このまえソウルに住んでいる韓国人と話をしていたとき、彼の口から「クッポン」という言葉が飛び出した。
日本ではほとんど知られていないけど、クッポンとは韓国の伝統的な鍋料理のこと。
ではなくて、韓国語の「国家(クッカ)」と「ヒロポン(覚せい剤)」を合わせて作ったのが「クッポン」で、行き過ぎた愛国心を皮肉る言葉だ。
「韓国すげー」という報道を見て愛国心が刺激されて、「韓国はなんてすばらしいんだ!」、「韓国人は優秀なんだ!」と、まるで覚せい剤を打ったかのようなすごくいい気分になる。(ボクは経験がないから知らないけど)
そして、その快感がやめられなって何度もそれを求めてしまう。
言ってみれば「ホルホル中毒」ですね。
日本でも似たような“症状”はあって、ネットを見るとクッポンを「ネトウヨ」「愛国ポルノ」と説明するサイトもある。
韓国では、やめられないほどおいしいという意味で「大麻キムパッ」というのり巻き(キムパッ)がある。
覚せい剤や大麻になぞらえて言葉にする感覚が日本人とは違う。
行き過ぎた愛国心をやゆする「クッポン」という言葉は、2013年ごろから韓国で使われ始めたらしい。
全国紙の朝鮮日報が記事(2013/09/01)でクッポンについて、「過度に国家を自慢しようとする状況を皮肉ったものだ」、「韓国を無条件で賛美する様子をあざ笑っているのだ」と説明している。
韓国に来た欧米の有名人に「あなたは『江南スタイル』を知っていますか?」と聞いたり、キムチを食べさせたりするといったことが、視聴者から“韓国文化の押し付け”に見えて「クッポンだ」と批判する人がいた。
そんな批判があっても韓国人がクッポンを好きな理由を韓国の大学教授がこう分析する。
「韓国人はキムチのようなブランドを通じ、優秀な社会的遺伝子を持っているという点を他者に認めてもらおうとする傾向がある。その対象は概ね、強大国やその国から来た人たちだ」と指摘した。
韓国のネット社会に噴出する愛国過剰とその反作用
たしかにこういうことをする相手は欧米先進国の人間が多い。
クッポンという「愛国覚せい剤」をほしくなる理由は、まさに「優秀な社会的遺伝子を持っているという点を他者に認めてもらおうとする傾向がある」ため。
「韓国人(韓民族)はすばらしい。優秀だ」ということを外国人に認めてほしいのだ。
根底にあるのは承認欲求。
日本人の識者だとこうやってズバリと指摘するのはたぶん難しいし、新聞も「優秀な社会的遺伝子」なんて言葉を使いたがらないだろう。
でも韓国人は韓国人に遠慮がないから(反日愛国の国民情緒には過剰に配慮するけど)、こんな感じで的確に理由や対象を指摘することができる。
自分の愛国心に酔ってしまう人間は日本にもあるけど、「キムチのようなブランドを通じ」という発想は韓国独特だ。
この記事のはじめに出てきた韓国人は韓国では最近、こんな「クッポン報道」が目立つようになったと言う。
「日本製品は買わないし、日本へは行かない」というノージャパン運動によって、日本製品の売り上げは落ちて訪日韓国人も激減した。
韓国国民の団結力によって、日本の企業は打撃を受けて観光地は悲鳴を上げている。
そんな報道は自分たちの力や愛国心を刺激して、たしかに気持ちいいけど、そういう情報が多すぎて不安もあるらしい。
ちなみに彼は12月に日本へ旅行に来ている。
ノージャパン運動とは一線を置く、クールじゃないけどわりと客観的な韓国人だ。
ハリス駐韓米大使が日系人という理由で、いま韓国社会から猛烈にたたかれていてアメリカ側が「人種差別的」と非難している。
この背景にも行き過ぎた愛国心、クッポンが影響しているように思う。
外国人に韓国の文化や歴史をなかば押し付けるように伝えることを、韓国では「クッポン」と嫌う人がいる。
でも、韓国大使館に勤めていた韓国通の日本人が、その姿勢には見習うところがあるという。
韓国人は非常に熱心な愛国者なので、外国人にも韓国語や韓国文化を積極的に教えてくれます。そして、教えてくれたことを吸収すると「お前も韓国人らしくなった」と褒めて(?)くれます。(中略)外国人に自国語や自国文化を積極的に教えるという姿勢は、いい迷惑の場合がなきにしもあらずなものの、やはり積極的に見習いたいものです。
「つきあいきれない韓国人 (渡辺晶平)」
自国の文化や歴史を学んで外国人に伝えるというのは、基本的にはいいクッポン。
こういう姿勢は日本人も参考にするべきだ。
こちらの記事もどうぞ。
コメントを残す