【BLM】日米の価値観の違い:キャラと声優の人種を一致する

 

「ザ・シンプソンズ(The Simpsons)」という世界的に有名なアニメがある。
これはアメリカのアニメ史上、最も長く放送されているコメディ番組で、いまでは世界60か国以上で放送され、毎週6000万人以上が視聴しているという。

このアニメの評価はとても高い。
これまでにエミー賞やピーボディ賞などさまざまな賞をしたし、アメリカ社会を変えるほどの影響もあたえた。
「くだらねぇ」「どうでもいい」と感じたとき、アメリカ人はよく「Meh」という単語を使う。
これは「ザ・シンプソンズ」の中で何度も使われたことで一般的になった言葉だ。

まあくわしいことはここを見てくれ。

ザ・シンプソンズ

 

シンプソン一家の設定はアメリカの典型的な中産階級の一家ということだけど、キャラクターは上の画像のように人間に似せた「黄色い生命体」といったもの。

さてアメリカ社会のガンといえば、何と言っても人種差別だ。
「あれは差別的だ!」と非難されれば社会的に抹殺されることもあるから、アメリカでは従業員の雇用や言葉のつかい方など公の場では、人種差別に該当しないよう細かいところまで配慮することが求められる。

2020年5月に黒人男性が白人の警察官から暴行され死亡した事件が起きて、アメリカはもちろん、世界的に「Black Lives Matter」(黒人の命は大切)という人種差別撤廃運動が広がった。
それで「ザ・シンプソンズ」もこう変わるらしい。

時事通信の記事(2020年06月27日)

有色人種キャラの声、白人使わず 米アニメ「シンプソンズ」

これからはアニメに出てくる非白人キャラクターについては、白人俳優に声を担当させないと制作者が発表。
シンプソンズを見たことがないからよく分からないけど、ということはこれまでは黒人・アジア系・ヒスパニック系など有色人種のキャラクターの声を白人が担当することがあったのだろう。

島国に住むボクとしては、声と人種は関係ないし、これは行き過ぎた配慮では?と思ってしまうけど(まさにMeh)、ネットの声を見たら他の日本人も大体同じことを考えていた。

・勝手にやればいい
でもこの意味不明の忖度や価値観を日本に持ち込まないで
・ピッコロ大魔王「」
・この感覚にはさっぱり付いていけない。
何が悪いの?
・これはむしろそうしろよって思うわ
黒人なのに白人の声とかおかしいだろ
・たとえいくら上手かろうと人種のせいで選ばれないっていう…
・うわあ、めんどくせええ・・・

日本人よ、これが「BLM(Black Lives Matter)」だ。
と言い切っていいか微妙だけど、でも今回の決定がこの運動の影響を受けたことは間違いない。
そのうち男の子のキャラに、女性声優を使うこともダメになったりして。そんな事態になったら、日本アニメは大変なことになるのだが。

 

 

ハリウッド映画では、有色人種のキャラを白人俳優が演じることが前からあって(ホワイトウォッシュ)、これが「人種差別的」だと問題になっていた。

アメリカ合衆国の映画業界で白人以外の役柄に白人俳優が配役されること。映画黎明期より度々白人俳優が白人以外の役に配役されてきており、映画の歴史と共にある。

映画におけるホワイトウォッシング

 

それで例えば日本アニメの「君の名は。」がハリウッド映画になると発表されたときネットでは、

「White washing sucks!(ホワイトウォッシングだろ。くそめ!)」

「gross. they’ll be white and meet at starbucks I bet
(気持ち悪い。彼らはきっと白人になって、スターバックスで会うのよ)」

と外国人、特にアメリカ人から非難ごうごう。

でも、ボクが見た限りでは日本の反応は全然ちがって、日本人で「ホワイトウォッシング」を不快に思う人はいない。
むしろ「楽しみです!」という人が多く、不安があるとしたら元の作品の世界観やストーリーが滅茶苦茶に破壊される原作崩壊だ。
もっとストレートな表現があるけど、下品すぎてここで書けない。
まあホワイトウォッシュも原作崩壊の一種だけど。

日本人が気にするなら、「白人化」ではなくて酷い改悪。
キャラクターと声優の人種を一致させることが「反人種差別的」で、社会的に適切というのがアメリカ人にとっては大事な発想だけど、日本人にとっては「勝手にやればいい 。でもその価値観を日本に持ち込まないで」だろう。

これからのアニメや映画づくりでアメリカが「BLM」を無視することは不可能で、人種への配慮を最優先して、今まで以上に「安全第一」で作品づくりをしていくはずだ。
結果として、作品の質がどうなるかは神のみぞ知る。

 

 

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アフリカの旅(国)が、こんなにひどいなんて聞いてなかったから。

 

3 件のコメント

  • 欧米白人たちは、自分たちの考え方がいかに傲慢であるかに気づいてない、まさにそれこそが人種差別の考えであるにもかかわらずですけどね。
    そもそも、「ザ・シンプソンズ」ってどうして黄色なんですか?
    もしそうでないというなら、白か黒、もしかして赤とか、いっそ水玉模様にでもしなさいよ。

    白人の声と黒人の声って、聞き分けられるんですかね? そんな話は聞いたことがないのですが。
    いっそ言語による差別はやめて、アニメは全て日本語にするというのを世界標準にしたらどうですかね。
    アホらし。自分たちだけで勝手にやってろ。

  • それってつまり、声優として必要な声の質や演技力に関係なく、人種で配役を決めるということですよね?
    ワシントン大行進でキング牧師はアメリカ合衆国を「肌の色によってではなく、人格そのものによって評価される国」にしようと訴えたはずなんですが……。
    結局は能力や人格より肌の色ですか……。

  • まずは人種を一致させて、そのあとで声優の能力や資質を考えるということでしょうね。
    いまのアメリカはそこまで考える必要があるらしいです。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。