日本にはもう10年以上住んでいて、いまは東京から大阪の各地に出張して英語を教えているアメリカ人の知り合いがいる。
いまはかなり回数が減ったけど、少し前までは新幹線やバスで移動していて、コロナの恐怖におびえていた彼が「No need to worry anymore folks. This guy is on the job…」(みんなもう大丈夫だ。こいつが動いたから…)というメッセージと一緒にこの画像をSNSにアップした。
検疫所(厚生労働省)のイメージキャラクター・クアラン
日本人の生徒(大人)から教えてもらって、そのアメリカ人は正直、「なんじゃこれは」と思ったらしい。
これを見て他のアメリカ人はどんな反応をするんだろう?
と思ったら、「I like him better than our president!」(トランプ大統領よりも好き!)と書きこむアメリカ人がいた。
そうか。クアラン以下か。
そんな厚生労働省の新しいマスコットキャラに選ばれたのが妖怪「アマビエ」。
アマビエは江戸時代に肥後国(熊本県)の海に現れたという妖怪で、「私は海中に住むアマビエと申す者なり。疫病が流行したら、私の姿を描いた絵を人々に見せよ」と言って海中に消えたという言い伝えがある。
くわしいことはこの記事を。
アマビエ出現を伝える江戸時代の瓦版(1846年)
新型コロナウイルの感染拡大はもはや人の手にはおえないレベルになって、日本のSNSではアマビエを描いてアップすることがちょっとした流行になっている。
ということで厚労省もこれに乗っかった。
【知らないうちに、拡めちゃうから。】
「#アマビエ」をモチーフに、若い方を対象とした啓発アイコンを作成しました。自分のため、みんなのため、そして大切な人のため、できることを私たち一人ひとりがしっかりやって、ウイルスの感染拡大を防ぎましょう!STOP!感染拡大#新型コロナウイルス pic.twitter.com/zbbOrr4bPH
— 厚生労働省 (@MHLWitter) April 9, 2020
クアランの次はアマビエか!
さすがわれらの厚労省、アンテナは高いし仕事も早い。
…と国民が絶賛することは特になく、ネットでは厚労省の努力の方向性に疑問を感じる人が多いようだ。
・厚生労働省の今やる事がこれなんだ…。
・啓蒙活動は大切だけど、公表する数字や表を見やすくするとかもっと今やるべき優先度の高い仕事が流石にあるのでは?
・アマビエの政治利用
・分かる人には違和感ないと思うが、説明が必要な気がする
・厚労省さんお疲れさまです!一緒に頑張りましょうね!
・ついにアマビエ様国のお墨付き妖怪になったのか…。
・コロナ収まったら神社とか勧進するのかねw
さて、前にリトアニア人(東ヨーロッパの国)とベトナム人と中国人と浜松市にあるフラワーパークに行ったとき、このチケットを見てリトアニア人が「本当に日本らしい」と笑う。
*「この時期に外出?非国民ですか」と言う人もおられると思うから釈明させてもらうと、このときは3月下旬で国の緊急事態宣言は出てなかったし、静岡では新型コロナに感染した人が少なくて県や市から外出自粛を要請されていなかった。
そう言ったリトアニア人は旅を仕事にしていて、いままでフランスやイタリア、ドイツなどのヨーロッパ各国をまわって、つい最近まではタイやインドネシアなど東南アジアを旅行していた。
その経験から言うと、海外に比べて日本ではこんな「ふらまる」のようなマスコットキャラがどこにでもあって、それがすごく印象的。
フラワーパークのあとに行った山では、休憩所に浜松市のゆるキャラ「直虎ちゃん」が手を振っていた。
ヨーロッパ人の感覚だとこんなマスコットキャラクターは子供っぽく見えるけど、日本では街のいろんなところにカワイイものがあってユニークだし楽しいと言う。
「日本人のカワイイもの好きはすごい。というか異常」というこのリトアニア人の見方にはベトナム人も中国人もうなづいていた。
外国人も使う「kawaii」はもはや世界共通語。
英語版ウィキペディアを見ると、カワイイの文化や美的センスは日本のポップカルチャー・エンターテインメント・衣類・食べ物・おもちゃ・個人的なアクセサリー・マンネリ(芸術や文学などの表現方法)で特に目立つ特徴だと書いてある。
The cuteness culture, or kawaii aesthetic, has become a prominent aspect of Japanese popular culture, entertainment, clothing, food, toys, personal appearance, and mannerisms.
英語版ウィキペディアで日本のカワイイ文化の例として、こんな工事用具が紹介されている。
中国人もさいきんは、中国でかわいいキャラクターを見かけるようになったと言う。
もともと文字だけのスローガンは多かったけど、親しみやすい絵が増えた。
「でも、あれはきっと日本の影響ですね」というのが彼の見方。
広州の地下鉄にあった利用者のマナー向上を訴えるポスター
なんとなく日本人のセンスに近いものを感じる。
厚生労働省がクアランやアマビエをマスコットキャラクターに選んだ背景にも、日本人の「カワイイ好き」のセンスがあるはずだ。
文字だけよりもこのほうが注目を集める。
でもこれに目を奪われて、実践を忘れてはいけない。
おまけに書くと、これは世界保健機構(WHO)のマーク
中央の蛇が巻きついた杖は、ギリシア神話に登場する名医アスクレピオスが持っていたもので、欧米では医術のシンボルになっている。
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ゆるキャラと違ってかわいい要素はない。
【知らないうちに、拡めちゃうから。】なんて感覚は日本人かも。
アスクレピオス
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