛肉のハンバーグを気に入っていて、「また近いうちに行きたいねえ」なんてカジュアルに言ってんだよ。
ということで、現役のヒンドゥー教徒の彼らにその理由をきいてみた。
以下、彼らが話していたこと。
ヒンドゥー教にはめちゃくちゃたくさんの神様がいるけど、このシヴァ神はとくに崇拝されている。
このシヴァ神の乗り物が「ナンディン」と呼ばれる牛だ。
ナンディン
シヴァ神があまりに偉大すぎて、ヒンドゥー教徒のあいだでは、乗り物であるナンディンも神として崇拝されている。
だから牛肉を食べることは、神を食べることに等しい。
ヒンドゥー教徒にとっては許されない背徳行為だ。
*でも例外はある。
ネパール人の彼らはこんな話をしていた。
ネットで検索すると、ヒンドゥー教徒が牛肉を食べられない理由がいくつか出てくるけど、この「ナンディン」のことはよく書いてある。
なるほど。「神であるナンディンを食べることはできない」ということはよく分かった。
じゃあ、次の質問だ。
なんでおまえらは、「げんこつハンバーグ」が好きなんだ?
この理由はとってもシンプルで、「日本の牛肉はとてもおいしいから」だった。
彼らはネパールにいたころは牛肉を食べたことがなかったけれど、日本に来てから、先輩のネパール人から「日本の牛肉はマジでうまい」という悪魔のささやきを何度もきかされる。
「ここは日本だし、外国の牛ならいいか」と思ってさわやかのハンバーグを食べてみたら、そのおいしさに言葉をうしなう。
そんな彼らにも、一応ヒンドゥー教徒の自覚があるからこれは日本限定。
ネパールに戻ったら牛肉は口にしないらしい。
でも、そもそもネパールの牛肉はかたくてマズイという。
それにしても、ヒンドゥー教徒をもファンにしてしまう「さわやか」の破壊力はやっぱりすごかった。
おまけ
聖なる牛とガンガーの動画
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