少し前にヨーロッパと日本を比べる記事を書いた。
【島国 vs 大陸国】日本人とヨーロッパ人の違いは“国境の感覚”
東ヨーロッパのリトアニア人に話を聞いたら、ヨーロッパとはそれ自体がひとつの国で、オーストリアやチェコ、スイスに行っても外国という気はしない。
日本はあまりに違いすぎて、「ゲームの世界にいるよう」と話していたけど。
リトアニア人から話を聞いていたとき、ベトナム人もいて、彼の感覚でも「それは分かる」と言う。
「リトアニアからオーストリアやスイスまで車で行った」と聞いて、島国で生まれ育ったボクは「マジで!」と思ったけど、ベトナム人に驚く様子はない。
「別に」といった感じで、当然のように話を聞いていた。
東南アジアにあるベトナムもヨーロッパのリトアニアと地理的には同じで、隣国とは陸続きだから、国境を手軽に身軽に越えることができる。
そのベトナム人がホーチミン市の大学に通っていたとき、友だちから「今週末にカンボジアへ行こう」と誘われて、3日後に50ccのバイクに乗ってカンボジアへ遊びに出かけた。
そのままカンボジアへ入国して、3日間バイク旅を楽しんでベトナムに戻ってきたという。
上の地図を見ると、ホーチミンからカンボジアまでの直線距離は静岡県の西から東よりも近い。
そのぐらいの距離を50ccのバイクで走り抜けることは日本人でもやるけど、そのまま外国へ入国するというのは日本人の常識にはない。
バイクで走っていたらまぶしい光につつまれて、気づいたらカンボジアにいた、というのはアニメの始まりでありそう。
でもリトアニア人なら、バイクで隣国に行くというのは常識の範囲内。
ヨーロッパ人がEUを移動するのと違って、ベトナム人の彼がカンボジアに入るためにはパスポートが必要だったけど、自宅から原付バイクで出かけて国境を越えるという経験をしていれば、先ほどのヨーロッパ人の話を聞いても「それは分かる」と言うのも納得だ。
ベトナムは共産党が統治する国で、日本やヨーロッパとは社会の基本的な価値観が違う。
でも、地理的には大陸にある国だから、国境についての感覚は日本人よりベトナム人のほうがヨーロッパ人に近い。
島国のジャパンで生まれ育ったボクは「陸路で入国」ということにロマンや旅心を感じていたけど、東南アジアを旅行してみると、現地の人はまったくそう思っていない。
15年ほどまえ、タイからカンボジアへ向かうバスに乗って国境に着いたときのこと。
パスポートを持って入国審査を待っていると、その後ろを、何人ものカンボジア人がぞろぞろと歩いて国境を越えてタイへ入国していた。
どう見ても出国・入国の手続きをしていないし、そもそもパスポートを持っているようには見えない。
あとからカンボジア人に話を聞いたら、「タイへ働きに行っているんだよ。タイのほうが仕事もお金もあるから」と事もなげに言う。
そういえばタイ側には市場があって、いろんな店が並んでいたのを思い出した。
そこへ歩いて働きに行って、仕事が終わったら国境を越えて自宅に戻るカンボジア人は珍しくないという。
カンボジア人の賃金は安くすむから、タイ人オーナーにとってもこれはよろこばしい。
国際社会の厳正な感覚だとそれを不法入国や密入国と言うのだけど、カンボジア側もタイ側もまったく問題にしていなかった。
浜松人のボクの感覚だと名古屋までの通勤が限界なのだけど、東南アジアでは国を越えて通勤するケースは他にもある。
マレーシアとシンガポールではこの越境通勤が常識化、システム化されている。
シンガポールの会社は給料が高いけど、家賃もクレイジーに高い。それでにマレーシアのジョホールバルに住んで、そこからシンガポールの会社へ通勤している人も多いのだ。
ジョホールバルからシンガポールの距離は神奈川の相模湾に収まるほどだから、これはまったく問題ない。ただ渋滞はひどいらしい。
この「隣国通勤」は拡大しつつあって、日本経済新聞の記事(2017/9/1)によると、もうすぐ通勤鉄道が登場する。
シンガポールとマレーシア南端部を結ぶ通勤鉄道が2024年にも開業することが決まった。マレーシア側ではシンガポールに通う人が住む都市開発が進む見込み。
「拡大シンガポール」に商機 マレーシア結ぶ通勤鉄道
川崎市から東京23区にある会社へ、電車で通勤するのと同じ感覚だろう。
ちなみにこれに「商機」を見出したのは三井物産で、都市開発に参画するらしい。
外国に行くには海を越えないといけない日本人と、車・原付・電車で国境をヒョイと越えてしまう彼らとでは国境の感覚や外国の概念が違う。
外国人と話をしていると、島国に住むということがどういうことなのかよく分かる。
今回の記事とは直接関係ないけど、さっき沖縄タイムスのこんな記事(2019年8月21日)を見た。
「離島」は差別用語ではないか? 国内最西端の町長が提起 「島しょ」使って
与那国島の町長が「離島」ではなくて「ぜひ島しょと使ってほしい」と訴えている。
こういう感覚は他の国にもあるだろうか。
こちらの記事もどうぞ。
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