数年前、浜松から東京へ遊びに行ったとき、居酒屋の客引きの数におどろいた。
場所は新宿だったからこれを「東京のふつう」と思ってはいけないかもしれないけど、3人で通りを歩いていると客引きに何回も声をかけられたし、ビルの前で止まっているとすぐに近づいてくる。
なかには、「そこの店は今いっぱいなんです。別の店を紹介させてもらいますよ」と言う人もいた。
浜松にも客引きはいるけど、これほど多くないし強引でもない。
そもそも本当に満席ならいいけど、そうウソをついて別の店に連れていこうとしたら犯罪になるんじゃないか?
と思ったら、やっぱりそれは違法行為で、さいきん福岡市の大学生がそれで警察に捕まった。
JR博多駅の近くで居酒屋に入ろうとしていた4人組に、「そこ、もういっぱいなんで、予約しないと入れませんよ」とウソをついて、偽計業務妨害の疑いで逮捕。
九州朝日放送のニュース(8/26)
容疑者は、自分が契約する居酒屋に客4人を連れて行こうとしていたとみられています。
客引き大学生を逮捕 「満員」とうそで業務妨害疑い
この21歳の大学生は実名報道されてしまったから、就職活動をふくめてこれから大きな代償を払うことになる。
さて、ここからはインドの話。
ボクがインドを旅行した20年ほどまえは、日本人バックパッカーの間でインドとエジプトは暑さとしつこさで有名だった。
いまでもこの二国にモロッコを入れて、「世界三大うざい国」と日本人バックパッカーに言われている。
ボクがインドとエジプトを旅行して感じた「ウザさ」は客引きの強引さ。
駅前に10人ほどの客引きが待機していて、バックパックを背負った外国人旅行者が出てくると、いっせいに群がって猛烈な誘致活動をはじめる。
先ほどの大学生と同じで、自分が契約するホテルに客を連れていこうとするのだ。
「今日はどこに泊まるんだ?」
「宿はきまっているのか?」
「それはどこだ?オレはもっと安くて快適なホテルを知っている」
「オレのところにすれば、移動費はタダだ。ついて来い」
「オレの宿には日本人がいっぱい泊まるんだ。このノートを見ろ」
「暑いしうぜー」と思って無視して歩こうとすると、「ちょっと待て!」と腕やTシャツをつかむ客引きもいた。
あとでTシャツを見たら、客引きが指でつまんだところが黒くなっていて驚いた。
インドの街を歩いていても、「どこに行くんだミスター?」と客引きがすぐに寄ってくる。
ちなみにインド人の英語は巻き舌だから「r」が「ル」になって、「ミスター」が「ミスタル」、「ブラザー」が「ブラザル」と聞こえることがある。
とにかく客引きは熱心だ。
「そのホテルはいま工事中で、オープンするのは来年だ。もっといいところを紹介してやるから、オレについて来い」
「そのホテルは今いっぱいだ。オレの宿のほうが安いし朝食もつく」
「おまえは運が悪い。そのホテルは別のところに移動したんだ。こっちに来い。オレはオーナーの知り合いだから、安くなるんだ。おまえはオレと出会ってラッキーだ」
もちろん登場人物すべてがウソつき。
「工事中だ、クローズした、客でいっぱいだ」と客引きの言うホテルに行くと、絶賛営業中で部屋も余裕である。
ひどい客引きの場合、「オレはそのホテルの従業員だ。ついて来い」と言ってまったく別のホテルに連れて行く。そのホテルに到着して「ここは違うじゃないか!」と怒ると、「こっちのホテルのほうがいいんだ!なんでおまえは安くていい部屋に泊まらないんだ?」となぜか問い詰められる。
日本の基準でいくと、偽計業務妨害の疑いで全員逮捕まちがいなし。
でもこんなことはインド旅の当たり前。
RPGでスライムに出くわすようなもので、旅の経験値かせぎにはなる。
インドやエジプトを旅行して、「無視する力」や「スキを見せないスキル」がついたと思う。
そのおかげと思うけど、堂々と無視していると、インドの客引きの引きが弱くなった。
でもこの能力が日本で役立ったことは一度もない。
インドの聖地、ではなくてヒンドゥー教徒の聖地「ヴァラナシ」
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