反日愛国は無罪というより無敵:違法が黙認される韓国社会

 

「今年の夏ほど反日感情が高まったことはなかったように思う。」ということばで始まる韓国人記者のコラムには共感するところが多かった。

中央日報のコラム(2019.11.22)

日本製徴用労働者像と「日本人モデル」論争

話し合いを拒否するなど韓国側の不誠実な態度から信頼関係が失われて、日本は対韓輸出の管理強化をおこなった。
それに対して文大統領は「李舜臣将軍と共に12隻の船で国を守った」、「二度と日本に負けない」と国民の心に反日の炎を燃やして対決姿勢をむき出しにする。

李舜臣(イ・スンシン)の話は豊臣秀吉の朝鮮出兵のとき、12隻で日本軍330隻の船を打ち負かしたという「鳴梁海戦」のこと。
でもこの戦いに対する見方は日韓でぜんぜん違う。
少数で日本を撃退したという16世紀の故事を誇示するところに、いまの韓国の限界を感じる。
半導体製造を精神力でカバーできるはずもなく、それで韓国の記者も「今年の夏ほど反日感情が高まったことはなかった」となつかしくあきれている。

でもこの記者が問題視しているのは、8000万ウォン(約740万円)かけて市民団体などが大田市庁前の公園に設置した労働者像だった。
いま韓国経済はかなり悪化しているけど、この全額が市民からの寄付というからすごい。
反日は不況にも強かった。

この徴用工の像は「モデルは日本人ではないか?」という論争があって、韓国で物議をかもしている。
日本の新聞に掲載された日本人労働者がモデルということでまず間違いないのだけど、像を制作した人は「特定の人物をモデルにしたものではない」と主張して、名誉毀損と損害賠償訴訟を起こした。
根拠を示して対抗することなく、裁判に訴えて相手の主張を封じるというのは追い詰められた証拠。

話を銅像に戻すと、「残酷だった歴史を繰り返さないために 大田市民の思いを集め、この碑を建てます」と立派な文が刻まれているこの銅像は、残念ながら違法だ。
公園に像を建てる場合は役所に申請して許可をもらわないといけない。
これは日本でも同じで、公共の場所に私人が勝手に造形物を設置することが許されるはずない。
でもこの市民団体の場合は、像を建ててから申請するというでたらめなことをしている。

まず行為をしてから、あとで整合性をとろうとする態度は韓国社会の全体でみられる。
韓国政府は慰安婦財団を解散させたのに、2015年の慰安婦合意は破っていないと強弁する。
きょねん韓国最高裁が徴用工訴訟で日本企業に賠償を命じたことで、国際法違反の状態がいまも続いているけど、韓国政府はそれを何とか正当化しようとしている。
慰安婦問題でも徴用工問題でも自分勝手なことをしておいて、「起きてしまったことは仕方ない」とあとから日本にそれを受け入れさせようとするからトラブルがなくならない。

 

この労働者像も徴用工訴訟問題にかかわるもの。
でも、「国際法違反」と主張する日本に像を設置しても話は噛み合わないし、なにも問題解決にはならない。
これは「反日無罪」といういまの韓国の空気を象徴していて、違法状態であるにもかかわらず社会的に黙認されている。

問題提起する人も特にいない。管轄自治体は「撤去対象だが保留している」と述べた。違法の徴用労働者像はソウル・竜山(ヨンサン)駅などにもある。労働者像が新たなトーテム(神聖なシンボル)になったような雰囲気だ。

日本製徴用労働者像と「日本人モデル」論争

 

この像は「反日と愛国」を示すものだから、これを撤去しようとする行為は国民情緒に反する。
国民感情を害すると、業務に支障がでるほどの抗議が役所に殺到するから、この「神聖なシンボル」には役所も法律も手を出すことができない。
有罪でも誰も罰せないという意味では、反日愛国は無罪というより無敵。
こんな状態だから韓国は、法が支配する法治国家ではなくて「情治国家」とか「(法の)放置国家」なんて言われてしまうのだ。

でもこの記者のようにそれを嘆く人もいる。

反日はもちろん、「克日」しようというのに反対する国民はいないだろう。だからといって反日のために違法行為まで容認しては困る。

 

韓国寄りのメディアは、日本の嫌韓と韓国の反日が同じぐらいひどいと報じるけど、日本で法律違反の嫌韓行為が黙認されている例を聞いたことがない。
韓国の反日のほうがはるかに深刻で、もはや社会の常識になっている。
それを「容認しては困る」と言える人が本当の愛国者だけど、そういう人はきっと報われない。
こういう意見はいままで何度も見てきたから。
韓国社会でこれは「トーテム(神聖なシンボル)」をけなすこと、「神に逆らう行為」になるから言った人間がつぶされる。
だから結局なにも変わらない。

ただ最近の韓国で日本バッシングはあまりに激しいから、それを不安視する声が増えてきたのはたしかだ。

これは朝鮮日報のコラム(2019/11/23)

韓国では日本を客観的に見ようと努める記事が消えている。(中略)「とにかく黙って日本たたき」記事が量産される構造が定着した。

英BBCが日本を愛する理由

 

労働者像は全国各地で建てられているのに、物価でいえば日本と同じか少し安い韓国で、設置費の740万円が集まってしまう。
この集金パワーが「神聖」を支える要素になっている。
法を超える正義を行ってさらに儲かるのだから、やっている側にはこれをやめる理由がない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。