米国の「人間至上主義の動物愛護精神」に違和感ありまくり

 

3月1日というと個人的には、冬の終わりと春の始まりを感じるのだが、アメリカでは「豚の日」(National Pig Day)になる。

1972年にあるテキサス人(姉妹)が、

「人類にとって最も聡明で、飼い慣らされた動物の1種である豚の正当な地位を認めること」

を目的としてこの日を始めた。
これがアメリカ人の共感を集め、いまでは豚への感謝や敬意を込めて、この日に豚肉料理をみんなで食べるブタパーティーが開催されるらしい。
アメリカ流の「食べて応援」か。

くわしいことは 豚の日 を見たらわかりますよ。

 

ニューヨーク市の子ども動物園で人気のポットベリーピッグ(ミニブタの一種)
豚の日には、ポットベリーピッグを使ったお祝いをすることもある。

 

それにしても、豚を「人類にとって最も聡明で飼い慣らされた動物」でその「正当な地位を認める」と主張し、結局は殺して食べてしまうというのは、本当にアメリカ人っぽい発想と行動だと思う。

3月に豚の日があれば、アメリカでは11月に「七面鳥の日」と呼ばれる感謝祭がある。
この日のために多くの七面鳥が絞め殺されて、神への感謝の気持ちと一緒に家族でおいしく食べられる。
神への感謝には犠牲がつきものだが、このときアメリカでは約4,500万羽の七面鳥がこの世を去るという。

 

感謝祭の日の食卓

 

これはホントにアメリカ的な考え方と思うのだけど、感謝祭では、大統領が七面鳥に「恩赦」を与える伝統がある。
とはいえ、殺されるのを免除される七面鳥は2羽だけ。
4,500万分の2という天文学的な奇跡だ。

 

2007年の感謝祭で七面鳥に恩赦を与えるブッシュ大統領

 

感謝祭についてアメリカ人から話をきくと、彼はこの大統領恩赦について、アメリカ人のユーモア精神のほかに、生き物にも人間と同じような権利や地位を与えるのは欧米的な動物愛護精神のあらわれでもあると言う。

でもそれは、人間を地球上で最上位の生物と位置づけて、それ以外の動物はけっして越えられない壁の下におくという発想で、日本人にはないものだと思う。
アメリカでは人間と同様に動物に恩赦を与えることがあれば、100年ほど前のことだが、人間を殺した動物を公開処刑したこともあった。

 

犯罪者のように絞首刑で殺害された象のメアリ(アメリカ・1916年)

ほかにトプシーブラック・ダイヤモンドなども、人間に危害を加えた罪で処刑されている。
この反動かしらんけど、いまのアメリカ社会は動物虐待に対してすごく厳しい。
これはかつての奴隷制度と現在の人種差別感覚でも同じだ。

 

日本では牛や豚と同じように、市場でヒトを売買することが認められていなかったから、そんな欧米の常識を知って16世紀の豊臣秀吉が驚き激怒した。
それに1000年以上前から、仏教思想に基づいて生き物を殺すことや、その肉をべることを禁止する命令が朝廷や幕府から出されている。

それとは対照的に、欧米では動物への見方として伝統的にこんな考え方があった。

古く動物は、人間によって支配され、消費されるべき物だという思想は、キリスト教などの宗教によって強化されながら支持されてきた

動物虐待

 

イルカやクジラ、犬やロブスターなどは痛みを感じるし、喜怒哀楽の感情や高い知能があるから殺してはいけない。
牛や豚にはそんな高い感受性や知性はないから、「人類にとって最も聡明で飼い慣らされた動物」としての正当な地位や権利を認めるが、殺して食べても問題ない。
でもときには大統領が恩赦を与えて、その運命を変えることができる。
こんな欧米流の、特にアメリカ的な、人間至上主義の動物愛護精神にはいまでも違和感ありまくり。

 

 

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。