【逝きし日の面影】中国から「北京ビキニ」が消える日

 

「降る雪や 明治は遠く なりにけり」

俳人の中村 草田男(なかむら くさたお:明治34年 – 昭和58年)は空から降るを雪を見て、過ぎ去った明治の時代をなつかしく想った。
もうすぐ平成もそうなる。

何かのきっかで、ふと昔の思い出に浸る瞬間はだれにでもある。
個人的には大阪の西成区に行ったとき、昭和が頭に浮かんだ。

 

 

黒電話やウォークマンなど時代を象徴したものが次々と姿を消していく。
それは仕方のないことだけど、中国から「北京ビキニ」が消えるというのはせつなくて衝撃的だった。
中国にはいままで7、8回ほど旅行で行ったことあって、ボクにとって中国人の印象というか、定義が「北京ビキニ」だった。
白く薄汚れたTシャツを乳首の下までまくり上げて、腹をまる出しにしておっさんが街を歩いている。
蒸し暑い夏をタダでエコに過ごす方法としては間違っていない。

中国旅行でお世話になった50代のガイドもときどき、この北京ビキニをすると話していた。
*もちろん「北京ビキニ」という言葉は使わない。

中国人はメンツを命の次に大事にすると聞いた。
でも、その恰好で街を歩くことはメンツと関係ないと言う。
何人かの日本人がご飯を食べた後に割り勘をするのは、中国人的にはみっともない。
「オレが払う。おまえらはいい」と言うのが中国人のメンツ。
でも、おごられると自分のメンツを失うから、「いやいや、おまえはいい。ここはオレが出す」と言ってもめることもよくあるとか。

日本人とは価値観が根本的にちがうのだ。

 

中国では北京ビキニのおっさんを「膀爺」と言う。
人民日報の公式SNSアカウント・侠客島が「さよなら!膀爺」というタイトルで、中国で「膀爺」が登場した背景をこう説明している。
東亜日報の記事(July. 10, 2019)

水滸伝など中国古典では上半身裸の人物が勇猛な性格を表わしたという多少滑稽な例えを挙げた。侠客島は、「長年の飢餓、貧困、戦乱の歴史の中で、中国の平民、国民は避暑の資源も十分でなかった。彼らは暑さに対処するために服を脱ぐしかなかった」とし

統制したからと「北京ビキニ」が消えるだろうか

この人はビキニではないけど、ほぼこんな感じ。
*「Beijing bikini」で画像検索をしてほしい。

 

初めてこれを見たときは二度見したほどおどろいたけど、通行人はみんな平然と歩いていたから、「これが中国のノーマルなんだ」と納得。
といってもこれを「北京ビキニ」と呼ぶことは知らなくて、「腹出しルック」と言っていたけど。

アメリカCNNニュース(July 5, 2019)で、欧米人はそう呼んでいることを知った。

It’s a style so ubiquitous that it’s even earned a fond nickname: the “Beijing bikini.”

No more ‘Beijing bikini’: Chinese city calls topless men ‘uncivilized’

 

ubiquitous。そう、あれはまさにユビキタス。
北京ビキニのおっさんは中国のどこにでもいた。
きっと、中国のアモイで生まれた中村 草田男(本名は清一郎)も子供のころに見ただろう。

でも、それももうすぐ思い出に変わりそうだ。
中国で「topless(トップレス)」姿のおっさんは「uncivilized(文明的ではない)」という理由で、当局が規制する動きがあらわれた。

CNNの報道によると天津市ではことし、上半身裸という格好で(カッコウといえるか知らない)、スーパーで買い物をしていたおっさんが捕まった。

a man was fined around $7 in May for shopping shirtless in a supermarket, according to the Tianjin police. The city introduced a regulation banning going topless earlier this year.

7米ドルなら800円以下だから、重罪ではなかった。
その人は厳しく罰しないでほしい。

 

「ノーモア・北京ビキニ」には市民でも賛否が分かれていて、マナー向上をよろこぶ人もいれば、古き(良き)中国が消えることを残念がる人もいる。

日本のネットではほとんどの人が北京ビキニを支持する人が多い。
つまり他人事だ。

・欧米なんか行くと上半身裸の男がフツーに歩いてて違和感もねーだろ
・おっさんが腹だけ出すってアレかw
・そんなの気にせず腹出して歩いてほしい
・北野武か香港ノワールのワンショットみたいでカッコいいなw
・どんなに暑くても肌着は着ないとダメだろう
・日本でこれやったら職質されるなw
・ポロシャツの襟立てよりマシ

ボクも同意見で、これを犠牲にしてまで中国が近代化する必要があるのだろうか?

朝日新聞の記事では共産党員も惜しんでいる。(2019/7/7)

北京の50代の共産党関係者は「私も昔は暑い日にシャツを上げて過ごしていたが、今はやっていない。時代の流れだ」とこぼした。

北京ビキニ、上半身裸は「非文明的」 規制強化に嘆きも

マナー向上を呼び掛ける「文明」というキーワードを街のあちこちで見た。

 

ちなみに「逝きし世の面影」というのは渡辺京二氏が、消えゆく江戸・明治の美しい日本や日本人を描いた本のタイトルで、西部邁氏がこう評したもの。

当時の西洋人が見た日本の姿――いまや失われてしまった、逝きし世の面影――を浮かび上がらせているのです。/この本を読むと、多くのヨーロッパ人たちが、この美しき真珠のような国が壊されようとしていると書き残しています。

 

ぜんぜん美しくないし真珠でもないけど、北京ビキニが消える日がくるとは思わなかった。
中国がどんどん遠くなっていく。

 

 

こちらの記事もどうぞ。

日本 「目次」

中国 「目次」

台湾 目次

 

2 件のコメント

  • ブログ主さんの年代と、たぶん育った地域にもよるのでしょうが・・・。
    昔(昭和30年代頃まで?)の西日本(?)では、夏になると、ステテコ履きに、下着のシャツを捲り上げて、ウチワでパタパタ仰いでいるようなおっさんが、普通にいましたよ。昔の映画とか、漫画とか探してみれば分かります。あのスタイルを今では「北京ビキニ」と言うのですか、知らんかった。でもおそらく、日本の「おっさんビキニ」の方が古い(オリジナル?)と思います。

  • 日本もかつて通った道なんですね。
    オリンピック前後で日本は社会も人もかなり変わったと聞きました。
    「北京ビキニ」も「おっさんビキニ」も個人的には関係ないから、本人の好きにすればいいと思います。
    でも中国からそれもニーハオトイレもなくなっていくのはちょっと寂しい気がします。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。