【生まれか育ちか?】香港人から見た中国人と日本人の“民度”

 

中国を旅行していたとき、鉄道駅やバスステーションでこんなポスターをよく見た。

 

 

この「文明」というのは、マナーを守って行動しましょう的な意味。
しっかり列に並びましょう、走ってはいけませんと訴えている。つまり、まだ乗客はこのレベルに達していないということ。

まえに香港人と話をしているとき、中国人のマナーの悪さが話題になった。
香港には中国本土からたくさんの人が押し寄せていて、中国人のマナーの悪さが香港人のひんしゅくと怒りを買っている。
でも、話を聞いていて疑問が思い浮かんだ。
香港人も中国人も同じ人種なのに、どうしてそんなに違いがついたのか。
それは慢心によるものか、それとも環境…。

その香港人の考えでは、原因は生まれには関係なくて生活環境や社会の豊さの違いによる。
”民度”は後天的なもので、生まれた後の教育や社会環境によってきまる。
中国ではずっと貧しい時代が続いていて、食べ物が手に入らなくて苦労した記憶のある人がいまでもたくさんいる。
とくに1970年代の文化大革命のころ、庶民は本当に苦労した。

文革とは毛沢東が主導した政治・権力闘争のこと。
これによって中国社会は大混乱におちいった。
高校世界史では超重要事項だからおぼえておこう。

文化大革命

全国的に社会機能は混乱し、流血の武闘によって数百万人の死傷者が出たとされる。(中略)80年、中国共産党による歴史決議で文化大革命の路線は完全に否定された。

「世界史用語集 (山川出版)」

 

ウィキペディアには、文化大革命によって「1億人近くが何らかの損害を被り、国内の大混乱と経済の深刻な停滞をもたらした」という説明がある。
話を聞いた香港人の両親は文革時代の中国にいて、生活苦から香港への移住をきめた。
本人は香港生まれで両親は中国出身だから、マナーや礼儀の差を環境の違いに求めたのだろう。

 

アメリカ人がこれを見て、あまりの礼儀正しさに感動した。

 

さて話は変わって、これは読売新聞の記事(2019/11/07)

「始発駅なのに座れない」折り返し乗車に苦情続々…トイレに身を隠す乗客も

一日の始まりを疲労から始めたくない。
通勤・通学の電車に乗るなら、なるべく座りたい。

そう思うのはみんな同じだけど、埼玉高速鉄道を利用する人の間でいまズルが横行している。
まず下りの電車に乗って、上り方面の始発駅に行く。
そこで、折り返して出発する電車にわれ先と乗り込んで座席を確保してしまう。

この行為に始発駅から乗る人たちから苦情が寄せられて、埼玉高速鉄道は対応を迫られているという。
鉄道会社側が午前7~8時半の時間帯で不正乗車をチェックしたところ、一部埼玉人の”民度”が浮き彫りになった。

定期券などの有効区間外の運賃を支払わずに乗車していた駅利用者は、169人中75人にのぼった。駅員に見つからないようにトイレや駅構内のコンビニに身を隠す乗客もいたという。

 

乗客は「座りたくてやってしまった」と言うけど、これは無賃乗車になるから違法行為。
でもこんな人が続出しているから、警察もいちいち対応できない。
鉄道会社は「区間外での乗車は不正になることをもっと呼びかけなければならない」と言う。
これでは中国で見たポスターと変わらない。

こうした“民度”の低下は、駅周辺地区の人口増加が原因とみられる。
このあたりは2000年ごろから道路整備や開発が進められて、商業施設やマンションなどが建てられた。
その結果、人口は3年前と比べて約5000人増の1万1800人となる。
いきなり住民が4割も増えたことで、「1~3駅先くらいの沿線沿いの通勤・通学者が最寄り駅から座れなくなり」、先ほどの裏ワザ(違法行為)をする人が増えたのではないという。

駅員に見つからないよう、トイレに身を隠すというのは涙ぐましいバカだと思う。
でも、通勤電車を利用しないボクには通痛の苦しみが分からないから、その気持ちを理解する人は多いかもしれない。
ネットの声を見ると、乗客のマナー違反より電車の混雑を問題視する人が多くてビックリした。

・日本人の民度の低さが年々浮き彫りになってきたね
・そもそも混雑しているのが悪い
早く長編成化しないと
・奴隷船みたいに4階建てくらいにしろよ
・もうインドみたいに屋根とかの乗車も認めてあげて
・始発駅だから座れて当然というほうがおかしいだろ
・日本の適正人口5500万に説得力があるな

