【ヨーロッパの食文化】クリスマス・イブはウナギだね

 

先月9月はじめ、まだまだウンザリするような暑さの中、2人のリトアニア人を浜松の「うなぎパイ工場」へ連れて行った。
1人は浜松に住んでいて、もう1人は旅行で日本へやってきた。

*日本でこの国のことを知ってる人は消費税より少ないだろうけど、第二次世界大戦中、6000人ものユダヤ人難民を助けた杉原千畝はリトアニアのカナウス領事館で「命のビザ」を書きまくっていた。

スウェーデンに近いリトアニアは夏でも涼しくて、8月の平均気温は17度ほど。だから日本の夏はリトアニア人にとっては毎日が拷問だったらしい。(特に今年はひどかった)
そんなムシムシ地獄から逃れることができて、かつ浜松らしい観光スポットはどこか?と考えると「うなぎパイファクトリー」はベストアンサーのひとつ。

 

なぜかリトアニア人はうなぎパイのCMをずっと見ていた。

 

日本人はむかしからウナギを食べているけど、リトアニア人はどうなのか?
でもそのまえに、ウナギってヨーロッパにいたっけ?

リトアニア人の答えはイエス。
古代ローマ人もウナギを食べていたという記録があって、この食習慣は昔からヨーロッパにあったと言う。

 

 

ネットで調べてみたら、「ヨーロッパウナギ」は欧州全域(ピンクゾーン)に生息していた。
リトアニア人の話も正しく、ヨーロッパ人とウナギの付き合いは紀元前から始まっている。

アリストテレスは地中からヨーロッパウナギが生じると信じていたほか、古代ローマの博物学者であった大プリニウスは、体から剥がれ落ちた皮膚の破片から稚魚が生まれると考えていた。

ヨーロッパウナギ

ヨーロッパウナギ
日本のウナギとの違いがわからない。

 

日本でウナギは夏の食べ物だ。
土用の丑の日に栄養価の高いウナギを食べ、その精力を自分のものにして、日本人は夏の暑さを乗り越えてきた。

リトアニアではいつウナギを食べるか聞いたら、「クリスマス・イブによく食べる」とのこと。
だよね。ウナギといったらクリスマスだよね。ってマジか?
イエス・キリストとウナギの関係がさっぱり見えてこない。
精力をつけてクリスマスを盛大に祝うってこと?

その理由を聞いたら、クリスマス前日には肉食をしないというのがキリスト教(カトリック)の伝統だという。でも水の生き物はその範囲外だから、海や川にすんでいるものはOK。
だから人びとはクリスマス・イブによくシーフードを食べていて、ウナギもそのときに食される。
だからウナギといえば、「クリスマス・イブの食べ物」というイメージがある。

この断食はカトリックの伝統的な考え方だから、リトアニア以外にもヨーロッパで広く行われている。

2人のうちひとりはイタリアに住んでいて、イタリア人もクリスマス・イブには同じようにシーフードやウナギを食べていたという。

イタリア在住の日本人フードライターが、それがイタリアの伝統と書いている。(2017年12月19日)

中部イタリアの川に生息している鰻は、簡単に手に入る栄養満点な食材として、肉の代わりに伝統的にクリスマスイブの食卓にのぼっていました。

クリスマスイブはチキンでなくウナギ! イタリアでの伝統的な食べ方

ポーランド人やスウェーデン人もクリスマス・イブにはウナギを食べると話していた。

 

では、なんでカトリック教徒はクリスマス・イブに肉を食べないのか?
その理由は彼らも知らない。
イブの日にシーフードやウナギを食べるのは昔からの習慣だから、なんでそうなったのか考えたことがない。

昔は肉が貴重品だったからイブは肉を用意する日で、クリスマスにそれを食べていたからかもしれない。
厳かな気持ちでクリスマスを迎えるために、前日は質素な食事をしていたせいかもしれない。

2人はそんな想像をめぐらせる。

 

どうやらこれは、キリスト教のアドベント(待降節:イエス・キリストの誕生を待ち望む期間)に関係しているらしい。

東方教会で、1月6日の公現祭(降誕日でもある)に洗礼を受ける予定の者が洗礼を受ける予定の者が、その日のために、断食と、悔改めを行う準備期間であったためで、それが、西方教会においてクリスマス前の習慣となったのである。

アドベント

 

「土用の日はウナギだろ」という食文化で生まれ育ったボクには、こういうヨーロッパ(カトリック)の食文化に違和感を感じる。と言ったら「おい、ちょっと待て」とリトアニア人。
クリスマスにフライドチキンを食べるほうがリトアニア人には謎。その理由がウナギ以上にわからない。
まあ、そうだわな。
ヨーロッパの伝統を魔改造した日本人に、「ヨーロッパのクリスマスって不思議」なんて言う資格はないだろう。

 

 

こちらの記事もどうぞ。

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

ヨーロッパ 目次 ②

ヨーロッパ 目次 ③

ヨーロッパ 目次 ④

 

2 件のコメント

  • ヨーロッパと鰻の組み合わせはけっこう意外ですよね。
    しかし、季節で言えば本来の鰻の旬は初冬ですからクリスマスに食べるのは良いかもしれません。

    土用の丑の日はもともと「う」で始まる物を食べる日で、鰻が定番になったのは江戸時代、平賀源内が夏は売り上げが落ちる知り合いの鰻屋の為に宣伝したことから定着したと言われますね。

  • 「鰻」と漢字で書くとヨーロッパとの意外感が強くなりますね。笑。
    平賀源内はエレキテルやら食文化など、いろいろものを作りましたね。多才というか好奇心旺盛というか。
    鰻って、冬が旬だったんですね。浜松育ちですが、それは知りませんでしたよ。

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。