【塩の日】サラリー、サラダ、サルサの語源は「塩」だった件

 

きょう1月11日は「塩の日」。
ということで、今回は塩についての話を書こうと思う。
サラリー(給料)、サラダ、サルサ、ソースといった言葉の語源は一体なんでしょう?ということ。
まあ見出しにあるんですけどね。

 

 

ではまずは、日本で1月11日が塩の日になったワケを知っていきましょう。

ときは戦国時代、永禄10年(1567年)にさかのぼる。
このとき今川との同盟を破棄した武田信玄は今川と北条から経済封鎖(塩留め)をくらって、領内に塩が入ってこなくなってしまった。
生活必需品の塩がなくなって、困り果てた信玄に救いの手をさしのべたのは、なんとライバルの上杉謙信だった。
「おまえはオレが戦って倒す。だから、こんな卑怯な手段で死んではいけない」という中二病っぽいこと言って謙信が塩を送る。
待ちに待った塩が越後から松本に到着した日が1月11日だった。

たとえ敵であっても、困っている人間は見捨てられないという上杉は、むしろ出木杉君。
これが「敵に塩を送る」の由来になったのだけど、実際にはこの美談が史実かどうかは分からない。

とにかくこのことから、1月11日には塩市(現在のあめ市)が開かれるようになって、「塩の日」に制定されたのだった。

 

軍神、越後の虎、越後の龍と呼ばれた伝説的武将・上杉謙信

 

人間は塩がないと生きていけない。
21世紀の科学技術をもってすれば、砂糖や酢にかわるものは作り出せるけど塩だけはダメ。
人体に必須の栄養分で、代えのきかないのがソルト。

はるかむかし塩は貴重品だったから、古代ローマ時代には兵士に給料として塩が支給されていた。
ラテン語で塩は「sal」と書き、これが英語の「salt」になって、のちに給料を表す「salary」という言葉となった。
だから、和製英語のサラリーマンも元をたどると古代ローマの塩にいきつくのだ。

と、そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
でも最近、大学で歴史を専攻したアメリカ人に「あ、それチョット違う」と言われてしまった。
彼いわく、古代ローマで兵士に塩を現物支給していたのは初期だけで、それでは持ち運びに不便だから、やがて塩を買うお金を渡すようになる。
「え?」と思って英語版ウィキペディアの説明をみてみたら、Salaryの語源は「Salarium(サラリウム)」とある。
サラリウムとは「originally money given to soldiers with which to buy salt」(塩を買うためのお金)のことで、これがいまの「サラリー」になったという。
だから「salt」から「salary」になったわけではない。

 

 

人間にとって根源的なもので、長い付き合いのある「sal」からはいろんな言葉が生まれた。

生野菜に塩をかけて食べることから「サラダ(salad)」が誕生。古代ローマの人たちは生野菜を腸の働きを整える「薬」のようなものと考えていた。
初代皇帝のアウグストゥスは病気になったとき、レタスを食べて助かったというホントかウソかよく分からない話もある。

スペイン語の「サルサ(salsa:調味料)」、英語の「ソース(sauce)」「sausage(ソーセージ)」「サラミ(salami)」も元をたどるとラテン語の「sal」にいきつく。
ソースはフランス語でもドイツ語でも「sauce」でスペルは同じで、語源はラテン語の「SAL(塩の供給)」だとブルドッグ・ソースのホームページに説明がある。

日本のネットには兵士(soldier)もsalから生まれた言葉と書いているサイトもあるけど、英語版ウィキペディアには「Some people even claim that the word soldier itself comes from the Latin sal dare (to give salt)」とあるから、そう主張する人もいるぐらいで実際のところは分からない。
なお日本語版ウィキペディアには「後に塩を買う為の俸給がソリドゥス金貨で支払われるようになり、ソルジャー(英語: soldier)の語源となった。」とある。

 

 

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3 件のコメント

  • >21世紀の科学技術をもってすれば、砂糖や酢にかわるものは作り出せるけど塩だけはダメ。
    ???
    どういう意味なのか分かりませんね。反対じゃないですか?
    物質の化学構造からすると、塩(塩化ナトリウムNaCl)、酢(酢酸CH3COOH)、砂糖(唐類の化学構造式は複雑)の順に複雑になっていきます。そのため、食塩は(一部の料理用岩塩などを除けば)現在ではほとんど化学合成された純粋NaClであり、食用酢は穀物から醸造されているけど工業用酢酸は全て化学合成品です。しかし糖類だけはまだ植物の光合成を代用するような化学合成が人間にはできなくて、砂糖の類似物として人工甘味料が合成できるだけなんですが。

    >サラリウムとは「originally money given to soldiers with which to buy salt」(塩を買うためのお金)のことで、これがのちの世でサラリーとなったという。
    これは知りませんでした。私もてっきり、給料の代わりに塩を現物支給されているものだとばかり思ってました。
    ですがよく考えてみると、貨幣経済が早くから発達していた古代ローマにおいて、そんなことあるはずがないですよね。

  • 塩については、「化学者たちは何十年にも渡って美味しい塩の代替を作ろうとしてきましたが、それは絶対不可能で」という専門家の説明をご覧ください。

    「人工甘味料は作れても、“人工塩味料”は作れない」
    https://logmi.jp/business/articles/320579

    軍隊で一度に大量の塩をわたされて家まで持って帰るのは面倒ですね。ローマ帝国内に塩の交換場所がいくつもあって、必要に応じてもらっていたと思います。
    中国では塩を政府の専売にして密売したら処刑しました。
    インドでもイギリスが塩の製造を禁止しましたが、独立運動でガンディーがそれを破って塩をつくりました。
    日本は四方を海に囲まれているせいか、塩の密売や密造で大問題になったという話は聞きません。

  • 「人工甘味料は作れても、“人工塩味料”は作れない」

    なるほど。意味が分かりました。
    つまりは、塩化ナトリウムは化学構造式が単純でそれゆえ工業的に生産するのも容易だけれども、「それがなぜ塩辛いという味覚を発するのか?」未だに解明されていない。したがって、塩化ナトリウムを代替できるような「人工塩味料」は今もって作ることが出来ないと、そういう意味だったのですね。
    確かに、砂糖(糖類)は化学構造式が複雑であるだけに、完全に同じものを工業的に人工生産することはできないけれども、人間に「甘味」を感じさせられるような化学的な類似物(人工甘味料)は作り出せますね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。