 

不正乗車をする人たちは「席に座れない」という苦しみから逃れたい一心で、トイレに身をひそめているのだろう。
それがなければ、他の全国の日本人と変わらないはず。

先ほどの香港人は日本に3年間住んでいたから、日本人のことはよく分かる。
道を渡ろうとする人がいたらドライバーが車を停めるという、香港では見たことない光景を日本ではよく見た。
だからその人の中での“民度の高さ”は、「日本人>香港人>>>中国人」という順になっている。
でも、生まれたときはみんな同じで、その後の環境で日本人・中国人・香港人になるというのがその人の意見。

文革時代の中国と埼玉県のこの地区を比べるのは不可能だけど、外国人が賞賛する日本人の礼儀正しさやマナーもゆとりのある環境があるからこそで、生まれながらのものではない。
心の豊かさは最低限の物質的な豊かさがないときっと無理。

 

 

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4 件のコメント

  • > 香港人も中国人も同じ人種なのに、どうしてそんなに違いがついたのか。

    ブログ主であれば当然知っている知識であると思いますが、「人種」と「民族」をきちんと区別する方がよいと思いますね。「人種」という言い方を使うならば、通常、香港人も中国人も日本人も「黄色人種」「アジア人種」に分類され、同じです。また「人種」という分類は、「差別」と結びつけて非難されやすいこともあるので、なるべく使わない方がよいと思います。なお「民族」も差別と結び付けられることはあるが、「人種」に比べてずっと少なくて穏やかです。
    つまり、raceよりもethnic groupの方が望ましいです。(英語だとやや硬い表現になってしまいますが。)

    香港人と大陸中国人は同じ「中国人(中華民族)」ではあるが、日本人はそれとは異なる民族です。

  • この香港人は、中国文化圏の人間としては自分を中国人と思っていますが、自己紹介では「中国人」ではなくて「香港人」と言います。
    「チャイニーズ」と言われると必ずそれを訂正します。
    概念としてはこれが人種と民族の違いのように思いました。

    日本人と中国人との人種については、この場合はDNAのことです。

    朝日新聞の記事「縄文人の核DNA初解読 東アジア人と大きく特徴異なる」にこう書いてあります。

    「縄文時代に日本列島で狩猟採集生活をしていた縄文人の遺伝的特徴は、東アジアや東南アジアの人たちとは大きく離れていることがDNA解析でわかった。」

    これは民族より人種の違いといったほうが正確でしょう。
    「人種」という言葉は差別を生みやすいので、この言い方を避ける人はいます。
    ただ外国人と話していると(特にアメリカ人)、白人や黒人、ヒスパニックなどの人種の違いを前提としていることがよくあります。
    フェイスブック社は社員の人種構成比を発表したり、スターバックスは「レース・トゥゲザー」というキャンペーンをしました。
    人種について話をして、違いを理解して尊重しようとするのはいいことです。
    人種をタブー視するのは個人的にはよくないことだと思います。

  • ブログ主さんの言うことには矛盾があるのでは?

    >外国人と話していると(特にアメリカ人)、白人や黒人、ヒスパニックなどの人種の違いを前提としていることがよくあります。

    白人、黒人、ヒスパニックが人種の分類であるならば、その分類に相当するのは、アジアン、あるいはモンゴリアンという概念であって、チャイニーズやジャパニーズではないでしょう。なぜなら、チャイニーズとかジャパニーズとは、文化や言語・宗教などの違いにも基づく、民族の分類であるからです。「自分はチャイニーズではない」と主張するその香港人は、「チャイニーズという民族ではない」と主張しているのです。チャイニーズを、raceの一つとは考えていないんじゃないですか?(本人に聞いてみないと分かりませんが。)

    DNAの話でも同じです。白人内でも、黒人内でも、ヒスパニック内でもDNAがさほど一致しているわけじゃない。「東アジア人の多数派に比べて日本人の隔たりが大きい」とのと同じ程度には、彼等同士だってDNAの違いはあると思いますよ。なおDNA間の「距離」について学術的に正確な考え方は、遺伝学などの専門書をご参照ください。

  • 前者については人種による差別はダメだけど、それを話題にすることはいいということです。
    肌の色による分類のほかにDNAによる分類があります。
    人間とチンパンジーのDNAは99%一致するといわれます。
    さずかな差異が決定的な違いになります。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。