「ヒンドゥー教の国」というイメージが先行するインドは、実はムスリム(イスラーム教徒)大国でもある。
イスラーム王朝のムガール帝国が支配していたこともあって、国内にはたくさんのムスリムが住んでいる。
外務省ホームページにあるデータでは、2011年の人口が12億1,057万人でイスラーム教徒は14.2%とあるから、単純に計算すると、日本の総人口より多い1億7200万人のイスラーム教徒が住んでいることになる。
信じる神は違うとはいえ、そこはやっぱりインド人。
いままで会ったヒンドゥー教徒やイスラーム教徒のインド人はみんなカレーが好きだし、自己主張も強かった。
インド人の国民性はまったく変わらない。
とはいえ、やっぱり神が違うと相容れない部分もある。
その最たるものは結婚で、ヒンドゥー教徒とイスラーム教徒の結婚というと文字通り激レア。
いままで20人以上のインド人に尋ねてみたけど、「そういう話を聞いたことはあるけど、直接は知らない」という人がほとんど。
では、インドでその両者が結婚したらどうなるのか?
インド南部ケララ州に住んでいるアキラ・アショーカンというヒンドゥー教徒の女性(25)が、2016年にイスラーム教徒の男性と結婚したら(おそらくこの時にはイスラーム教徒に改宗している)、激怒したアショーカンさんの父親がケララ州の裁判所に訴えて結婚が無効にされてしまった。
それ以来、自宅での監禁生活がはじまる。
AFPの記事(2017年11月29日)
アショーカンさんは両親の自宅から外出することを許されず、学業も中断を余儀なくされていた。
イスラム教徒と結婚の娘、ヒンズー教徒の親が監禁 印最高裁が解放命じる
異教徒との結婚は両親や一族に対する「罪」だから、昔の日本でいえば、武士の蟄居(ちっきょ)のようなもの。
中世から近世(特に江戸時代)武士または公家に対して科せられた刑罰のひとつで、閉門の上、自宅の一室に謹慎させるもの。
両性が合意した結婚を裁判所が無効にするなんて、日本じゃ聞いたことないけど、インドの日常は日本人にとってはマンガの世界だ。
カンニング事件で1800人以上が逮捕されて約40人が「突発的な死」をとげるなんて、日本の現実ではあり得ない。
それはこの記事をどうぞ。
不思議の国インド。カンニングで40人死亡・MRIの磁力が死因に。
これに納得できないアショーカンさんの夫が上告したところ、最高裁で審理が行われて、アショーカンさんを学校に通わせることが命じられた。
これで「蟄居」は解かれたのだけど、AFPの記事には、結婚無効が解除されたかどうかが書いてない。
この話を以前、インド南部タミル・ナードゥ州出身のインド人にしてみたら、「その話は知りませんけど、結婚無効は解除されないと思いますよ」という。
インドでは女性の立場が弱くて家族(特に父親)の力が強いから、裁判所はきっと家族の意見を優先する。
ヒンドゥー教徒とイスラーム教徒の結婚はインド社会ではかなりのタブーだから、裁判所でもきっと認められないと思うとのこと。
そうか、愛は宗教に負けたか。
と思っていたら最近、2018年に愛は宗教を超えたことを知る。
インドの最高裁判所が、結婚相手を選択する自由と改宗の自由は憲法で保障された権利だと認めたのだ。
アメリカCNNニュース(2018.04.12)
イスラム教に改宗したヒンドゥー教徒の女性がイスラム教徒の男性と結婚することを支持する判断を下した。異なる宗教間での結婚を認めないとした下位の裁判所での決定を覆した形だ。異なる宗教間での結婚を認めないとした下位の裁判所での決定を覆した形だ。
インド最高裁、他宗教間の結婚支持する決定
日本に住むインド人に日本のいいところをきくと、「宗教の対立や緊張がないこと」という答えがよく返ってくる。
ヒンドゥー・イスラーム教徒間の結婚がこれだけ大変だと分かるとそれも納得。
でも天は二物を与えずで「無宗教社会」の日本では、ヴェジタリアンやヴィーガンのインド人は外出すると食事に困るということもよく聞く。
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