いまからおよそ100年前、シドモアというアメリカ人女性が明治の日本を訪れた。
シドモアはそのときの印象をこう記している。
愛くるしい日本国民の微笑、比類なき礼節、上品で果てしないお辞儀と明るく優美な表情には、はるかに心よさを覚えます。
「シドモア日本紀行 (講談社学術文庫)」
親日家のシドモアはアメリカに桜を紹介したことでも知られる。
横浜外国人墓地にあるエリザの墓碑の傍らには、1991年にポトマック河畔から「里帰り」した桜が植えられ、「シドモア桜」と名付けられている。
日本人のお辞儀は上品だけど「果てしない」。
くり返し頭を下げる日本人を見て、同じ印象を持った外国人は他にもたくさんいる。
さて、いま日本でラグビーW杯が開催中だ。
それで選手の間で日本の文化、お辞儀がちょっとした“ブーム”になっているらしい。
ニュージーランド代表が試合のあと、観客にむかってお辞儀をしたことが始まりで、そのあとイタリア代表やナミビア代表も試合終了後に一列にならんで観客に深々とお辞儀をした。
ファンはこれにスタンディングオベーションで応える。
どこのチームもお辞儀をした理由は同じで、日本に対する敬意やファンへ感謝の気持ちを表すためだ。
写真を見たら、各国の代表選手がしていたお辞儀の角度は最敬礼をこえて下のような90度にちかい。
意図したわけではないだろうけど、結果として、最も日本の伝統的なお辞儀になっている。
お辞儀についてくわしいことはここをどうぞ。
東アジア地域ではお辞儀は伝統的な挨拶、お礼、謝罪の行為であり、特に日本と朝鮮半島及び中国の一部地域で顕著に見られる。
日本に4年ほど住んでいたイギリス人の女性から、ずっと前に「わたしが完全に日本人になった瞬間」について話を聞いた。
まずそのイギリス人は日本語を話しているとき、気持ちや性格が少し変わると言っていた。
相手が日本人・イギリス人・その他の外国人に関係なく、英語を話しているときに比べて、おだやかで丁寧な自分になる。
先ほどでてきた「会釈」「敬礼」「最敬礼」の角度や意味の違いは知っていて、場面や相手に応じて使い分けることができるようになったけど、それで「完全な日本人」になったとは思わなかった。
あるときアパートの部屋で日本人と電話で話をしていて、「わかりました。よろしくお願いします。」と言って電話を切った。
すると一緒に住んでいたボーイフレンドがニヤニヤしてこう言う。
「電話で話しているとき、君は何度も頭を下げてたよ。君は完全な日本人になったんだな。おめでとう!」
こう聞いて、初めて自分が「エアーお辞儀」をしていたことに気づく。
職場で日本人が見えない相手に向かって、何度も頭を下げているのを見て面白く思っていたら、無意識に自分もやっていた。
この瞬間、自分は日本人になったと思ったという。
おもしろい話だと思って他の外国人に聞いたら、同じことをやったインド人やアメリカ人がいて、やっぱり「おまえはすっかり日本人だな」と笑われたらしい。
ラグビーの代表選手がここまでする必要はないけど(絶対しないけど)、相手に敬意をはらう日本人の心が世界に広がってくれたらうれしいと思う。
こちらの記事もどうぞ。
昔読んだイギリス人のルポライターの本でも、日本から帰省した際、電話しながら無意識にお辞儀を繰り返してしまい、家族から変な物を見る目で見られた話が載っていました(笑)
電話でお辞儀は外国人からすると、日本人化の目安のようですね。
日本でお辞儀が正式な挨拶になったのは、高温多湿な日本の夏は、握手やハグのような身体の接触は不快感をもたらすためという説を耳にしたことがあります。
実際のところはどうなんでしょうね。
電話をしながら頭を下げる光景は外国人からしたらおもしろいでしょうね。
「高温多湿説」については初耳です。
身分制度のある社会では相手に触れるあいさつはできなかった、という話は聞いたことがありますよ。