今回は香港の話ですよ。
ということでまず最初に、香港の基本を確認しておこう。
香港の面積は東京の約2倍で、重ねるとこんな感じになる。
香港とはこんなところ
・面積:1,103平方キロメートル
・人口:約729万人(2015年7月)
・民族:漢民族(約95%)
・言語:広東語,英語,中国語(北京語)ほか
・宗教:仏教,道教,プロテスタント,カトリック,イスラム教,ヒンドゥー教,シーク教,ユダヤ教
外務省のホームページ「香港基礎データ」から。
ここにある英語、プロテスタント、カトリックはイギリス植民地時代の置き土産だろう。
1997年まではイギリス領だったという特殊事情のある香港は、中国本土とは違う法律によって社会が動いている。
表現の自由も認められているから、政府批判もできる(ことになっている)。
共産主義&社会主義の中国において、香港はイギリス時代のような民主主義&資本主義の体制になっているのだ。
これを「一国二制度」といって、高校世界史ではこう習う。
一国二制度
社会主義国である中国への返還後も、香港・マカオを特別区とし、資本主義制度を併存させること。
「世界史用語集 (山川出版)」
そんなことで香港は中国の「特別行政区」になっている。
くわしいことはこの記事をどうぞ。
香港の象徴「バウヒニア」
香港で発見された新種の花
「香港は中国本土とは法律が違う」という一国二制度がいま危ない。
香港の容疑者を中国に引きわたすことが可能になる「逃亡犯条例」が改正されようしていて、香港の市民がこれに大反発。
100万人が参加する大規模デモに発展した。
SNSには「香港加油(がんばれ)」のハッシュタグを付けて、このデモを支持する人が本当に多い。
香港が危機をむかえているとき、香港出身の世界的スター、ジャッキー・チェン(成龍)の態度が「冷たい」ということで、市民から批判が噴出している。
自身のニューアルバムをPRするために台湾の台北を訪れていたジャッキーは、記者会見で香港の反対デモについて質問されるとこう答えた。
レコードチャイナの記事(2019年6月14日)
ジャッキーは「昨日初めて香港で大きなデモがあったことを知った。どんな事情があったのか、まったく知らない」と答えたのだ。
ジャッキー・チェン、香港での抗議活動「知らない」に人々怒り
香港が香港ではなくなるような危機的状況にあって「知らない」と言ったジャッキーに、インターネット上では「失望した」「(中国)共産党の手先め」といった批判が殺到。
このとき台湾にいたX JAPANのYOSHIKIさんも「事故」に巻き込まれた。
ジャッキーと食事をしたことをツイートすると、ここにも批判が寄せられて、YOSHIKIさんは謝罪に追い込まれる。
Wonderful dinner with #JackieChan .#ジャッキーチェン @EyeOfJackieChanhttps://t.co/xjHDhWqHrb pic.twitter.com/Jr1u8ZNLrJ
— Yoshiki (@YoshikiOfficial) 2019年6月12日
いまのところジャッキーは批判に対して沈黙で応えている。
言いたくても言えない大人の事情があるからだ。
ジャッキー・チェンの「中国寄り」の姿勢は前々から知られていたことで、テレビの特番では何度か中国の愛国ソングを歌っているし、中国政府の広報ビデオに出演したこともある。
そしていまは中国人民政治協商会議(いわゆる上院)の委員を務めている。
くわしいことはここをどうぞ。
中国共産党の「内側」にいる人間がデモについて聞かれたら、「知りません」と答えるしかない。
賛成しても反対しても、どっちにしろ叩かれて何かを失うのだから。
でも、ジャッキーの「脱香港・入中国」という態度には香港でも批判一色ではない。
「むしろ中国政府の力を利用して、すばらしい作品を作り出してみんなを楽しませてくれたらいい」と言うポジティブな香港人に会ったこともある。
でもこれとは逆に、ジャッキー・チェンの代表作「ポリス・ストーリー」シリーズで、香港警察がいつの間にか中国警察(公安)に変わっていたことにショックを受けた香港人もいた。
「ジャッキー・チェンは中国人になった。だからあれ以降、もう彼の作品は見ていない」と話す。
でも、すでに見切りをつけたこの人なら、「知らない」と聞いても何も思わないかもしれない。
日本版のオープニングは香港の街並みをバックに主題歌が流れ、香港警察への敬意が英文で表示されるなど、豪華な作りとなっている。
さて、
作品か郷土愛か?
中国人か香港人か?
「2つの祖国」を持ったスターの苦しみはこれからも続くはず。
と、こんなことを書いていると、戦前のキリスト教思想家で文学者でもある内村鑑三が頭に浮かんだ。
熱心なキリスト教徒である内村は「おまえにとって大事なのは日本(天皇)かキリストか?」と問われ、「私はJapanとJesus(イエス・キリスト)を信じる」といったことを言う。
いわゆる「二つのJ」だ。
これをふくめて内村鑑三について知りたい人は、「NHKテキストVIEW」の内村鑑三とは誰かをご覧あれ。
でも、「わたしにはCもHも大事です。だからわたしはChinese」なんて言ったら、ジャッキー・チェンはきっと香港には戻れない。
と、こんな書いていると、K-popグループ「TWICE」の日本人メンバー、サナさんが頭に浮かんだ。
インスタグラムに「#平成ありがとう😊 #令和よろしく🥰」と日本語でメッセージを投稿したところ、韓国で批判が殺到。すると日本人からは擁護が殺到した。
くわしいことはこの記事を。
日韓で活躍する芸能人も、「おまえが大事なのはKかJか?」を問われることがある。
そういうときに「わたしはJKです」と言えるのは18歳まで。
ちなみに共同通信の記事(2019/6/18)によると、香港ではデモ隊が一応“勝利”した。
香港トップ、事実上の撤回言及か 条例改正の延期、地元紙報道共同通信
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