2日まえの7月26日は「幽霊の日」だった。
江戸時代の1825年のこの日、江戸の中村座で『東海道四谷怪談』が初めて上演されたことを記念して「幽霊の日」がつくられた。
『四谷怪談』は夫の伊右衛門に殺されたお岩さんが幽霊になって復讐するという、日本で最も有名な怪談話のこと。
これは実際に江戸でおきた事件をモデルにしている。
お岩と伊右衛門
7月26日が「幽霊の日」になった理由は『四谷怪談』の初上演だけではなくて、きっと夏だからだろう。
日本では幽霊も「季節もの」。
むかしは夏休みになると、全国の小中学生を震え上がらせたテレビ番組「あなたの知らない世界」が放送されたし、母校の中学校の図書室にあった心霊写真集も夏になると貸し出しが増えて入手困難になった。
「幽霊の日」をきっかけにいろんなキャンペーンを仕掛けたい、という業界関係者の思惑もきっとあったはず。
でも中国では、そんな夏のお楽しみが政府によって禁止されているらしい。
いまから15年前、2005年に発行された「私の国の超~常識 (青春文庫)」の中で、「中国では共産党がオバケを信じることを禁止している」と中国人が指摘してこう言う。
中国人のジャさんは、日本に来てからキョンシーの存在を知った。
「オバケなんているわけないでしょ。信じてさわいだら逮捕されちゃいます~!」
ちなみに、UFOは“科学”だから信じてもいいとか。なんのこっちゃ。
このとき中国ではUFOのテレビ番組を流すのはいいけど、幽霊はNGだったという。
それから11年後の2016年12月、AFP通信がこんな記事を載せた。
「幽霊よりマルクス主義を」 中国の超常現象信仰に共産党が警鐘
中国共産党の立場は完全な無神論で、科学的なマルクス主義によって中国を確実に近代化しているという自負がある。
そんな党にとって、幽霊なんて超常現象はただの迷信で徹底的に排除されないといけないし、こんなものが社会に広がるなんて恥でしかない。
でもこのころの中国ではそんな迷信を信じる共産党員が増えていて、党として具体的な対応を迫られていた。
記事にはこう書いてある。
共産党のウェブサイトには、「迷信を利用して国益や社会の安定、国民の生命や財産を損ねた者は厳重に処罰する」と書かれている。
この年の3月には陝西省の高官が「科学を信じ、地元経済が豊かになるよう住民を導くべきだった立場」であるにもかかわらず、病気を治せるとアピールする「邪悪なカルト集団」に参加していたことが見つかって党から除名された。
共産党員が信じるべきものはマルクス・レーニン主義だけ。
それ以外のものに心を奪われる浮気は決して許されず、幽霊や迷信をはもってのほかでそんな人間は処罰の対象だ。
箱の中に「腐ったリンゴ」があると他のリンゴにも害が広がってしまう。
まーこんな感じで中国共産党は党員に宗教の信仰を禁止していて、党員は宗教活動に参加することもできない。
これが特にひどかったのが文化大革命のときで、「宗教はアヘンである」というマルクスの言葉にしたがった人たちが聖職者を弾圧し、お寺や廟などの宗教施設を破壊した。
文革の嵐が過ぎ去ったあと共産党は宗教政策を見直して、いまでは共産党員ではない国民の宗教活動を制限付きで保障している。
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だから中国では教育の場である学校に「恐怖の心霊写真集」なんて物が置いてあることはないし、そんなことが当局に見つかったら関係者は本物の恐怖を味わうことになる。
「幽霊の日」なんて非科学的な記念日も厳禁だろう。
日本で幽霊を信じるかどうかはその人しだい、自己責任でどっちでも好きな方を選べばいい。
個人が幽霊を信じることを、罰則付きで政府が禁止するなんてさすが中国共産党ですね。
こちらの記事もどうですか?
>日本で幽霊を信じるかどうかはその人しだい、自己責任でどっちでも好きな方を選べばいい。
>個人が幽霊を信じることを、罰則付きで政府が禁止するなんてさすが中国共産党ですね。
うーん、でもまあ、それも日本人だから断定できることだと思いますけどね。
たとえば、一神教に染まった欧米人やイスラム諸国では、おそらく、また少し違った感覚でこの件を捉えるのではないかな。
現在の中国共産党の支配層にしてみれば、充分に教育の普及していない10億の無知な人民に対して、「宗教は麻薬であり、幽霊も迷信も麻薬だから信じては駄目だ、信じたら罰するぞ!」と脅すより他に、現段階では、方法がないんじゃないでしょうか? この先、全ての国民に、より唯物論的で無宗教的な教育が普及すれば、その時にはまた法律を変えればよいと考えているのでしょう。
ただ、残念ながら、そんな時代は中国には永遠にやって来ないだろうと思いますが。