民度は急に変わらない:日本でまたトイレットペーパー騒動

 

新型コロナウイルスの流行を受けて、北海道知事が道民に異例の「緊急事態宣言」を発令して外出をひかえるよう呼びかけた。

知り合いのタイ人がそんな北海道を旅行して、「หมดจ้า」(全部消えた)というメッセージとこんな写真をSNSにアップする。

 

 

いま日本中でマスクが足りない。

「マスクをどこで手に入れた?」という言葉がちょっとしたあいさつになっているし、見えない敵から自分や子供を守るためにこれを求めて薬局めぐりをする人もいる。
横浜ではマスクをめぐって客同士が殴り合いをはじめて、流血する騒ぎも起きた。

ただコロナウイルスの感染予防として、マスクは役に立たないという主張もある。
世界保健機関(WHO)はマスクに予防効果があるという証拠はないとして、こまめな手洗いや消毒を推奨している。

 

 

マスクの次はトイレットペーパーだ。

「中国から原材料を輸入できなくなるから、これからトイレットペーパーがなくなる!」という説がインターネット上で飛び交って、それを信じた多くの人がスーパーやドラッグストアに押しかけて爆買いした結果、商品棚が空っぽになってしまった。

でも、日本国内で流通するトイレットペーパーで中国製は約2.3%だから、新型コロナウイルスの影響でトイレットペーパーがなくなるという情報はまったくの間違いだ。
デマに心を支配されて買いだめに走る人は多い。

ネットを見てみたら、それで困っている人が日本中にいる。

・みんなはあと何ロールあるの?
・明日会社にマイトイペ持っていくか悩む
・クルクル手に何周も巻き付けるヤツ、少しは自粛しろ
・紙は我らを見放した! でも、ウンだけは付いた!
・家のトイレットペーパー無くなったんで何気なく近所のスーパーに買いに行ったらマジで無くてビビった
・なんでデマなのにどこに行っても売ってないの?
・明日1時間前から並ぶ覚悟じゃないと手に入らないかも・・・

 

さて、下の写真は1973年に起きた四次中東戦争(イスラエル vs エジプト・シリアなどアラブ諸国)のもの。

 

 

放棄されたシリア軍の戦車

 

このとき原油価格がはね上がって、オイルショック(石油危機)と呼ばれる世界的な経済混乱が起きて、日本では、中曽根康弘通商産業大臣が国民に紙の節約を呼びかけた。

すると世間では「トイレットペーパーがなくなる!」というデマが流れて、人々が店に殺到。
トイレットペーパーを買い占める騒ぎ、いわゆる「トイレットペーパー騒動」が各地で発生した。
デマを信じたのか便乗したのか、「紙がなくなる!」とあおる宣伝文句を書いたスーパーもあった。
すると、300人近い主婦が行列をつくってすぐに売り切れとなる。

現在と同じような光景が47年前も広がっていたのだ。

小売店では、店頭にトイレットペーパーが並ぶや否や客が押し掛け、商品を奪い合う人すら見られた。デパートなどでは余りの混雑振りに、トイレットペーパー販売のたびに迷子も多数発生したという。日本国政府は、国民に買い溜めの自粛を呼びかけたが、あまり効果はなかった。

トイレットペーパー騒動

 

いまの日本では、トイレットペーパーの次は食料品だ。

毎日新聞の記事(2020/03/01)

デマの拡散によるものとみられ、業界団体は冷静な対応を呼び掛ける。買いだめは米やパスタ、缶詰などの備蓄品や納豆にも及んでおり、感染拡大の影響が広まっている。

トイレットペーパー品薄 米、納豆、カップ麺も メーカー「在庫十分。安心して」

 

生産も流通もいつも通り動いていて、「『紙類が不足する』という噂はデマです」「メーカーはたくさんつくっています」という紙をはり出す小売店もあるのだけど、空っぽになった商品棚を見ると、人は不安に駆られて大量買いに走ってしまうようだ。

正確な情報より、目の前の現実を優先してしまう。
スマホやインターネットなど社会は大きく進歩したけど、日本人はやっぱり日本人で、「民度」は急には変わらない。
47年前の「トイレットペーパー騒動」を同じように繰り返している。

個人が発信力を持ったぶん、当時とは違う悪影響も広がっているのが現状。
「トイレットペーパーが不足するというデマを流した人物はこの人だ!」というデマ情報をネット上に流して、それを信じた人がその人を攻撃するという状況がいま起きている。
これは民度より、正しい情報を選び取るメディアリテラシーという現代的な問題だ。

 

 

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14 件のコメント

  • どうして、石油供給が不足すると、トイレットペーパーが無くなるのでしょうね? いったいどういう理屈?
    また、50年前に比べて、今ではウォッシュレットがかなり普及しているから、最悪、トイレットペーパーが無くなっても何とかなる場合がほとんどだと思うのですが。各家庭のトイレにはまだあまり普及してないのかな? だったら会社、コンビニ、駅のトイレにでも行けばいいのに。
    元来の清潔好きがそうさせてしまうのか、日本人の「トイレットペーパー不足恐怖症」はなかなか払拭されないようです。ウンコ紙が無くなるのがそんなに怖い?

