【歴史を知る旅】日本好きドイツ人が奈良・京都で感じこと

 

知人のドイツ人は日本が大好きで、最近は京都と奈良を旅行したという。
ということで、今回は彼との会話を再現してお届けしよう。

 

ーーで、二つの古都へ行って何をしたん?

奈良では東大寺へ行って大仏を見て、奈良公園の鹿と遊んだ。
京都は前にも行ったことがあるから、今回は「天神市」が主な目的で、あとはちょっとお寺へ行ってきた。

ーー君が奈良へ行くのは初めてじゃなかったっけ?
なのに、アクティビティはその2つだけ?

そう、私にとってはそれで十分。
京都に宿をとって、日帰りで奈良を旅行して時間がなかったからね。
でも、日本一大きい大仏は本当にデッカくて、迫力があって良かった。あれは大昔に、国を救うために建てられたんだって?

ーーそう。
8世紀の日本では、天然痘が大流行して有力貴族や民衆がバタバタと死んだ。それだけじゃなくて、地震が発生したり、内乱(藤原広嗣の乱など)が起きたりして社会が混乱していた。

聖武天皇は偉大な仏教の力でそんな国難を克服しようと、大仏建立を思い立ったわけだ。
まだ人類がウイルスを知らなかった昔は、ドイツでも疫病が流行したら、神の力で一掃しようとしたんじゃないの?

まぁ、そうだけど、ちょっと違う。
ドイツというかキリスト教の考え方では、そういう災害は「神の怒り」によって起こるとされている。だから、神の怒りを鎮めるために、人びとが祈ったことはある。

ーーなるほど。
多神教の日本では、病気をはやらせる疫病神やそれを退治する神がいる。これは、一神教の世界には無い考え方か。
そういえば、14世紀にヨーロッパで「黒死病(Black Death)」が流行した時、人びとが教会に集まって祈りを捧げたことがあったっけ。あの時代、神の怒りを鎮めるために、ユダヤ人や物乞いなどが大量に殺害された。
日本の歴史でそういう悲劇は聞いことがないな。

 

 

個人的には大仏よりも、奈良公園の鹿の方が良かった。
たくさんの鹿がせんべいを求めて、観光客の後を追っている様子はおもしろかったし、地面に座っている鹿を見るだけでもかわいかった。
ところで、なんで奈良では鹿が野放しになっているんだ?

ーーあの鹿たちは春日大社の神(タケミカヅチノミコト)の使いで、「神鹿」として大切に保護されているから。
でも、重要なことは春日大社に参拝することなのに、多くの外国人は鹿とたわむれて満足して、それ以上先に進まない。
春日大社の神さまとしては、公園の鹿が憎たらしいかもしれない。
前座のパフォーマンスに満足して、客が帰ってしまうのはメイン・アーティストにとっては最大級の屈辱だからね。
ドイツでは奈良公園みたいな場所はない?

動物園で動物に触れるコーナーはあるけれど、動物が街中を歩き回ることはない。そんなことが起きたらニュースになる。
キリスト教では神のメッセンジャー(使い)は天使で、特定の動物じゃないからね。キリスト教の伝統的な考え方によれば、神は人間のために動物をつくってくれたから、ヒトは動物を好きに扱っていいんだ。

ーーまぁ、鹿が春日大社の神のメッセージを受け取って、人間に届けるわけじゃないけどね。キリスト教と神道じゃ根本的に違うから、細かいツッコミはいいとしよう。
キリスト教の世界では、生き物は人間よりも「下等な存在」だから、神鹿という発想は出てこなかったんだろうな。
16世紀にこんな話がある。
10歳の女の子が鹿に石を投げたら、鹿が死んでしまった。その子は罰として斬首され、家族は家を破壊された後、追放されたんだ。

それは…ドン引きだ。
ヨーロッパでは人間を殺した動物が処刑されることはあっても、その逆はないだろうな。

ーーそう思う。
日本ではお稲荷様のキツネとか、動物が神の使者として尊重される発想は昔からあった。

1916年にアメリカで飼育係を死なせた罰で、絞首刑にされた象のメアリを思い出したよ。日本人の感覚だと、あれこそドン引きだ。

 

処刑されるメアリ

米国の「人間至上主義の動物愛護精神」に違和感ありまくり

 

ーー君としては、奈良と京都のどっちが良かった?

京都。
奈良よりも、見るところがたくさんあって良かった。
それに、今回は京都で開かれる「天神市」で、アンティークを買いたかったから、京都観光に時間を使ったんだ。
フリーマーケットでは、地元の人たちと会話ができるから好きなんだ。
普通の店だと、日本人の店員は丁寧で礼儀正しいけど、仮面をかぶっているようであまり親しみを感じられない。
天神市では、「どっから来たの?」「京都はどう?」と質問をしてくれる人がいたから、日本語の勉強ができたし、会話を楽しむこともできた。

ーーなるほど。
京都にはたくさん人が集まるからね。
でも、そのせいで「観光客多すぎ問題」が起きている。

それは感じた。
私が言うのも何だけど、京都には外国人が多すぎる。
あれは大きなマイナスポイントだ。

ーーそれはまた別の記事で取り上げるつもりだから、今日はこの辺にしておこう。

ラジャ。

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。