ヒンドゥー教の軍神インドラ:インド人と日本人の見方

 

先週、6月26日(金)は「雷記念日」だった。

平安時代の延長8年6月26日(現在の暦だと930年7月24日)に、京都の清涼殿に雷が落ちて多数の人が死んだことからこの日が雷記念日となったという。
今回はインドの神さまの話だから、くわしいことは清涼殿落雷事件を見られたし。

 

エッフェル塔に落ちる雷

 

面積は日本の約9倍、人口では約11倍というインドは何でもスケールが大きい。ということは知っていたけど、さすがにこれにはビックリした。

AFPの記事(2020年6月26日)

インド北・東部で落雷、107人死亡

 

6月25日に発生した落雷によって東部ビハール州で83人、北部ウッタルプラデシュ州で24人の犠牲者が出た。
でもこれは「少なくとも」の数字で、このあと何人まで増えたかは不明。
インドでは6月から9月のモンスーンの季節になるとよく雷が落ちるというけれど、それにしてもこの被害は日本人の想像を超えていてネットでも話題になった。

・イオナズンか
・ライトニング系の高域殲滅魔法でも使ったのかよ
・雷都宇都宮ですら雷様で死ぬでれすけなんて年に一人か二人やぞ
・共同で避雷針を建てたり避難小屋を作ったりはしないのかな?
日本の農村なら必ずそうやってるけどな
・雷に打たれた瞬間全身の骨が透けて見えるからね

 

くわしい様子は分からないけど、日本でも落雷の犠牲者は開けた平地にいたときが多いから、今回のケースもそんな状況だったのでは?
野球を1度に100試合もできるような広大な平原で、数百人が農作業をしているところにドカンドカーンと落ちた気がする。

 

さて、神社でよく見るこの白い紙はなんでしょう?

 

 

これは「紙垂」(しで)と言って雷(稲妻)をイメージしているから、こんな「カクカク」した形になっている。

日本では古来から雷を神聖視していて(雷の語源は神が鳴らすもの、つまり神鳴りといわれる)、雷神という神がいる。
日本の会社で働くインド人を神社に案内したときにそんな話をして、インドでも雷神がいるか聞いてみたら、「それはヒンドゥー教の神インドラですね」と言う。

 

*雷を神と結びつける考えは世界中にあった。
くわしいことをここをクリックですよ。

ギリシャ神話のゼウス、ローマ神話のユピテル(ジュピター)、バラモン教のインドラは天空の雷神であり最高神である。

雷#雷と神話

インドラ神

 

インドラのルーツはとんでもないく古い。
なんせ「インド」という国名はインドラに由来するのだ。(うそです。インダス川が由来です)
インドラは紀元前14世紀のインド=イラン共通時代にいた戦いの神で、3000年以上の歴史の中で雷神、天候神、軍神、英雄神とさまざま役割を与えられた。

先ほどのインド人の話ではインドラの攻撃力は恐ろしいほど高く、ヒンドゥー教の神々の中でも最強と言っていいほどのレベルで、人々を苦しめていた巨大な蛇「ヴリトラ」を金剛杵(ヴァジュラ)という武器で倒した話は特に有名。

上は無視して下の絵に注目してほしい。

「ヴリトラ」に向かってヴァジュラを投げるインドラ

ここではなぜか、見た目が瞬殺必至の雑魚キャラだけど、本来のヴリトラは恐ろしいし激しく強い。
「パズドラ」のヴリトラのモデルはもちろんこれ。

 

日本ではインドラと魔族のアスラ(阿修羅)との戦いが知られている。

カンボジア・アンコールワットの壁画に描かれたアスラ

 

でも若い人なら、ゲームやアニメでインドラの名前を聞いた人が多いはず。

「今のオレが放てる最強の矢だ」と言ってサスケがナルトに放ったのがインドラの矢。

『天空の城ラピュタ』でムスカが、「諸君にラピュタの力をみせてやろう」「ラピュタの雷を」「ラーマーヤナではインドラの矢とも伝えているがね」と言う。

アニメ『Fate/Apocrypha』に出たきたカルナは、「神々の王の慈悲を知れ」「焼き尽くせ」と言って必殺技ヴァサヴィ・シャクティ(インドラの矢)を放つ。
*インドラは「神々の王」とも呼ばれたから、これはそのことだろう。
ちなみにこのバトルシーンは神作画で、インドラの矢が出ただけで大爆発が起きて地面が燃えた。

でもインド神話に出てくるインドラは敵に負けることもあって、いつでも最強神でいるわけでもない。

 

古代インドの人びとは稲妻にインドラの矢を重ねたのだろう。

現代でもインドでは一晩で100人以上の死者を出す恐ろしい威力を持ち、日本人には「ライトニング系の高域殲滅魔法」と表現させるものだから、最強の軍神の武器にふさわしい。
日本でいえばインドラは雷神より、毘沙門天や摩利支天に近いと思う。

世界の軍神に興味のある人は軍神をクリック。

 

 

インドラは古代インドのバラモン教では最高位の神で、聖典「リグ・ヴェーダ」にある賛歌の四分の一はインドラに捧げられたものだ。
リグは「讃歌」、ヴェーダは「知識」の意。

のちに仏教を生み出したバラモン教は、しだいに変化していって今のヒンドゥー教となる。
ちなみに「ヒンドゥー教」(インド教)という名前を付けたのはインド人ではなくて西欧人。(たぶんイギリス人)

バラモン教がヒンドゥー教に変わっていく過程で、インドラの神としての地位も低下していき、最高神の座はシヴァやヴィシュヌなどにゆずった。
それでもヒンドゥー教でインドラは「雷を象徴する強力無比な英雄神」という重要な神で、知人のインド人の感覚ではシヴァほど重要じゃないけど、インドラはそれに匹敵するほど強い。

 

シヴァ

 

おっと、忘れるところだった。
インドラは仏教では帝釈天になっている。

 

帝釈天(左)と梵天(右)

 

インド神話で最強と言っていいほどの武勇の神インドラは仏教に取り入れられて帝釈天となり、梵天と同じく仏教の二大護法善神となった。
だから柴又の帝釈天もさかのぼれば、インド=イラン共通時代のインドラにいきつくのだ。

 

ミャンマーのインドラ神
たぶん仏教に取り込められて、仏神のひとつになっている。

 

 

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外国人から見た日本と日本人 15の言葉 「目次」

インド 目次 ①

インド 目次 ②

インド 目次 ③

 

2 件のコメント

  • インドで落雷による犠牲者がそれほど多いとは! ちょっと信じがたいのでWikipediaを見てみました。

    >インドにおける落雷による死亡者数は2017年に2885人、2018年に2357人が記録されている。また、アメリカ合衆国の死亡者数は2019年に20人が記録されている。日本では、1994年-2003年の統計(警察白書)によると、年平均被害者数は20人、うち死亡者数は13.8人であり、被害者の70%が死亡している。

    だそうです。でもこれ、やはりインドの犠牲者って多すぎませんか? どうしてでしょうね?
    雷が鳴っても、平気で外に出て農作業しているとか? あるいは、雷雨になると「大雨が降ると体を洗えるから丁度いい」とでも思っているのか?
    分からなんなぁ。
    ま、善行を積んだ人であろうがあるまいが、自然現象は、万人に対して(条件次第で)等しい確率で起きるものです。インドラの矢は決して悪人だけに刺さるものじゃない。

  • インドは突出しているようですね。
    なんで一日の落雷で100人以上が亡くなるのか、わたしには想像がつきません。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。