【明治の空気】お雇い外国人から「日本人のための日本」へ

 

きょうは4月15日ということで、こんなクイズを出させてもらおう。

北海道といえばでっかいどう。
明治時代、そんな大地で日本人に向かって「Boys,be ambitious」と言った人は誰でしょう?

 

 

答えはこの人、アメリカ人のウィリアム・スミス・クラーク(1826年 – 1886年)。

 

 

化学、植物学、動物学の教師で農学教育のリーダーでもあったクラークは、札幌農学校(いまの北海道大学)の初代教頭となって明治の日本人を教え育てた人。

欧米の先進的な知識や技術を伝えて日本の近代化に貢献した、いわゆる「お雇い外国人」(お抱え外国人)のひとりだ。

世界から認められる近代化国家になるため、日本は高いレッスン料を払っていて、明治のはじめごろ、太政大臣だった三条実美の月俸が800円、右大臣の岩倉具視が600円であったのに対して、

外国人の最高月俸は造幣寮支配人ウィリアム・キンダーの1,045円であった。その他グイド・フルベッキやアルベール・シャルル・デュ・ブスケが600円、燈明台掛技師長のヘンリー・ブラントンが500円で雇用されており、1890年(明治23年)までの平均では、月俸180円とされている。

お雇い外国人

 

この時代のお雇い外国人はまさに玉石混交で、とんでもない外れもあったけどクラークは大成功。

彼はアメリカ式の農業教育(マサチューセッツ農科大学のカリキュラム)を北海道の地で再現させて、日本人に知識や技術を伝えて優秀な農業人(?)を育てた。のみならず、規律を守ることの重要性を教え、「自分の頭で考えて行動する」といった学生の自律的学習をうながすなど模範的な人間教育もおこなう。

 

ただ、当時の外国人先生にはとにかく金がかかった。
それに欧米で学んだ日本人が育っていったこともあって、だんだんと日本人が日本人を教えるスタイルへと変わっていく。
1885年(明治18年)から何度か日本へやってきたアメリカ人女性シドモアの旅行記にはこうある。

海外で教育訓練された日本の青年が、外国の教師や監督に代わって指導するため母国へ帰っています。
都市ごとに政府省庁や公共事業のお雇い外人の必要性は減少しています。今や‘日本人のための日本’は当たり前のスローガンです。

(シドモア日本紀行 講談社学術文庫)

 

いまや世界中で使われる日本語「ツナミ」を初めて使ったのはこの人といわれる。

英語文献において「津波」 Tsunamiという言葉が用いられた、現在確認できる最古の例とされる。

エリザ・シドモア

 

ウィリアム・クラークが北海道を去ったのはこの少し前のことで、あの言葉はこのときに飛び出した。
クラークに学んでいた大島正健がこう述べている。

教え子たち一人一人その顔をのぞき込んで、「どうか一枚の葉書でよいから時折消息を頼む。常に祈ることを忘れないように。ではいよいよお別れじゃ、元気に暮らせよ。」といわれて生徒と一人々々握手をかわすなりヒラリと馬背にまたがり、”Boys, be ambitious!” と叫ぶなり、長鞭を馬腹にあて、雪泥を蹴って疎林のかなたへ姿をかき消された。

「クラーク先生とその弟子たち」

このとき日本人の弟子たちが「クラーク!! カムバック!!」と叫んだ。という話は特に聞かないけど、クラークがアメリカで息を引き取るまぎわ、「札幌で過ごした9ヶ月間こそ、私の人生で最も輝かしい時だった」と言ったという。

 

「お雇い外国人」にいつまでも教えてもらう受け身ではダメで、日本はやっぱり日本人の手で高めていかないといけない。
「日本人のための日本」が当たり前のスローガンになるような積極的な姿勢は、「ボーイズ・ビー・アンビシャス(少年よ、大志を抱け)」の精神と合っている。

クラークが北海道から離れたのが1877年のきょう4月16日で、この日は「ボーイズビーアンビシャスデー」となった。
優れた人には謙虚に学んでどん欲に吸収し、やがては自分たちの手で国をつくり上げた明治の日本人はいまの日本人にも参考になる。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。