今回の内容は日本のおもてなしの失敗例。
いま日本で行われているラグビーW杯では、日本の歓迎は各国の代表チームや外国人観光客に好評で、ニュージーランドメディアは日本をホスト国にして成功だったと高く評価している。
でも、失敗したケースもある。
日本は参加カ国のジョージアを激怒させてしまった。
その原因を一言でいえば、相手国への配慮が足りなかったから。
足りなかったというより、絶対に理解しておかないといけないことに対して日本は無知だったから。
でもそのことを書く前に、まずはジョージアという国について簡単に知っておこう。
以前は「グルジア」と呼ばれていたけど、2015年に「ジョージア」へ国名が変更された。
「グルジア」はロシア語由来の国名で国民はこれを嫌ったから。
ジョージアってこんな国
面積:6万9,700平方キロメートル(日本の約5分の1)
人口:390万人(2019年)
首都:トビリシ
民族:ジョージア系(86.8%),アゼルバイジャン系(6.2%),アルメニア系(4.5%),ロシア系(0.7%),オセチア系(0.4%)
言語:公用語はジョージア語
宗教:主としてキリスト教(ジョージア正教)
ジョージアは1991年にソ連から独立した。
ということは、それまではソ連の支配下にあったわけだ。
これだけでも、ジョージア国民がソ連(ロシア)に対して悪いイメージを持っていることは想像できる。
これに加えて、ジョージアは2008年の「南オセチア紛争」(ロシア・グルジア戦争)でロシア軍とたたかい、約2000人の死傷者をだした。
このときジョージアの都市「ゴリ」は大きな被害を受ける。
グルジア政府の報告によると、ゴリのアパートに直撃した爆弾により60人の民間人が死亡した。
8月10日の夜、多数の民間人がゴリ市外へと逃げ出した。翌日までに5万6千人がこの地区から離れた。
住宅の中に飛んできたロシア軍のミサイル
グルジア議会の周辺では、ロシア軍の攻撃をうけて破壊されたゴリの町の写真が並べられている。
南オセチア紛争はジョージアの負け。
その結果、ロシアはジョージア(グルジア)にあった2つの地域の独立を承認し、ジョージアはロシアとの外交関係を断絶した。
その2つの地域(南オセチアとアブハジア)にロシアは軍隊を駐屯させていて、ジョージアとロシアの対立はいまも現在進行形で続いているのだ。
そんななか、ラグビーW杯ホスト国の日本がやらかした。
共同通信の記事(9/29)
ジョージア、「ロシア音楽」の祝福に憤慨=ラグビーW杯
33ー7でジョージアがウルグアイに勝利をおさめたあと、その勝利を祝福するために、大会運営側がジョージアの音楽を流した。と思ったら、スタジアムに流れたのはロシアの音楽だった。
これにジョージアのブレグバゼ選手は「ロシアの音楽が流れた。次はこういう間違いをしないでほしい」、ヘイグ監督は「ロシアはジョージアではない。ジョージアはロシアではない。はっきりさせておく。言語も文化も全てが違う」と怒りをあらわにした。
このとき流れたのはジョージア人が歌ったロシアの音楽だったらしい。
でもこれはW杯ではあってはならないミス。
大会を統括するワールドラグビーもこの失態には平謝りだ。
このニュースに日本のネットの反応は?
・ロシアとの関係がややこしい事ぐらい知っておくべき
・うわー やらかしたな
・使ってほしい曲ももう相手の協会に確認しとかなきゃだな。
・日本で例えるとオジャパメンが流れるみたいなもんか
・これはやった側がバカ
・日本代表の試合でKPOP流すような失態
・先方に確認とかしないのかね
統治した側/された側で考えたら、W杯で試合に勝った韓国が日本の音楽を流されるようなもの。
でも日韓関係ならまだいい。
いまは戦後最悪の関係なんて言われているけど、外交関係を断絶するほどではないし、数は少なくなっても旅行者はお互いの国を行き来している。
10年前に約2000人の死傷者をだす戦闘をおこなった国とは比較にならない。
でも、ジョージアと日本は本当に遠い。
だから普通の日本人がジョージアとロシアの関係で、だれかを怒らせる機会はまずないけど、以下のことは注意しておこう。
香港人や台湾人を「中国人」と思ってはいけない。
スコットランド人、ウェールズ人、アイルランド人を「イギリス人」(イングランド人)と思ってはいけない。「ブリティッシュ」ならOK。
インドネシア人とマレーシア人を「同じ人たち」と思ってはいけない。
カナダ人に「あなたはアメリカ人ですか?」と聞いてはいけない。
これらはすべてボクの失敗経験による。
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ソ連の支配やロシアとの紛争以外にも、グルジアという響きには独裁者スターリンの出身地というイメージが強いため、嫌悪しているそうですね。
以前フィリピンの改名なんかも話題になりましたが、日本を含め自称と他称が違ったり、国名が変わる国があるので注意しないといけませんね。
> ジョージアは1991年にソ連から独立した。
> ということは、それまではソ連の支配下にあったわけだ。
> これだけでも、ジョージア国民がソ連(ロシア)に対して悪いイメージを持っていることは想像できる。
うーん、世界各国で一般的にはそういう見方が多いかと思うのですが。
日本人には、そのように想像するのは実はちょっと難しいかもしれません。なぜなら、台湾があり、さらに韓国や中国があるからです。少なくとも日本の近くの領域(東アジア)を見る限り、旧植民地(併合・占領地を含む)が旧宗主国を見るイメージは、ケースバイケースで良かったり悪かったりと複雑ですよね。
私の場合は映画や小説などで聞き知っているので、ブログ主さんと同じ見方です。
また、言語や文化の面においても、世界の旧植民地と旧宗主国との関係はまちまちです。
わたしもグルジアでなじんでしまったので、「ジョージア」と聞くとアメリカを連想します。
スワジランドも最近国名が変わりましたし、そういう動きはけっこうありますね。
日本の台湾・韓国統治は19世紀の帝国主義時代、ソ連の統治は20世紀の冷戦時代を背景にしています。
ソ連の場合は併合でも植民地支配でもありません。
内容も方法も時代もまったく違うものなので、両者を混同する人は少ないと思います。
それでも日本の統治と重ねる人がいたら、それはもうしょうがないです。