  • >世界保健機関(WHO)はマスクに予防効果があるという証拠はないとして、こまめな手洗いや消毒を推奨している。

    WHOの「マスク不要論」は、完全なデタラメであり、マスクを装着した東洋人に対する偏見の産物ですよ。
    まず、マスクの感染予防効果とは、飛沫感染する(させる)のを防ぐことの他に、汚れた手指を自分の口に触れさせないことです。感染予防を目的に、こまめな手洗いや消毒を推奨する理由は? 手指にウィルスが付着するから感染する訳じゃない。自分の汚れた手指が口の周りに接触するから感染するのです。マスクの感染予防効果の一つは、その接触を防ぐことです。

    さて、ではなぜ「マスクを装着する必要はない」とことさら欧米人は強調するのか? それはマスクを着用している姿が「怖がられる」からでしょう。欧米でマスクをしているのは、咳やくしゃみをしょっちゅうしているよほどの重症感染者か、もしくは顔を隠したい犯罪者くらいです。一般的にはほとんどマスクを着ける習慣がありません。最近、「健常者はマスクをするな」と行政から指示を発したのは、フランス?イタリア?確かその辺でしたね。WHOも所詮は欧米人が中心の組織であり、欧米人の偏見と無縁ではありません。彼らは、東洋人のマスクを、イスラム教徒の「ヒジャブ」なんかと同じような感覚で見ているのでしょう。
    東洋人のマスク着用を非難しているヒマがあるならば、やたらと握手、ハグ、頬にキスする、自分達の不潔な接触習慣を止めればいいのに。たとえ他人に親しく挨拶する目的であっても、他人や自分を感染のリスクに曝す権利は無いですよ。頼むからやたらと触らんでくれ。

  • 目先のものにとらわれず、冷静に居れば、デマであると分かると思うの( ´ー`)
    他人の言葉に簡単に流されては結果的に自分を陥れるかもしれないし、デマに踊らされる人は、自己判断力を付けるべき( ´ー`)

  • 昔はトイレットペーパーの生産時に重油を使っていたそうです。
    ウォッシュレットがあれば最悪、紙がなくてもなんとかなると思うのでけど、やっぱり気になる人はそれじゃダメなんでしょうね。

  • 正確な情報を選び取るのがメディアリテラシーですから、何を信じるかは自己責任で判断するしかありません。
    トイレットペーパーは十分にあるとアナウンスしても、どうしても信じられないとうのはそれはそれで仕方ないですけど。

  • 何やってんの?
    こんな騒ぎがいつまで続くと思ってんの?
    周りで誰か死んだか?救急搬送されたか?
    カッコ悪い、足下ちゃんと見ようや。

  • 買い物ついでに見てみるかと昨日トイレットペーパーのコーナーを見たらまさかのすっからかんでした
    夜に動物が出歩くような田舎なので情報の伝達する速度はすごいなと思うと同時にその情報の取捨選択や正確さを見極める事は大事だなと我が振りを直そうと思いました

  • これだけデマと言ってもトイレットペーパーの買いだめは止まりません。
    なんなんでしょうね。本当に。

  • 今回はデマの強さと恐ろしさを感じました。
    正確な情報より不安のほうが人を動かします。

  • 世の中、「これが⚪⚪対策になる!」とかデマいって騒ぎ立てて、デマを流した奴等がその対策になると言った商品を買えるだけ買って、日数がたってから、高値で転売。
    もしくはオークションに出して、高値で落札させるだの、転売ヤー騒ぎは収まらない。
    そんな世の中だからこそ、デマに便乗して煽り立てる奴を無視して、冷静で居られる力を身に付けるべき。
    慌てていたとしても、ネットでデマかどうか調べる事位はできるはず。
    長文失礼いたした_(._.)_

  • 商品と情報をセットにするやり方はよくあります。
    先に商品を買い占めてから、「これが流行る!」とか「これがいい!」いい情報を流して利益を得る。
    それが問題ないこともありますが、今回は別です。
    アメリカやイギリスでも買い占めがおきているということですから、これは世界中の問題です。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。