日本が韓国に言いたいことは2年前と変わらず、「約束守れ」

 

日本政府の「韓国軽視」が明らかになった。

韓国紙・中央日報の記事(2019.10.04)

安倍氏、国会演説で韓国にたった1回だけ言及「国同士の約束を順守せよ」

10月4日の所信表明演説で、安倍首相が隣国について触れたのはこれだけ。

「国際法に基づき、国と国との約束を順守することを求めたい」

いまの日本政府が韓国に言いたいことは、「約束を守ってほしい」だけ。
おまけに書けば、この前に安倍首相は「韓国は重要な隣国」とは言っている。でもこれは韓国を重要視したというよりは、約束を守ることの重要性を韓国に強調したかったのだろう。

「重要な隣国」と言いつつ、実はほとんど相手にしていない。
こんな態度に中央日報は、「全体を通じて韓国に関連する言及はこの一行だけだった。」と不満そうだ。

でも「ローマは一日にして成らず」という言葉があるように、何事にもそうなった過程がある。
戦後最悪といわれるいまの日韓関係も、「この一行だけだった」という韓国軽視も、最近の出来事だけを見ていてはそうなった理由が見えてこない。
ということで、安倍首相の考えや気持ちを知るために2年前へダイブしてみよう。

 

2017年1月、NHKの「日曜討論」に出演した安倍首相は慰安婦合意についてこう述べた。

「たとえ政権が代わろうとも、それを実行するのが国の信用の問題だ」
「日本は10億円の拠出を既に行った。次は韓国がしっかり誠意を示していただかなければならない」

ここでいう“誠意”とは、ソウルの日本大使館前と釜山の日本総領事館前に設置された慰安婦像を韓国が撤去することをいう。
話し合いを重ねた末、日韓両政府は2015年に慰安婦問題の解決で合意した。

これは当時の韓国外相(尹外交部長官)の言葉。

今回の発表により,日本政府と共に,この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。韓国政府は,日本政府の実施する措置に協力する。

日韓外相会談

 

日本はこのときの約束をすべて守った。
安倍首相は心からのおわびの気持ちを表明し、日本は韓国に10億円をわたす。
日本のターンはエンド、今度は韓国の番だ。
慰安婦像を撤去しないといけないのだけど、韓国政府は何も動かない。
地蔵状態の韓国に、「しっかり誠意を示していただかなければならない」と安倍首相が迫った。

安倍首相の言ったことはド正論だったから、韓国側は頭をかかえることになる。
韓国は約束をしたけど実行していない。
でも慰安婦像を動かそうとしたら、国民の反日感情が大爆発すること間違いなし。
日本との約束と国民感情にはさまれて身動きのとれない韓国側は、安倍首相の言葉に何も言い返せなかった。

中央日報の記事(2017年01月09日)

外交部は8日、これに反論する公式の立場を出さなかった。外交部の当局者は「いちいち反応するのは適切でない」と述べた。しかし悩みは大きい。

安倍首相「10億円出した」…公式反論もできない韓国外交部

できない約束はしてはいけない。
一度約束したら、「たとえ政権が代わろうとも」守らないといけない。

 

釜山の日本総領事館前に慰安婦像が設置されたとき、韓国外務省(外交部)は「外交公館の保護に関連する国際礼譲および慣行という側面でも考えてみる必要がある」と公式に言った。
これが国際法(ウィーン条約)違反にあたると暗に認めているのだ。

 

「誠意を見せてほしい」という日本に対して韓国は「悩みは大きい」というけど、このときから現在まで、韓国側がしたことは約束違反の連続だ。

慰安婦合意について言えば、慰安婦財団を解散させて合意を実質的に破棄した。
韓国最高裁は1965年の日韓請求権協定をひっくり返して、日本企業に賠償命令をくだす。
国家間の合意を国内法で否定するのは国際法違反。
だから日本は韓国にその状態を是正するよう求めたけれど、韓国政府はまた地蔵になって、日本の要求を無視する。

この点では、「悩みは大きい」と言っていた2年前の韓国のほうが誠意はある。いまのムン政権は逆に日本へ怒っているだけだから。
ムン大統領はことし1月、「約束違反、国際法違反だ」と日本が非難する徴用工訴訟に触れて、「日本政府がもう少し謙虚な姿勢を持つべきだと思う」などとわけのわからないことを言った。

安倍首相が2年前、「次は韓国がしっかり誠意を示していただかなければならない」と言ったとき、「加害国の日本が被害国に誠意を求めるとは何事か!」と韓国側は猛反発。
約束を守った人間が守らない人間に「誠意を見せてほしい」と言うのは当然だと思うけど、韓国には通じない。
2017年から現在まで韓国は約束違反を重ねているのだから、本来なら日本はもっと怒っていい。

10月4日の所信表明演説で、安倍首相が「国際法に基づき、国と国との約束を順守することを求めたい」と簡単に言ったのは、上げてもない足を取られるのを避けるためだと思う。
当然のことを言っても、韓国の都合のいいよう解釈されて非難されるから。
*「日韓請求権協定の違反状態を放置し、信頼関係を損なう行為を続けている」とは言っている。

2年前もいまも、日本が韓国に言いたいことは「約束を守ってほしい」だけだ。
そう言わせることを韓国がしてきた結果だけど、「『韓国冷遇』が目立った」(中央日報)と不満を言う。
因果応報や自業自得をこれほど受け入れない国も珍しい。
本当に付き合いのむずかしい隣人だ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。