日本が開国して外国人を本格的に受け入れはじめたころ、イザベラバードというイギリス人旅行者がやってきた。
1878年(明治11年)にバードが日本を旅行したときには旅券が発行され、そこには外国人向けのこんな注意があった。
森林の中で火を燃やしたり、馬上に火を持ち込んだり、畑や囲い、あるいは禁猟地の中に侵入してはならない。寺院、神社、あるいは堀に落書きをしたり、狭い道路で馬を速く走らせたり
「日本奥地紀行 イザベラバード(平凡社)」
当時の外国人は日本でこういう迷惑行為をしていたらしい。
まあ令和のいまでも外国人による落書きはあるし、マリオカートも一部でひんしゅくを買っているけれど。
イザベラ・バードは日本で見聞きしたをことを「日本奥地紀行」に書いている。
栃木県壬生町から鹿沼市の日光杉並木に至る例幣使街道では、よく手入れされた大麻畑や街道沿いの景色に日本の美しさを実感したと書いている。
*栃木県はいまでも大麻の産地で、博物館では「栃木が誇るべき農作物」として紹介されている。
さて話はかわって現代の日本。
きょねん久しぶりに京都へ行ったとき、外国人観光客の多さに驚いた。
ネットやテレビでそういう話は知っていたけど、嵐山や清水寺のあたり、特に伏見稲荷はもはや多国籍空間。
まるでバンコクのカオサンロード。
日本らしさを味わいたかったのだけど、感じたのは異国情緒だった。
一緒にいた台湾人も、「京都は外国人ばかりですね。少しガッカリしました」と日本人のようなことを言う。
でもそうなると、当然こうなる。
読売新聞の社説(2019/08/29)
観光シーズンの京都市では、訪日客が街にあふれ、通勤・通学客が路線バスに乗れない事態が起きている。(中略)マナー違反も見過ごせない。観光庁の調査では、トイレの汚れや住宅地でのゴミの投棄、立ち入り禁止区域への侵入などを問題視する自治体が多かった。
訪日客の急増 分散化で観光公害を防ぎたい
マナー違反の増加にともなって、こんな看板も増えている。
ただ最近はマナー違反の日本人観光客も多い。
上の立て看板は祇園で見たもので、舞子や芸者には触れないで!とでっかく書いてある。
外国人観光客に特にやめてほしい迷惑行為がこれなんだろう。
伝統的な日本家屋の前を舞子さんが歩いているのを見たら、写真を撮りたくなるのはよくわかる。そう思うな、というのは無理。
でも、舞子さんの前に立ちふさがったり、腕をつかんだりするメチャクチャな観光客がいるらしい。
さすがに日本人ではないと思うけど。
とにかくそれで、こうなった。
共同通信の記事(2019年9月30日)
芸舞妓への無断撮影やめて 京都の観光客にスマホで通知
祇園にある花見小路の周辺に近づくと、外国人観光客のスマホにマナー情報が自動的に届くという試みが始まった。
通知されるマナー違反というのは、私有地へ立ち入ることや芸者・舞子を無断撮影することなど。
前者は「畑や囲い、あるいは禁猟地の中に侵入してはならない」という“明治の注意”と変わらない。
それは当然として、後者は「そのぐらいいいんじゃね?」という気はする。
舞子さんに声をかけたり触れたりしない。
通行の邪魔はしないという条件で、歩いているところを写真で撮るだけなら、外国人へのサービスとして認めていいと思う。
何か深いわけがあるのだろうか?
ネットの反応をみても同じ考えの人が多い。
・無理だな
ディズニーでミッキー撮るなと言えんだろ?
それと同じ
・見られてナンボだろ
・さすがにあの格好なら撮影されるのはしゃーないやろ
・街頭で写真を撮られるのも仕事のうち、言うてたんちゃうんか
・撮られたくない舞妓とか価値無くない?
・アキバのメイドも撮影させてくれないよな。観光に来ているのにその地の物や人を撮りたいじゃん。
・舞妓は撮影で仕事してる訳じゃない
写真撮りたかったら、座敷に呼べ
・だよなあ、遠くから撮るくらい良いだろに。
写真を撮るだけで数万円は払えない。
ポスターや雑誌、ネットとかで外国人に京都観光をPRするときは舞子をよく使っている。
京都市内でもいろんなところで舞子をアピールしていた。
これで「写真撮影もダメ!」では外国人も不満だろう。
ことしの夏にリトアニア人の旅行ブロガーを祇園に案内したとき、彼女は「disappointed(失望した)」と嘆いていた。
多くの外国人は「そこに行けば芸者が歩いているのを見れる」とブログに書いているけど、実際には、そこにいたのは浴衣を着た日本人観光客だったから。
Actually this was the part where I was disappointed because many blogs wrote that you can see real geishas walking in this street
Well….no! These girls are just Japanese tourists who are wearing traditional summer kimono – yukata.
でも、こういう人たちを写真に撮るだけなら問題はない。
「一緒に写真を!」と外国人から言われたら、むしろうれしさを感じるのでは?
それと同じぐらいの罪悪感も。
舞子や芸者の知らないところで外国人観光客が勝手に誤解して、“偽舞子”を撮影してハッピーになっているだけなら祇園は平和だ。
でもそのうち、祇園への入場料が取られるようになったりして。
こちらの記事もどうぞ。
> 舞子や芸者には触れな!とでっかく書いてある。
???
「触れないで!」の間違いじゃないですか?「さわれ、な!」じゃ、意味が全く反対になってしまう。
このブログ、おそらく日本語を勉強中の外国人も大勢が見ているだろうから、注意するべきだと思います。
まったくおっしゃる通りで、返す言葉がありません。
ご指摘ありがとうございました。