土用の丑の日はなぜウナギ?中国の五行と平賀源内の発想

 

いつものようにガストでランチを食べようと入店して、席に着いたらこんなものを発見。

 

 

そうか、2020年の土用の丑の日はこの2日か。
サンキューガスト、来てよかったよ。

これもきっと何かの縁だから今回は、土用の丑の日にウナギを食べる日本の食文化と五行という中国思想について書いていこう。

まずは五行だ。
古代中国の人たちは、この世にあるものは「火・水・木・金・土」の5種類の元素からなると考えていた。
これが五行思想で、その影響はいまの日本でも見ることができる。

例えば「ごしきのた~んざく~」の七夕で使う短冊の「五色」はこの五行にもとづいている。

 

 

中国では五行の移り変わりによって、四季の変化が生まれると考えられていた。

木(春)が燃えることで火(夏)が生まれる。
燃えたあとの灰は土へ還り、土の中から金属を得ることができる(夏が終わって秋になる)。
みたいな。

くわしいことはここをどうぞ。

自然現象の四季変化を観察し抽象化された、自然現象、政治体制、占い、医療など様々な分野の背景となる性質、周期、相互作用などを説明する5つの概念である。

五行思想

「火水木金土」の曜日名もルーツをたどると五行にいきつくと思う。
長い話だから、興味があったら曜日をクリック。

 

さて次は土用の丑の日について。

「土用」とは五行もとづく雑節(ざっせつ:季節の変わり目)のことで、春夏秋冬の直前の約18日間を土用と言う。
この期間にあるの日が「土用の丑の日」となって、日本では夏を迎える前にこの言葉がよく使われる。
*「丑」は十二支のひとつで2番目の動物。「牛」のこと。

日本では初夏の土用の丑の日、季節の変わり目に「栄養満点のウナギを食べて、これからくる夏の暑さを乗り越えようぜ!」という少年ジャンプ的な発想があって、現代の日本人もこの風習を守っている。

日本食糧新聞の記事(2020.07.10)

イオン、ウナギの予約シフト推進 100%トレースへ前進

 

土用の丑を前にしてウナギ販売が絶好調、Web予約での注文件数は前年の2.5倍だとか。
まさにうなぎ登りですね。

これにネットの反応は?

・レバ刺しと一緒で、昔は食べられなくなったら死ぬと思ってたが、意外となければないでどうでもいい話だったなw
・やっぱり夏は旬のウナギを食ってスタミナつけんと乗り切れないわ
・もはやうなぎは1年中売ってるんだから食いたいときに食えばいいだけ
・絶滅危惧種は絶滅する前に食べておかなきゃ損!食べ尽くして応援!
・上司「今年の鰻の予約数どのくらいよ」
部下「5件ですね」
上司「凄いな去年の2.5倍じゃん」

 

うな丼は関東と関西で大きく違っていて、関東では「うな丼」と言うけど関西では「まむし」になる。
関東ではウナギを蒸すけど関西はそれをしないで、ウナギを直接焼いてご飯の中に入れてしまう。
これには、ご飯の熱でウナギの身を柔らかくする効果があるらしい。
「まむし」の語源はご飯で蒸すことを意味する「まんまむし」という説もあるのだ。
焼き方のほかに「開き方」も違っていて、関東はウナギの背中部分を切る「背開き」で、関西は「腹開き」だ。
江戸時代のサムライにとって、うなぎの腹を開くのは「切腹」を連想させて縁起が悪いということで背開きになったという説がある。

 

 

「土用の丑の日」は中国にもあるけど、夏バテしないようこの日にウナギを食べる文化は日本のオリジナル。
この食習慣は江戸時代に生まれたもので由来には諸説ある。
でも、最もよく知られているのは平賀源内説だろう。

 

平賀源内(1728年 – 1780年)

この人物を一言であらわすとしたら「何でもアリ」。
本草学者、地質学者、蘭学者、医者、殖産事業家、戯作者、浄瑠璃作者、俳人、蘭画家、発明家として有名だった。
とりあえず、電気を起こす「エレキテル」は彼の発明ということは覚えておこう。
この人は本当に変わった人物で、お墓には友人の杉田玄白によるこんな言葉がある。

「嗟非常人、好非常事、行是非常、何死非常 」
(大意)ああ、何と変わった人よ、好みも行いも常識を超えていた。どうして死に様まで非常だったのか)

くわしいことは平賀源内をクリック。

 

「土用の丑の日にはウナギを食おうぜ!」という現代の食習慣を生んだのも平賀源内と言われる。

夏になるとウナギが売れないことに困った店主が「源内さん、なんか良い案はないですかね?」と相談を持ち掛けたところ、源内は「本日丑の日」と書いた紙を店先に貼ることを提案する。
言われた通りにしたら、店が大繁盛した。

*「丑の日に『う』の字がつく物を食べると、夏の暑さに負けしない」という風習が当時あったという説がある。

それで他のウナギ屋も二匹目のウナギをねらって、それを真似るようになり、いまにつづく食風習が日本に定着したという。

細かい部分で違いはあるけど、平賀源内説はだいたいこんな感じ。
ほかにも、「丑の日には『う』のつく食べ物を食べると夏の暑さに負けない」という風習があったという話もある。

初夏になると始まる「土用の丑の日のウナギ」キャンペーンの背後には、古代中国思想の五行と平賀源内の発想があったのだ。

ちなみに中国や韓国では夏を乗り切るエネルギーを得るため、犬肉を食べる伝統がある。
でも最近では反対の声が多くなって、この食習慣は下火になっている。

これは韓国の全国紙・中央日報(2020.07.06)の記事

初伏を控え、大邱(テグ)で「犬肉」論争が再燃した。動物保護団体の会員が大邱(テグ)チルソン市場にある犬肉食堂の廃業を要求したのがきっかけだ。

夏になると再燃する「犬肉」論争…動物団体「店を閉鎖すべき」=韓国

*初伏(しょふく)も五行説に基づいてきめられた日で、日本でいえば「土用の丑の日」のような日。

 

 

こちらの記事もどうぞ。

ヨーロッパ 「目次」

日本 「目次」

東南アジア 「目次」

「飢え」が変えた食文化。日本と世界(ドイツ・カンボジア)の例

日本人の食文化:江戸は犬肉を、明治はカエル入りカレーを食べていた

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。