最近あるイギリス人がSNSにこんなメッセージを投稿した。
Did you know?
In Japan, the chocolate bar Kit Kat is considered Good luck.
知ってた?
日本でチョコレートバーのキットカットは「幸運」と考えられているんだぜ。
え?知らんかった。
海外で日本のキットカットといえば、抹茶・みかん・ゆず味のように独自のフレーバーを開発する「永遠のパイオニア」みたいなイメージがあるけど、キットカットって日本人にとって幸運のシンボルだったか?
日本人のボクも初耳なんですが?
そんな違和感を持って読み進めたら、このイギリス人は英語を教えている中学校の生徒から、キットカットは「きっと勝つ」に通じるから「Good luck」になると教わったという。
日本人はこういう語呂合わせが大好き。
日本にはまいにち記念日があって、その由来には強引な語呂合わせがよくある。
例えば5月9日が「黒板の日」になっているのはいいとして、この日が「メイクの日」になっている理由はご存じだろうか?
「めい(May)」と「く」でメイクの日。
5と9で「こく」はいいとして、メイクは結論(願望)ありきで苦しい。
でも日本人はこういう語呂合わせで気分が変わるから、受験シーズンになると商品名がすこし変更されて、こんな合格祈願のおかしが登場する。
カールは「受カール」
スニッカーズは「スニッカ勝つ!」
トッポは「トッパ」
キシリトールは「きっちり通る」
カフェオーレは「勝てオレ」
ハイレモンは「ハイレルモン」
ポッキーは「キッポー」(吉報)
スナック菓子の「なげわ」が「勝つおのりしお味」や「めで鯛うましお味」になるのはいいとして、キャラメルコーンが「かなえるコーン」になるのは自己主張つよすぎ。
これは単なる語呂合わせの言葉遊びだけど、こう言い換えることで何となく気持ちが上がるからラッキーアイテムになる。
この伝統は日本に古くからあり、例えば戦国時代には、武士がゲン担ぎに「鰹節」を「勝男武士」と書くことがよくあった。
織田信長も合戦におもむくまえ、戦勝祈願で鰹節を「勝男武士」として使っていたのだ。
試験をまえにして、女子高生が語呂合わせにあやかるのも日本人なら当たり前。
合理的な根拠がないのに広く信じられているものを「迷信」と言う。
キットカットやカールのようなグッズに悪い意味はないけど、こんな縁起担ぎも広い意味での迷信になる。
迷信にはその国や民族の伝統的な価値観や文化の影響が表れる。
では、日本人の迷信にはどんな特徴があるのか?
海外の視点を知るとそれが分かるから、世界各国の外国人が確認している英語版ウィキペディアの説明を見てみよう。
A significant portion of Japanese superstition is related to language. Numbers and objects that have names that are homophones for words such as “death” and “suffering” are typically considered unlucky.
日本の迷信には、その多くが言葉に関係しているという特徴がある。
*中国や韓国にも同じ傾向があるから、これは「日本だけ」ということではない。
「死」や「苦」などの単語の同音異義語である名前を持つ数字とモノは、普通は不吉なものと考えられているという。
その代表例が4と9で、この数字は日本人に死や苦を連想させるから社会的に避けられることが多い。
病院やホテルの部屋や階に4や9がないとか、病院の産婦人科の部屋番号には43(死産)がないといった例が英語版ウィキペディアに示されている。
病院では基本的に4と9の数字を避けるところが多いけど、やり方はそれぞれ自己流。
部屋番で4も9も普通にあるという病院もあれば、部屋番で4と9はないけれど4階病棟はあるという病院もある。
また4階と9階はあるけど、そこには更衣室や会議室があるだけで、患者には一切関係ないようにしている病院もあるのだ。
これは初耳だったのだけど、日本では櫛(くし)がプレゼントになることはめったにないらしい。
きょうび、そんなプレゼントをする日本人はどれだけいるんだ?
じゃあ、串もダメなのか。
ボクは基本的に無宗教だけど、迷信は信じてはいないけど気にはなる。
ジムのマシーンで走っていて、「いまどのぐらい走ったかな~」と時間を確認したら、「14:44」という表示を見るとすこしイヤな感じがする。
こんな感じで日本人の迷信には言葉(音)の影響がとても大きい。
これは気分や精神作用の問題だから、4や9を「よん」や「きゅう」と言い換えるケースもあるという。
Due to these unlucky connotations, the numbers 4 and 9 are often pronounced yon and kyuu instead.
4を「し」、9を「く」と読むと不吉だけど、「よん」と「きゅう」にしたらOK。
こうした日本人の迷信に対する考え方を、日本文化に限って説明するなら言霊(ことだま)信仰だろう。
言葉には霊力が宿っていて、自分の発した言葉が対象なる事象に影響を与えるから、良い言葉を言うと良いことが起こり、不吉な言葉を口にすると不幸な結果となる。
この考え方は古代から日本にあって、万葉集には柿本人麻呂のこんな歌がおさめられている。
「しきしまの大和の国は 言霊の幸(さき)わう国ぞ ま幸(さき)くありこそ」
「言霊の幸わう国」というのは、言葉の持つ霊力によって幸福がもたされる国、つまり日本のこと。
織田信長から女子高生まで、日本人の語呂合わせにもそんな言霊信仰の影響があると思う。
これに対して、欧米や中南米などキリスト教の影響が強いところでは不吉な数字として「13」、悪魔を表す数字として「666」が嫌われている。
この迷信は言葉ではなくて宗教に由来する。
アメリカにある競馬場では控え馬房の13を嫌って、12Aになっている。
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戦時中は五銭玉と十銭玉をお守りとして出征する兵士に渡したり、千人針に付けたりしたそうで、これもそれぞれ四銭(死線)、九銭(苦線)を越え、無事に帰ってくるようにという意味だったそうです。
なるほど。
その気持ちはいまの日本人でも分かりますね。
いい情報をありがとうございます。