【逃亡犯条例】香港のデモ、原因は「台湾での殺人事件」だった

 

香港という地名は、明の時代、このあたりに植えられていた香木に由来するという。
当時はさぞかし良い香りが港にただよっていたのだろう。

20年ぐらい前に香港を旅行したときには、街を歩くといたるところからエッグタルトのあま~いにおいがただよってきた。
ボクにとってはあれが香港の香り。

でも、タイムゴーズバイ。
現在の香港の街には、6月から続く反政府抗議活動で催涙弾の煙がただよっている。
警官隊とデモ隊との衝突は以前からあったけど、11月になってとうとう犠牲者をだす惨事に発展。
デモに参加していた男子大学生が建物から落ちて、その後、死亡が確認された。
香港の平穏は遠くになった。

NHKニュース(11/8)

一連の抗議活動で死者が出たのは初めてで、政府や警察に対する市民の反発がさらに強まることが予想されます。

香港 抗議活動で初の死者 警察の強制排除中に転落の大学生

この学生は警官隊が発射した催涙弾を避けようとして転落したといわれている。

 

日本の反応をみると、ここまでの大事になると予想していなかった人が多い。

・逃亡者引き渡し条例廃止されたのになにやってんだ?
・ww3の幕開けが近づいてるの?
・しかし、これもちょっとどっちもどっちになってきたな
・暴徒化が更に進むな
・デモ隊も着地点見失っててマジで武力鎮圧以外では終わらないんじゃねえの
・まだやってたのか

このデモの原因は「逃亡犯条例」の改正にある。
いま香港は、中国本土やマカオ、台湾などと犯罪者の引き渡し協定を結んでいない。
だから容疑者が香港から、これらのところへ移送されることは現状ではない。
逃亡犯条例が改正されると、容疑者を中国本土へ送ることができるようになる。
そうなったら、中国に批判的な人が容疑を”でっち上げられて”、中国へ引き渡される可能性がある。
そんなワケで、「逃亡犯条例」改正に反対する人たちが抗議活動をはじめたわけだ。

くわしいことはここをどうぞ。

2019年逃亡犯条例改正案

 

実際どうなるか分からないけど、「中国政府を信用しろ」というのはかなりの無理ゲー。
中国が気にいらない人物を本土へ送ることで、香港の表現の自由や民主主義が失われるかもしれない。
だから「造反有理」で、このデモにはそれなりの”大義”があるから個人的には支持していた。
香港政府がデモを暴力的に押さえつけることのはどう見てもよくない。

*造反有理とは「造反に理有り」(謀反にこそ正しい道理がある・上の者に反抗するのには理由がある)といった意味。
中国の文化大革命で紅衛兵がこのスローガンを叫んでいた。
くわしいことは造反有理を。

 

でも一か月ほど前、日本へやって来た知人の香港人から話を聞いたら、このデモの印象が大きく変わってしまった。
これからそのことを書いていこうと思う。

まず逃亡犯条例が改正されそうになった原因は、香港人が台湾で起こした殺人事件にある。
2018年に台湾を旅行していた香港人カップルの間でケンカがはじまって、男性が女性を殺害して遺体を草むらに放置する。
その後、男はひとりで香港へ帰ってしまう。
これで始まった。

香港は台湾と犯罪者の引き渡し協定を結んでいないから、この男性は香港にいる限り、殺人罪に問われることはない。
台湾警察は手を出せないし、香港警察は香港の法しか適用できないから。
ただこの男は香港のATMで女性の現金をおろしたことがわかったから、窃盗罪で香港警察に捕まった。
でも殺人に比べれば微罪だから、数か月の禁固刑ですんでしまう。

それに納得できない女性の身内が、この男は自分の犯した罪をつぐなうべきだと訴える。
それで香港政府は台湾への容疑者引き渡しを可能にするよう、逃亡犯条例を改正しようとした。
でもそれが中国政府に利用される懸念から抗議デモが発生し、ついに死者をだす。

AFPの記事(2019年10月19日)によると、この男は台湾に戻って罪の裁きをうける覚悟らしい。

容疑者は「被害者の遺族に対し深い後悔の念を示すとともに、香港にこのような問題を引き起こしたことを申し訳なく思っている」と話した牧師は、容疑者の決断を「勇敢」と形容した。

香港デモ発端の殺人事件容疑者、台湾での自首を示唆か

逃亡犯条例が改正されなかったら、犯人が”自発的に”現地へ戻らない限りは罪に問われないのだ。

 

話はそれるけど、浜松でもそんなことがあった。
1999年に市内で女子高生がブラジル人の運転する車にひかれて死亡する事件が起きたけど、そのブラジル人はすぐに帰国してしまう。
日本はブラジルと引き渡し協定を結んでいなかったから、両親は”泣き寝入り”を強いられた。

 

 

ブルース・リーの名言に倣ったスローガン「Be Water(水のようになれ)」から、水革命(Water Revolution)、流水革命、夏水革命、もしくは時代革命とも呼ばれる。

2019年香港民主化デモ

 

ボクは「台湾での殺人事件→逃亡犯条例の改正」までの動きを把握してなくて、香港人から話を聞いて初めて知った。
使い方が正しいか分からないけど、目からウロコ。
外で犯罪を犯しても、香港に戻ってきたらセーフというのは確かにおかしい。
この男は自分の犯した罪と向き合って、社会的制裁をうける必要がある。
そのためには、香港政府が逃亡犯条例を改正しないといけない。

でも「香港民主化デモ」というマスコミ報道を見ると、その表現に引きずられて、香港政府は悪いことをしているような印象をうける。
今回話を聞いた香港人はこの条例改正には賛成の立場だ。
改正されたところで法に触れるようなことをしないから、自分にはまったく関係ないと言う。
それに以前、こんなことがあった。
マカオでかなりの額の賄賂をうけとった香港人が香港へ逃げ帰ってきた。誰も手出しできないから、そいつはいまでも”のうのう”と生活しているという。
こんなことは前からあったから、その香港人は、香港政府が新たに引き渡し協定を結ぶことには反対しない。

こういう背景を聞くと「造反有理」だけど、改正もまた「有理」だ。
それまではデモ隊を支持していたけど、いまはちょっと違う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。